鶏も豚も野菜も、食材はすべて国産。減塩でダシの旨み増の琥珀スープが自慢【支那そばや 翠月】子連れにも人気の無添加ラーメン
暑い日でも無性に食べたくなるのが、ラーメン。
たくさん汗をかきながら食べると、不思議とさっぱりとさわやかな気分になります。
中国由来の麺料理が独自の発展を遂げたラーメンは、今や日本の国民食とも言われ、全国には約1万8000軒ものラーメン店があると言われます。ロードサイドの大衆店やご当地ならではの店、和食やフレンチを極めた店主の店など、麺やスープ、食材にこだわった個性的な店はさまざま。
そんな中から今回は、国産の食材を使って無添加や減塩にこだわった富山のラーメン店を紹介します。
鶏・豚・野菜…食材はすべて国産「支那そばや 翠月」
店があるのは、梨畑や水田が広がる呉羽丘陵のふもと。富山市ファミリーパークにも近い富山市東老田です。
田園の中の駆け抜ける県道沿い、赤い看板の「支那そばや 翠月」が目立ちます。
店内はカウンター席を中心に、ゆっくり食べられる小上がり席も。ベビーチェアも準備されていて子育て世代の利用も多いお店です。
「子供に初めて食べさせるラーメンは翠月でっていうご家族もおられて、そんな言葉を聞くとうれしいですね」
顔をほころばせるのは、翠月の代表 伊原徹さんです。
富山ブラックラーメンからの“卒業”
伊原さんがラーメン店を始めたのは、1995年のこと。
「最初はね、富山ブラックラーメンを提供していたんですが、納得のいくラーメンを追求しているとき、佐野さんのラーメン道を聞いて、これだって思ったんです」(伊原さん)
佐野さんとは、“ラーメンの鬼”の異名をもつ「支那そばや」の創業者 佐野 実さん。
そのラーメンにかけるこだわりやストイックな姿勢に感銘を受けた伊原さんは、すぐに自分のラーメンへの想いを綴った手紙を佐野さんに送ったんだそう。その後、佐野さんの元で約8か月の修行を積み、佐野さんの教えを取り入れながら独自のラーメンスープと自家製麺を完成させました。
「余計なものは入れない」 道を貫く独自のラーメン
「翠月」のラーメンのこだわりは、徹底的に余分なものをそぎ落とすこと。
ただ単にあっさりとシンプルを貫くというのとも違い、余計なものをそぎ落とすことで“本来のおいしさ”を引き立てています。
「鶏も、豚も、野菜も、材料は全部国産です。余計なものは入れない。無添加のスープで砂糖も使いません。それと減塩ですね」(伊原さん)
スープは、利尻昆布、本節、サバ節、メジマグロ節に、名古屋コーチンと軍鶏の丸鶏や鶏ガラを使って丁寧に仕込んでいきます。
塩分を減らして旨みを増やす 原価度外視のまろやかスープ
食材の旨みがたっぷりと溶け出した琥珀色のスープは、まろやかな舌触り。
口のなかに広がる後味の余韻もしっかりと楽しみたい味わいで、減塩とはいうものの、塩分の物足りなさもまったく感じません。
「使ってる塩はだいたい5g。塩分濃度は一般的なブラックラーメンに比べると半分以下です。だからその分、ダシの旨みを増やさなきゃいけないんです。昆布や本節なんかは、通常の1.5倍から2倍の量になるんで、この人に怒られるんです」
と、隣で微笑む奥さんに目を向ける伊原さん。
開業から30年、2人3脚で歩みを進めてきたふたりの様子を見ていると、こちらもうれしくなります。
天然のかん水を使い 小麦の風味を味わう自家製ストレート麺
日々の気温や湿度を計算しながら毎日仕込んでいる自家製麺は中細のストレート。
「国産小麦を使って材料にも気を遣っているんだけど、かん水はどうしても添加物になっちゃうのね。でも、できるだけ体に負担のないものを、と思って天然のかん水を使ってます」(伊原さん)
ズルズルっという音とともに口いっぱいに広がる小麦の風味。
弾力、のどごし。スープとのバランスも緻密に計算されています。
器の半分を占める大きなチャーシューは豚バラ肉。しっかりと分厚いものの、舌でも押しつぶれるほどのやわらかさです。
「冷凍をかけてない豚を使ってるんで、やっぱりおいしさは違うと思います」(伊原さん)
ちなみに、ラーメンのチャーシューは豚バラですが、チャーシュー麺に使用されているのは豚ロースのチャーシューなんだとか。食感や脂の違いを味わうのも、また楽しいものです。
土日限定の特別メニューも 毎日楽しめる安心のラーメン
ラーメンの一番人気は、「しおねぎ」。それに醤油味と味噌味があり、それぞれワンタンやチャーシューのバリエーションがあります。
このほか、土・日曜の限定で登場するのが、鹿児島産黒豚しゃぶしゃぶ・平打ち麺の「じゃこだしラーメン」や、のど黒・真鯛・ハマグリ・しじみラーメンなど。
不定期で提供される特別なラーメンも楽しめます。
「東京などにあるちょっと珍しいラーメンを富山でも楽しんでもらおうと、自分なりに工夫して作っています。お客さんの休日のひとつの楽しみになればいいな、と思って」(伊原さん)
創業30周年を迎えた2025年の夏は、オマール海老を使った豪華なラーメンにも挑戦。予定数に達したため、残念ながらすでに予約受付は締め切っているそう。
今後もどんな特製ラーメンを味わえるのか、注目ですね。
母が作ってくれた毎日のおいしいごはんのように
ラーメンを毎日でも安心して食べられるように。その想いが伊原さんのこだわり尽くしのラーメンの原点です。
「無添加スープの原点は、うちの母親が作ってくれていた毎日のごはんかもしれません。食材のおいしさを最大限に引き出す。このおいしさをみなさんに楽しんでもらいたいですね」(伊原さん)
塩分や脂、カロリーなどが気になる人でも安心して楽しめる…こだわりと愛情が詰まったラーメンです。
【支那そばや 翠月】
住所 富山県富山市東老田
営業時間 平日 11:15~14:30
月曜夜 17:30~19:00
金曜夜 17:30~19:30
土・日・祝日 11:15~19:30
定休日 木曜、水曜不定休