自閉症娘の1人外出、留守番デビューは何年生?小学生からスモールステップで練習、中2の今は
監修:井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
発達障害のある娘の1人行動。どこまで許可したらいいの?タイミングは?
広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)のある娘は、中学2年生。現在娘は、歩いていける場所、道が分かる場所であれば、1人で外出します。
また、何度も行ったことのあるショッピングセンターでは、家族と別行動して、1人で買い物もします。
発達障害あるなしに関わらず、子どもの1人行動をどこまで許可するかというのは、親にとって悩みどころ。許可する年齢や、範囲は家庭によってさまざまです。特に発達障害がある子の場合、特性の内容も違うため、年齢では判断できません。
今回は、娘がいつ、どのタイミングで、どれくらいの1人行動をするようになったかの話をしたいと思います。
娘は、小学校に入学した当初、登下校にスクールバスを利用していました。バスが止まる場所は、家から徒歩10分ぐらいのところだったので、1人で歩けるようにと付き添い、練習したのですが……。
何か注意を引かれるものがあると、止まってしまったり、前を見ず歩いたりするため、朝はバスの乗り遅れを防ぐため、1人で行かせることを断念しました。そのうちに、長男が保育園に通うことになったため、朝は2人一緒に学校に送ることになりました。スクールバスは帰りのみの利用になりましたが、それでも私の心配はつきませんでした。
まず、無事にバスに乗れるかが心配でした。もし、乗り遅れたとしたら、それは娘にとって不測の事態です。
娘は、小さな頃から、予測不能の事態が苦手。パニックを起こしていないか、どうしていいか分からないのに、誰にも助けを求めず、その場に一人佇んでいないか、私はとにかく不安でした。
バスに乗れたとしても、その先も心配でした。
バスから降りる場所は、家のすぐそばで、徒歩2、3分でしたが、それでも私は気が気ではありませんでした。バスの時間は正確ではなく、10~20分遅れることもありましたが、私は家の前の道まで出て、バスをずっと待っていました。
そのうち娘が、
私が待っていることを嫌がるようになりました。
本心を言えば……無理に決まってる!ですが……せっかく娘に自立する心が芽生えているのに無視するのはよくないと思い、
次の日から、隠れて娘を見守り、何も知らなかったふりして、娘を褒めるというパターンになりました。
そのうち、娘が少しずつ周りを見るようになったことに気がつき、これなら、1人で大丈夫かも……と思えるようになり、こっそり見に行くのをやめました。
小学2年生からは、短時間の留守番を頼むように
小学2年生からは、放課後等デイサービスの利用が始まり、朝は私が車で送り、帰りは放課後等デイサービスの送迎があったため、1人で歩くことはなくなりました。この頃から私たちは娘に、短時間の留守番を頼むようになりました。
誰か来ても、例え知っている人でも鍵を開けないことを約束させ、20分、30分、40分と留守番の時間を増やしていきました。小学4年生になる頃、数時間の留守番ができるようになっていたので、夫の提案で、1人外出の練習を始めることになりました。
最初は、近所の自動販売機まで。
思った以上に娘はノリノリで、喜んで1人で出発しましたが、待つ間、私はソワソワしっぱなしでした。
鬱陶しいほどに心配し、夫は呆れていました。片道15分ぐらいの道だったので、娘は30分ちょっとで帰宅しました。
このおつかいを、私は今でも忘れません。娘の成長を感じた瞬間でした。
おつかいをきっかけに、増えていった娘の行動範囲
そのおつかいをきっかけに、娘の行動範囲は増えていきました。
学校への迎えが遅くなる時、学校に近いおばあちゃんの家まで歩いたり……
近所のコンビニまで行ったり……
ショッピングセンターで別行動したり……
時間を決めて、お店で待ち合わせしたり……
回数を重ねるたび、私の娘に対する心配度は減っていきました。
中学2年生の今は、1人行動の心配もほとんどありませんし、丸一日の留守番も、安心して任せることができます。留守番中、家事もこなしてくれるので、とても助かっています。
私たちが住んでいる沖縄県は、電車がなく、家は田舎でバスの本数も少ないため、公共の交通機関を使って、1人で行動したことはまだありません。
しかし娘も、もう1年半ほどで、高校生。高校生になると、公共機関のバスを使って学校に通うことになります。まだ1人でのバスは未経験なので、中学生のうちに練習したいと思っています。
執筆/SAKURA
(監修:井上先生より)
スモールステップで少しずつ一人でお留守番したり外出したりする練習をされたことと、それを始められるタイミングもお子さんの気持ちを尊重されたのが良かったと思います。一人での外出を何歳から始めるかはお子さんの状態やご家庭の事情だけでなくその地域の環境も関係してきます。
特に女の子の場合は、夜道や人通りの少ない道を避ける、携帯電話などで通話をしているふりをして通り過ぎるなど、時間帯や道順などにもルールを決めて進めていくことが大切だと思います。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。