長崎県五島列島では定番の<トビウオ> 海の上を滑空する方法とその理由とは?
筆者の住んでいる長崎県五島列島では、古くからトビウオ漁が盛ん。誰に聞いても、五島の有名な魚といえば「トビウオ!」と真っ先に名前が挙がるのです。
五島列島では「アゴ」と呼ばれ、主に出汁として消費されています。
私が本物のトビウオを見たのは小学6年生の時。
修学旅行の帰りに、五島列島と長崎市を結ぶフェリーの甲板で友達と海を眺めていると、たくさんのトビウオたちが空を飛んでいたのです。
とても感動したと同時に、「なぜ魚なのに空を飛ぶの?」という疑問も浮かんできました。
空飛ぶ魚! トビウオとは?
トビウオはダツ目トビウオ科に属する魚で、温かい海に生息。主に動物プランクトンを主食としています。
トビウオの生態で一番面白いところは、名前の通り「海の上を飛ぶ」こと。
滑空時は当たり前のように100メートルは飛ぶことができ、滑空前の助走速度では時速約35キロで空中滑空時の速度は50キロから70キロ、高さは3メートルから5メートルほどまで飛ぶことができると言われています。
また、滑空中に急ブレーキや方向転換もできるなど、魚とは思えない飛翔術を駆使し生活しています。
では、なぜここまで飛ぶことができるのでしょうか。また、魚であるにも関わらず、なぜ飛ぶ必要があるのでしょうか。
トビウオが飛ぶ理由とメカニズム
トビウオが空を飛ぶ理由については、マグロやカジキ、シイラなどといった天敵から逃げるため、そして、体についている寄生虫を振り払うためと言われています。
トビウオの体は見れば見るほど、飛ぶことに特化した体であることがわかります。
トビウオのヒレは特別な構造をしており、胸ビレが非常に長く、鳥の翼のように広がり、さらに、この胸ビレの骨と筋肉は頑丈にできているため、空中でも安定した滑空を可能としているのです。
では、どのようにして飛んでいるのでしょうか?
まず、水中で勢いよくヒレを動かし短時間でトップスピードへと到達。そのまま水面を切るように飛び出し、自慢の胸ビレを広げて滑空を行います。
しかし、これだけではわずかな飛距離しか飛ぶことはできません。
トビウオは、飛んでいる最中に尾ビレを水面に叩きつける動きを繰り返す「水上助走」というテクニックを駆使しながら、遠い距離を飛んでいるのです。
まさにトビウオの名に相応しい飛翔術ですね。
五島列島でのトビウオの使い道
五島列島及び九州や日本海側では、トビウオのことを「アゴ」と呼んでいます。
この呼び名は諸説ありますが、そのうちのひとつには<アゴが落ちるほどに美味しい魚>という説も。そのほか、食べるときに硬くてあごをよく使うから、トビウオを前から見るとあごが出ているから、トビウオの学名である”Cypselurus agoo”からといった説があるようです(あごが落ちるほど美味しい魚-九州あご文化推進委員会)。
そして、五島列島が位置する長崎県は「アゴ出汁」発祥の地であり、トビウオは刺身などで食べるよりも、うどんや料理の出汁に使用することが多いです。
五島の郷土料理「五島うどん」も、アゴ出汁を使って食べるのが特徴。アゴ出汁の旨みが細麺に絡んで絶品です……! 筆者も五島うどんが大好きです。
もし五島列島へ訪れる機会があれば、ぜひトビウオを観察したり、味わったりしてみてください。
(サカナトライター:ティガ)