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木村拓哉主演の再放送禁止ドラマ「ギフト」演技者としてのキムタクを観るならこれだ!

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1997年04月16日 フジテレビ系ドラマ「ギフト」放送開始日

血まみれ全裸のキムタクがクローゼットから転げ落ちる衝撃場面


1990年代、ドラマの中の木村拓哉は恋に仕事に大忙しだった。主演した数々の恋愛ドラマが高視聴率を記録。なかでも、1996年に放送されたフジテレビの “月9ドラマ” 『ロングバケーション』は最高視聴率36.7%を記録する大ヒットとなった。その翌年、恋愛要素ほぼなし、“木村主演で『傷だらけの天使』『探偵物語』に続く男のドラマを” という狙いで制作されたのがサスペンスドラマ『ギフト』(フジテレビ系)だ。

木村が演じたのは、51億円を横領して失踪した厚生省官僚・岸和田(緒形拳)のマンションのクローゼットから発見された記憶喪失の青年。横領の共謀者であった人材派遣センター社長・腰越奈緒美(室井滋)はこの青年を引き取り、“早坂由紀夫” と名づけて “届け屋” をやらせている。

奈緒美が、クローゼットの扉を開けたときの衝撃たるや。血まみれで全裸のキムタクがゴロリと転げ落ちてくるのだもの。当時、木村は24歳。血まみれとはいえ、お肌ペカペカ、少年ぽさがまだ残っていて中性的で、一糸まとわぬ姿がなまめかしい。ドラマ的には、これでつかみはOKといったところだろう。

グッチのスーツに身を包んだロングヘアのキムタク


由紀夫が届けるのは、普通の宅配便やバイク便では運べない危険な品。犯罪がらみや届ける相手がどこにいるかわからないパターンもある。由紀夫は “届ける” ということに異常な執着があり、どんな危険を冒してでも使命を果たす。だから “運び屋” ではなく、“届け屋” なのだろう。まあ、“運び屋” なんて呼んだら、もろ犯罪の匂いがするしね。

テーマ曲は、ロキシー・ミュージックのブライアン・フェリーが歌う「Tokyo Joe」。1977年にリリースされたフェリーのソロ作品だが、この曲のエキゾチックさがドラマのムードにぴったりだった。

桃井かおり、宇崎竜童、岸部一徳、葉月里緒奈など、毎回依頼人や受取人として、豪華なゲストが登場するが、このドラマの魅力はなんといってもキムタクのカッコよさに尽きる。グッチのスーツに身を包んだロングヘアの由紀夫が、ロードバイクで渋谷の街を疾走する場面のカッコいいこと。しかもグッチのスーツは一張羅ではなく、毎回変わるのだ。

この頃のグッチのクリエイティブ・ディレクターはトム・フォード。今や語り草となっているトム・フォード期のグッチが、日本のドラマに衣装提供していたのだ。それだけ当時の木村がファッションアイコンとしても魅力的だったということだろう。

小道具使いも上手い。由紀夫が考えごとをするときに吸うのは、キューバの高級ブランド・コイーバの葉巻。届けた際には、受領証の代わりに受取人と品を、首から下げたちょっとレトロ感のあるポラロイドカメラでパチリ。だが皮肉にも、このドラマの小道具使いの上手さが仇となる。そう、バタフライナイフによる刺殺事件である。

バタフライナイフ事件のせいで、再放送不可に


昔の由紀夫は結構なワル。チンピラか半グレといったところだが、悪事の際にやたらとバタフライナイフを振り回すのだ。放送翌年、中学生による、バタフライナイフを使った女性教諭刺殺事件が起こってしまう。犯人は “キムタクがバタフライナイフを振り回す姿がカッコよかった” と言ったらしいが、とんでもない。

あの場面の見るべきところは、バタフライナイフを振り回す姿などではない。見るべきは、あの目。由紀夫なのか、過去の悪かった頃の己が戻ってきたのか、木村はそれを見事に目で演じ分けている。

『ギフト』でのキムタクの演技はとにかくナチュラル。由紀夫はいい奴だが、ちょっとダルそうな感じがいかにも1997年の渋谷の男の子。回想場面や、時折ふと戻るワル時代の危ない感じもゾクッとさせる。あの自然な演技って、やろうと思ってできるもんじゃない。後々 “何を演じてもキムタク” などと皮肉られた俳優・木村拓哉だが、私は当時 “キムタクって意外と演技上手いじゃん” と思ったものだ。

さて、『ギフト』の平均視聴率は18.2%。当時、20%台後半が当たり前となっていた木村主演ドラマとしてはかなり低い。さらにバタフライナイフ事件のせいで、一切再放送されていない。

ちなみにこの後主演した 月9ドラマ『ラブジェネレーション』の平均視聴率は30%を超えている。やっぱりみんな、キムタクの恋愛ドラマが観たかったのか。でも私は、『ギフト』のキムタクが好きなのだ。俳優・木村拓哉にドキッとした、忘れ難いドラマだ。

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