高中正義“2025 黒船出航”直前インタビュー!
昨年行なわれた高中正義のコンサート・ツアー “TAKANAKA SUPER LIVE 2024 「黒船 来航50周年」”は、9月14日の宮城・仙台GIGS から始まり、毎年恒例の東京・日比谷野外音楽堂を含めて、北は北海道・札幌から南は九州・福岡まで、12月21日の東京 Zepp Haneda を年内最終日として、国内13公演を大盛況のうちに終えた。
仕掛けたわけではないのに、知らない間にこんな現象が起こってる
YG:一昨年のツアーより公演の回数が増えましたし、近年は年明けにビルボードライブ東京とビルボードライブ大阪でのショウもあり、その後に前年の総決算をホール会場で演るというパターンが定着してきましたね。
高中:この2~3年、どんどん盛り上がってきてる。内輪では「高中もおだてりゃ木に登る」って言われてるんだけど(笑)、お客さんが盛り上げてくれるもんだから「そうか、じゃあもっと弾いちゃおうかな」なんてね。お客さんとの相互作用で、アイドルのコンサートみたいに盛り上がってるよ(笑)。
YG:客席からの掛け声も凄いですよね。
高中:元々、僕のコンサートはお客さんが良い意味でうるさい(笑)。日比谷野音で演る時は特にね。愛情のある野次だし、面白いこと言ってくるから笑いもあって盛り上がる。そういうのは好きだし、良いことだと思ってるんだけどね。それが最近、ますますうるさくなってきた(笑)。
YG:昨年12月1日に行なった中国の上海での公演も、こちらからではなく向こうからのオファーだったのが面白い現象ですよね。一昨年の夏、高中さんが“SUMMER SONIC 2023”に出演したのを中国のイベンターが観に来ていて、そこから中国公演の企画が持ち上がったということでしたから。
高中:その時の演奏を気に入ってもらえたみたい。もちろんそういう仕事の人だからある程度の音楽の知識は持っているんだろうし、向こうのマーケットのことを考えながら誰を呼ぼうかと算段しているんだろうけどね。でも、こういう思わぬ展開は嬉しいね。
YG:中国でのスタッフはどんな年代の人たちなのですか?
高中:“SUMMER SONIC”を観に来ていた人は40代くらいだね。向こうのスタッフの中には、ヤマハSGの僕のモデルを事前に買っておいて、そのギターにサインしてくれっていう人もいた。純粋に音楽が好きな人、という印象だったね。
YG:初めての中国公演にもかかわらず、会場は満員。しかも、コンサートは大盛況だったそうですね。
高中:曲に対するお客さんの反応が凄かったよ。「渚・モデラート」のイントロが始まると大歓声が上がったりしてね。ネットなんかで曲は知ってるんだろうけど、そんなに中国の人が僕のことを認識してくれてるの? って不思議な気持ちになった。しかも、お客さんは20代から30代くらいの若い人ばかりで、みんなこういう音楽に飢えてるみたい。日本だと僕のファン層は50代から60代の人が多いのに、ここでは一体どうなってるの?っていう感じだった(笑)。
YG:現在、世界中の若い音楽ファンの間で’70~’80年代の日本のポップスが、“シティ・ポップ”というジャンルで大流行していますが、それに続くのが同時代のジャパニーズ・フュージョンだと言われています。高中さんの音楽はまさにそのど真ん中ということで、中国の若者の間でも注目されているのでしょうね。
高中:’80年前後は日本の音楽のアレンジやサウンドが完成した時期だったから、今聴いても古く感じないし新鮮なんだろうね。シティ・ポップとジャパニーズ・フュージョンには、都会的だったりリゾート感覚だったり、そんな共通した雰囲気もあるしね。
YG:今年もまたオファーが来るかもしれませんよ。
高中:上海なんて飛行機に乗ったら1時間とちょっとで行けるし、そんな近くに僕の音楽で喜んでくれる人たちがいるのなら、ぜひまた行きたいね。今回は1公演だけのコンサートだったけど、お誘いがあればまた行ってみたいし、向こうは国土が広いからもっといろんなところで演れたらいいね。
YG:今年3月に予定されている米ロサンゼルス公演も間近に迫ってきました。ザ・ローリング・ストーンズがDVDを収録したこともある、“ウィルターン(The Wiltern)”という2,500人収容できるホールだそうですね。
高中:最初は3月9日の1回だけの予定だったんだけど、嬉しいことに前売りがソールドアウトになってね。それで3月10日の追加公演が決まって、2デイズになったらしいよ。
YG:アメリカでもファンの年齢層は若いのですか?
高中:そうだと聞いてる。やっぱりインターネットの威力は凄いよ。こちらから仕掛けたわけではないのに、知らない間にこんな現象が起こってるんだからね。
YG:アメリカのマーケットでも勝負したいという考えは、昔も持っておられましたよね。
高中:1976年にソロ・デビュー・アルバム『Seychelles』をリリースした時に、キティレコードの社長にアメリカでも演りたいと伝えたら、アルバムをアメリカの関係者に聴かせてくれたことがあったんだよ。でもその人には「ちょっと弱い」と言われた。だから2ndアルバム(1977年『TAKANAKA』)は強めのハジけた感じに作ったんだけどね。それが、あれから50年経った今、アメリカの若者の間で『Seychelles』が人気あるっていうんだから、どこでどうなるか分からないものだよね。
YG:でも、『Seychelles』に収録されていた「OH! TENGO SUERUTE」はホルヘ・サンタナ(1978年『JORGE SANTANA』収録)やベンチャーズ(1991年THE VENTURES PLAY SEASIDE STORY』収録。ジェフ・バクスター/g、エドガー・ウィンター/alto saxらがゲスト参加)にカヴァーされていました。実は昔からアメリカで流行る可能性を持っていたのでは?
高中:まあね。アメリカの関係者に聴かせたとは言っても、その人一人だけの感想だったからね(笑)。『Seychelles』を出した少し後に、加藤和彦さんがジョージ・ベンソンのアルバム『BREEZIN’』(1976年)を持ってきて、「ほら、ジョージ・ベンソンが高中のマネしてるよ」なんて言ってくれてね。そう言ってもらえるのは嬉しかったけど、そんなわけない(笑)。
YG:いえいえ、ホルヘ・サンタナのヴァージョンがジョージ・ベンソンのプロデューサーであるトミー・リピューマの耳には入っていたのかもしれませんよ。50年前に弱いと評された音楽が、現代において人気があるというのもなんだか壮大なロマンを感じます。アメリカでは、他にもこれから展開する企画があるそうですね。
高中:虹伝説 THE RAINBOW GOBLINS』(1981年)に入ってる「You Can Never Come To This Place」という曲を映画に使いたいという話も来ている。ドウェイン・ジョンソン主演で、伝説のプロレスラーの話なんだ。映画の始まりの部分やエンディングで、曲をしっかり丸ごと使うと聞いてるよ。
今回、僕が加えたのはサンタナのカヴァー
YG:アナログ盤のリイシューも進んでいます。昨年リイシューされた『Seychelles』、『TAKANAKA』、『AN INSATIABLE HIGH』(1977年)、『SUPER TAKANAKA LIVE』(1980年)も、セールスの約半分が海外だそうですね。
高中:今年は『BRASILIAN SKIES』(1978年)、『JOLY JIVE』(1979年)、『ALL OF ME』(1979年)がリリースされるよ。もう予約受付が始まってるはず。他には、ここ数年のライヴ音源をまとめたライヴ・アルバムをアナログで2枚、アメリカで発売することも決まった。とりあえずアメリカ先行発売という形でね。
高中正義@2024年9月22日(日)日比谷野外大音楽堂 Pic:三浦憲治(ライトサム)
YG:近年はホールのコンサートだけでなくビルボードにも出演されていますが、演っていてホールと違う点はどんなところでしょうか?
高中:目の前にお客さんがいるから、また違う雰囲気だね。お客さんの反応がダイレクトに伝わってくるし、反応の仕方も違う。だから演っていて楽しいよ。1時間くらいの凝縮されたショウにしなくちゃならないから短時間の勝負だしね。それにあの会場はそんなに広くはないんだけど、4階まであるよね。「READY TO FLY」の中間部のキーボード2人がソロを演るところで僕はヒマになるから、その間に客席に乱入して4階まで回ってくるんだ。相撲取りみたいにお客さんから背中とか肩を叩かれて、面白いよ(笑)。
YG:ここ数年は僅かな例外を除いて不動のメンバーがバックを固めていることも、現在のバンドが充実している理由の一つですね。
高中:メンバーには、人のバックで仕事をしているという意識ではなく、自分のコンサートのつもりでハジけてくれって常々言ってある。大筋さえ押さえていてくれたら、あとは自由にしてもらっていい。キーボードの2人には、フレーズや音色をどうこうと言うより、お客さんが「イエー!」って声をあげるようなソロをやってくれってリクエストしてある(笑)。僕もライヴ中はアイ・コンタクトや動作でメンバーとコミュニケーションを取るようにしているよ。側まで行って絡んだりとかちょっとした遊びの精神を加えたり、そういうのがバンド感を高めることになるし、観ているお客さんにも楽しさが伝わると思うからね。
YG:選曲はどのように決めているのですか?
高中:昔は自分でやっていたんだけど、今は基本的にスタッフに任せてある。ファンのリクエストや世間の動向を鑑みて考えてくれるからね。僕がどうしても演りたい曲があったら加えてください、という感じ。今回、僕が加えたのはサンタナのカヴァーで「哀愁のヨーロッパ/Europa(Earth’s Cry Heaven’s Smile)」。
YG:先のツアーにおいて、あの曲で使っていたブラックのヤマハSGは初登場でしたよね。
高中:何年か前にレインボーSGをステージで使ったことがあるんだけど、そのギターを作った人が“SG3000”をいろいろモディファイしたみたい。音もいいし、天女のインレイが入ったブラックの外見も綺麗だから「哀愁のヨーロッパ」で使ったよ。あと、ESPの“KARMASTER”も使った。このギターは雑誌でその存在を知って、2.4kgという軽さが魅力的だった。それで、すぐにネットで買ったんだよ。ただ軽いというだけで触っても弾いてもいないのに25万円もするギターを買って、ハズレだったらどうしようかと心配だったんだけど、しっかりした音だったよ。
YG:ギターの出音は音色もバランスも素晴らしかったですが、サウンド・システムに何か変更などあったのでしょうか?
高中:エフェクターをほとんどフラクタル・オーディオ・システムズの“FM9”(内蔵のもの)に替えたんだ。フラクタルからのラインの音、もしくは従来から使っているメサ・ブギー“Rectifier”のヘッドから昔サンタナが使っていた古いアルテックのスピーカーを通してマイクで録った音。つまり、昔からのスタイルのアンプと最新鋭システムの組み合わせだね。ストラトのハーフ・トーンにコンプレッサーをかけた時も、以前より綺麗な音が出てるような気がする。
YG:ヴィンテージな機材もいいですが、新しい機材への興味も尽きませんね。
高中:フラクタルは最初は面倒だと思って敬遠していたんだけど、プロ・ギタリストの間での評判もいいし、ちょっと試してみようかな…と。最初は音作りが難しくて苦労したんだけど、好みの音が見つかるとどんどん使いたくなってきて、使うためにはもっと覚えなくちゃならないし、その繰り返しだよ(笑)。まだ熟知できてないので、もっともっと良い音になる余地はある。いろんなエフェクターがゴチャゴチャと配線されて(ペダルボードが)デカい面積になるより、 “1台のエフェクターで全部済ませたい” のはギタリストみんなの願いだと思うよ。
YG:ここ数年ますます右肩上がりの物凄い人気ぶりをどう感じておられますか?
高中:コンサートがみんな売り切れてどんどん忙しくなっていく状況にはホントに驚いてる。70代になったら後の人生はオマケみたいなもので、僕の活動もゆっくりとフェイドアウトしていくんだろうなと思っていたのに、こんなことになってきた。宝くじに当たったみたいな気分だね(笑)。
YG:“黒船来航50周年”ツアーの集大成、楽しみにしています。
高中:昨年、国内13公演、そして上海公演までやってきたからバンドはベストな状態をキープしているからね。これをビルボードでさらにビルドアップして、その後の神奈川県民ホールでの演奏が完成品ということになるだろう。それをロサンゼルスへ持って行ってアメリカのオーディエンスにも聴いてもらう、という良い流れになってるので、頑張ります。
2025年も高中正義の快進撃は続く。まず、2月にはビルボードライブ大阪とビルボードライブ東京で各2日ずつ4日間(合計8セット)の公演、そして3月1日の神奈川県民ホール、さらに3月9日と10日は米ロサンゼルス公演。日本国内のホール・コンサートでは、昨年から続くツアーのラストとなる神奈川県民ホール(まもなく休館)の公演が見逃せない。ここを今季の“黒船ツアー”の集大成とし、この勢いをさらにロサンゼルスへ持っていこうとしている高中──まさにロサンゼルスへ向けて出航する我らが“黒船”の勇姿を、神奈川県民ホールで見送ろうではないか!
高中正義@2024年9月22日(日)日比谷野外大音楽堂 Pic:三浦憲治(ライトサム)
高中正義 ギター紹介
EDWARDS:KARMASTER
EDAWARDS: KARAMASTER
9mm Parabellum Bulletのギタリスト、滝 善充とESPの提携により製作されたシグネチュア・モデル。コンセプトとして軽さを追求しており、2.4kgという驚異的な軽量を誇るギターだ。ボディはアルダー、ネックはメイプルという材によるギターとしての特性はしっかりと押さえていながら、ボディの厚さを極力薄くすることで軽量化を図っている。中心のピックアップ搭載部分が32mm、その他の部分は17mmという薄さ。ピックアップはセイモア・ダンカン“SH-6 Distortion”(ネック&ブリッジ)を搭載。各弦のバランスの良い高出力なピックアップが、ボディの薄さをものともしないリッチなサウンドを出力する。
YAMAHA:SG3000(大久保 功モディファイ)
YAMAHA: SG3000
元々“SG3000”に施されている貝のバインディングを活かし、ボディ・トップには細工で“天女”が描かれている(モチーフになっているのはカルロス・サンタナが使用していたことで有名な“天女SG/SG2000)”。カラーは貝細工を引き立たせるために、トヨタ・センチュリーの深みのあるブラックを採用。貝細工を施した後に吹くクリアは、ガラスのように輝く高価な塗料を使用している。パーツ類は貝細工が映えるようにすべてクロームに交換。ピックアップもベース・プレートが初期SG同様のブラス製に交換され、甘く太いサウンドを生み出す。以上のモディファイに7ヵ月以上を費やした逸品である。
高中正義 TAKANAKA SUPER LIVE 2025 黒船出航 概要
出演ラインナップ:
高中正義(g)
斉藤ノヴ(perc)、岡沢 章(b)、宮崎まさひろ(dr)、柴田敏孝(key)、井上 薫(key)
AMAZONS(cho)
大滝裕子、斉藤久美、吉川智子
日程:2025年3月1日(土)
会場:神奈川県民ホール大ホール
開場 15:45 / 開演 16:30
詳細・お問い合わせ キョードー横浜
TEL:045-671-9911(土日・祭日を除く11:00~15:00)
チケット料金(税込、全席指定):9,900円 ※残り僅か
「TAKANAKA L.A凱旋 LIVE 2025」追加公演決定!
日程:4月18日(金)
会場:昭和女子大学人見記念講堂
INFO
JOLLY JIVE / MASAYOSHI TAKANAKA
2025年6月25日発売 | ユニバーサル ミュージック | LP
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BRASILIAN SKIES / MASAYOSHI TAKANAKA
2025年6月25日発売 | ユニバーサル ミュージック | LP
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ALL OF ME / MASAYOSHI TAKANAKA
2025年6月25日発売 | ユニバーサル ミュージック | 2LP
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(インタビュー&文●近藤正義)