住宅価格高騰時代!マイホーム購入にフル活用したい「公的支援」とは?
マイホーム購入は人生の大きな決断です。世界的なインフレも手伝って住宅価格の高騰が続き、「ゼロ金利政策の解除」も重なっていくこれからの時代においては、住宅購入において使える公的制度を調べ、活用していくことがますます求められています。
高騰を続ける住宅価格・心配な金利上昇
わが国でも「インフレ」が話題になり、日々の買い物などでも商品の値上がりを感じる日々が続いています。毎日の生活に必要な食料品やガソリンなどはもとより、家具・電化製品・自動車などの価格も上昇していくことが心配な読者の方も多いでしょう。
特に「人生で最も高額な買い物」と言われるマイホームについては、元の価格が大きいこともあり、その価格上昇は各家庭のライフプランにも大きく影響します。
国土交通省が公開している「不動産価格指数(住宅)」※によれば、2021年1月の全国住宅総合不動産価格指数が「116.6」であったのに対し、2024年1月の同指数は「138.1」と、3年間で18%以上も上昇しています。
関東地方に限れば同様に「118.0」から「148.0」へと、3年間で実に25%以上の上昇を記録しました。
これは単純計算で、3年前には「4000万円」で買えた物件が、現在では「5000万円」支払わないと買えない状況になっているようなものであり、住宅価格高騰の急激さがよくわかります。
※年間約30万件の不動産の取引価格情報をもとに、全国・ブロック別・都市圏別等に不動産価格の動向を指数化したもの
また、わが国では「ゼロ金利解除」も手伝い、住宅ローンの金利が上昇傾向にあると報じられています。
4000万円の住宅ローンを35年返済で組んだ場合、金利が1パーセントから2パーセントに上昇すると、月額返済額は約2万円増加します。これは月々の家計を圧迫しかねない上昇幅であり、現在は時間の経過とともにますますマイホームの取得が厳しくなる状況にあるといえるでしょう。
一方、考え方を変えてみれば、住宅価格高騰と金利上昇が今後も続くのであれば、今この時代にマイホームを固定金利の住宅ローンを組んで取得することは、将来的に「すばらしい投資」になる可能性が高いとも言えます。
筆者としては、十分に長期のシミュレーションをしたうえで家計に問題がないと判断できるのであれば、今から住宅取得を行うことは「おおいにアリ」だと思っています。
「マイホーム購入」を後押しする公的制度とは
マイホーム購入については、各種の公的支援制度が用意されています。
今回は筆者が読者の皆様に特に活用していただきたいと考えている制度を3つご紹介します。
1. 住宅ローン控除(住宅ローン減税制度)
こちらの制度はご存じの方も多いのではないでしょうか。一般の住宅ローンを借り入れてマイホームの新築・取得又は増改築などをした場合、年末のローン残高の0.7%を、所得税および翌年の住民税から減らすことができる制度です。
たとえば住宅ローンが年末時点で3000万円残っている場合、その年に支払った所得税・住民税が合計で21万円還付されます。この制度は最大13年間にわたって活用できるため、家計へのプラス効果は非常に大きいと言えます。
特に、子育て世代に対しては最大利用額が拡大されていますので、最初の年度は確定申告をするなどの手続きはありますが、積極的な活用をおすすめします。
2. 子育てエコホーム支援事業
こちらの事業は、子育て世帯・若者夫婦世帯による高い省エネ性能を有する新築住宅の取得や、住宅の省エネ改修等に対して支援することが目的とされています。新築住宅を購入する場合、「長期優良住宅」では1個につき100万円、「ZEH水準住宅」には80万円が公的に補助されます。
エコホームは断熱性が高く、光熱費の節約も期待ができますので、家計に対しての負担軽減効果は長期的に大きいといえるでしょう。
3. ZEH補助金(ZEH支援事業)
「ZEH」とは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略称で、建物の断熱性能を高め、クーラー・暖房などで消費するエネルギーを少なくする一方で、住宅に設置された太陽光発電設備などから再生可能エネルギーを創り出すことで、エネルギー収支がさしひきゼロになることを目指した住宅のこととされています。
このZEHと認定される住宅を購入するとき、一戸建ての場合であれば「ZEH」水準の住宅には55万円、よりハイレベルな基準である「ZEH+」水準の住宅には100万円が補助されます。
こちらの補助金は上記の「(2) 子育てエコホーム支援事業」と併用はできませんので、ご注意ください。
住宅購入にあたってこれらの制度を利用できる状況であれば、積極的に活用していきましょう。ここでご紹介した住宅購入補助金については、別の国費を活用した補助金を重複して利用することはできない点にご注意ください。
一方、お住まいの地域によっては、国費が投入されていない自治体独自の住宅購入支援制度が用意されている場合があります。これは上記のような国費を利用した補助金と重複して活用できる可能性があるため、それぞれの自治体担当者に確認しておきましょう。
親からの援助は「無税」でもらおう
公的な支援に加え、親族などからの「贈与」によって住宅購入資金を確保することも考えていきましょう。
年間110万円以上の贈与を受けると、贈与額に応じて贈与税が付加されますが、贈与されたお金を住宅購入資金として活用する場合は、一定額まで無税で贈与を受けることが可能な制度が用意されています。
「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」というもので、国税庁によれば、
「父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得または増改築等の対価に充てるための金銭を取得した場合において、一定の要件を満たすときは(略)贈与税が非課税となります」
とされています。
ここでの「一定の要件」とは以下の条件で、これを受贈者がすべて満たすことが求められています。
1.贈与を受けたとき、贈与した者の直系卑属(子や孫)であること。
※配偶者の父母(または祖父母)は直系尊属には該当しませんが、養子縁組をしている場合は直系尊属に該当します。
2.贈与を受けた年の1月1日において、18歳以上であること。
3.贈与を受けた年の年分の所得税にかかる合計所得金額が2000万円以下(新築等をする住宅用の家屋の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は、1000万円以下)であること。
4.平成21年分から令和3年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがないこと。
5.自己の配偶者、親族などの一定の特別の関係がある人から住宅用の家屋の取得をしたものではないこと、またはこれらの人との請負契約等により新築もしくは増改築等をしたものではないこと。
6.贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をすること。
※贈与を受けた人が「住宅用の家屋」を所有する(共有持分を有する場合も含まれます)ことにならない場合は対象外。
7.贈与を受けたときに日本国内に住所を有していること
※受贈者が一時居住者であり、かつ、贈与者が外国人贈与者または非居住贈与者である場合を除く。
8.贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること、または同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること。
これらの条件にすべて当てはまれば、「省エネ等住宅」を購入する場合は1000万円、その他の住宅については500万円まで、贈与税が非課税となります。
この制度を活用するためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に、戸籍の謄本・住宅取得の契約書の写しなど、一定の書類を添付してお住まいの地域の税務署まで提出する必要があります。あてはまる人は忘れずに申請しましょう。
ここまでマイホーム購入を支援する各種の公的制度をご紹介しましたが、筆者としてはマイホーム購入にあたってもっとも大事なことは「それぞれの身の丈に合った額のマイホームを取得すること」であると考えています。
たとえばZEHのようなハイスペック住宅を購入すれば補助金が受けられるとしても、そのために適切な予算をオーバーして家計が圧迫されてしまうようでは、本末転倒です。
マイホーム購入はそれぞれの家庭のライフプランを左右する、大きなイベントです。今回ご紹介したような補助金や贈与の活用を含めてしっかりと計画を立て、お近くのファイナンシャルプランナーなどから客観的な意見も聞き、購入実現に向けて動いていきましょう。
【執筆者プロフィール】
山田 圭佑(KYお金と仕事の相談所 所長)
キッズ・マネー・ステーション認定講師、国家資格キャリアコンサルタント、ファイナシャルプンナー技能士2級・AFP、琉球古典音楽 野村流伝統音楽協会 歌三線 師範、八重山古典民謡保存会 歌三線 教師
東京都出身。大学入学と同時に沖縄県へ移住。大学卒業後、沖縄県庁にて18年間奉職した後にキャリアチェンジ。現在は若年者に向けて就職支援サービスを行う企業のサラリーマンとして勤務するかたわら、フリーランスのキャリアコンサルタント・ファイナンシャルプランナー・歌三線師範として幅広く活動。2022年7月に「KYお金と仕事の相談所」を開設。所長を務めている。
(ハピママ*/キッズ・マネー・ステーション)