「砂浜侵食」海水浴場の開設中止も
(写真:鉾田市提供)
夏本番、各地の海水浴場で海開きが行われていますが、「砂浜の侵食」によって、海水浴場の開設を中止するところが出てきています。
「茨城のゴールドコースト」砂浜の侵食で海水浴場中止
綺麗な眺めから「茨城のゴールドコースト」とも呼ばれている茨城県鉾田市の「大竹海岸鉾田海水浴場」もその一つなんです。鉾田市商工観光課 係長 菊地徳仁さんに伺いました。
鉾田市商工観光課 係長 菊地徳仁さん
砂浜の侵食による影響があって、海岸に設置している階段状の護岸ブロックが一部破損して、護岸や砂浜を通行することが危険で、お客様が怪我をしてしまう可能性を考慮した結果、開設を中止させていただいております。今までは浜があったので強い波ではく、弱くなっている波が浜で止まっていたんですが、砂浜が少なくなっているので、勢いが強い波が護岸に当たり、さらにそれが戻る強さによって、砂浜も持っていかれますし基礎部分の倒壊につながってしまった。もちろん海水浴場は貴重な観光資源ですし、心苦しい部分ではありますが、安全を第一に考えて中止を決めましたので、ご理解いただければと思います。
(写真:聴取者提供)
砂浜の侵食によって、護岸が壊れたり岩が突き出たりして、危険な状態になっているということなんです。この大竹海岸鉾田海水浴場は、1キロほどの直線的な海岸で、去年の海水浴場の開設期間中は、1ヶ月でおよそ2万5000人が訪れる人気ぶり。新型コロナウイルス以外での海水浴場の開設中止は、今回が初めてだそうです。
この海水浴場のある鹿島灘では、沿岸の開発などの影響で、砂が砂浜に運ばれなくなったことなども、砂浜侵食の背景にあると見られていて、鉾田市としては、来年以降、海水浴場を開けるように、県や国に対策を要望していきたいと話していました。
もらった土を運んで間に合った!今後の懸念も
一方、砂浜の侵食被害を受けながら、なんとか海水浴場の開設に漕ぎつけたのが新潟県上越市の「鵜の浜海水浴場」です。大潟観光協会の事務局長 佐野謙一さんのお話です。
大潟観光協会 事務局長 佐野謙一さん
大きい侵食は昨年11月後半から今年1月にかけて、冬季波浪、強風によるもの。海岸から海まで3、40mあったのが半分はゼロです。今ある砂を右から左へ、やりくりして「砂浜をなんとか戻そう」と当初考えていたんですが、県の河川工事で砂が出ることが分かって、その砂を海へ持ってきてもらって、なんとか今年も継続して開設できます。もっとひどい状況になるのは考えられるので、冬場になると海岸が侵食される、夏になんとか海岸を戻す。その繰り返しができるのか心配。
県の工事で残った砂を海岸に運んで、うまく馴染ませて、さらに表面に今まであった砂浜の砂を被せることで、これまでの砂浜に近い形にな李ました。佐野さんによると、この海水浴場は、冬場の風が強くて、東から吹く風と波によって、砂浜が削られて侵食していくそう。今年はなんとか今月海開きを行って、ひとまずほっとしていましたが、ただ、たまたま県の工事の土をもらえたものの、来年以降、同じことが起きた時にどうなるか、不安を口にしていました。
「土のう」と「植物」で砂浜を復元
そんななか「砂浜の侵食」について、違った視点で、研究・対策に取り組んでいる団体があります。静岡県浜松市の遠州灘海岸で活動する特定非営利活動法人サンクチュアリエヌピーオー 馬塚丈司さんに伺いました。
特定非営利活動法人サンクチュアリエヌピーオー 馬塚丈司さん
海岸には植物帯があるんです。砂浜の3分の1くらいが植物帯。分かったことはオフロード車が走り回って、砂浜走るより、植物帯を走った方が走りやすい、移動するときに。そこに生えている植物は「コウボウムギ」が一番多いんですけど、植物帯を走ったために、植物が枯れたんです。枯れたところに海水が入ってそれが帰っていくときに砂を持っていっちゃう。低くなって、海の水がどんどん中に入ってくるんです。それで砂浜がなくなったように見えているんです。だから、みなさんが侵食と言うのは削られたわけではないんです。浜を高くしてあげれば砂浜は出てくる。コーヒー豆が入っていた麻袋を利用して、その中に砂を入れてコウボウムギの種を入れて、海岸の危ないところに並べておく。そうするとそれが植物のような役割をして、砂が溜まる。そのコウボウムギが麻袋から芽を出して植物も広がるんです。そこに砂が溜まるという形で砂浜を復元しているんですね。
馬塚さんによると、車が走って植物が潰されて、砂浜が痩せていき、どんどん沈んで低くなって、そこに海水が入ってくる、という悪循環になったということ。「植物の種を入れて麻袋・土のうを積む」対策を年に10回ほど行なっていて次の年には、対策を行なった場所は植物帯、砂浜になっているそうで、砂浜復元の効果を実感しているということでした。
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:西村志野)