【上原美術館の「もののありか 静物画のふしぎ」展】 セザンヌと安井曽太郎が響き合う
静岡新聞論説委員がお届けする“1分で読める”アート&カルチャーに関するコラム。今回は下田市の上原美術館で9月23日まで開催中の「もののありか 静物画のふしぎ」展から。同館コレクションから新収蔵・初公開を含む46点を紹介。
第1展示室では「もののむこうへ」「ものをみつめる「もののありか」「ものをしる「ものをこえて」とサブタイトルを付けて、その言葉に呼応する作品を並列する。丁寧なキャプションを添えて。
例えば「もののありか」では、布の上に果物や西洋トマトが置かれたポール・セザンヌの「ウルビノ壺のある静物」を掲げ、平面と立体を行き来する彼のまなざしを克明に説明している。
セザンヌと背中合わせになるようにして、安井曽太郎による砂糖壺やカップを描いた「静物」を配置し、彼がパリでセザンヌの絵を見た時の驚きと感心を表明した文章を紹介する。作画の技術や美術史的な関わりから解き放たれた、絵画と絵画の響き合いが聞こえる。
個人的には須田国太郎の黒々とした「静物」と、オーギュスト・ルノワールの色彩にあふれた「果物の静物」の奇妙な親和が特に楽しかった。(は)
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■上原美術館
住所:下田市宇土金341
開館:午前9時半~午後4時半
料金(当日):一般1000円、学生500円、高校生以下無料
会期:9月23日まで