ブランドの売上・価値の最大化支援を通じ、世に貢献する事業を輩出する「社会の果樹園」<株式会社ACROVE 井野部裕紀さん>【東京都千代田区】
世界的な経済誌であるForbesの日本版・Forbes JAPANで、次世代を担う「30才未満の30人」を選出する「30 UNDER 30」の1人に選出された株式会社ACROVEの代表取締役の荒井俊亮(あらい しゅんすけ)さん。荒井さんは2018年、学生時に起業し、えんどう豆を原料としたピープロテインの開発・電子商取引(以下EC)販売事業で初年度5000万円の売上を達成しました。
その体験で得たEC販売のノウハウが社会貢献につながればと考え、ECの販売支援をする「CX事業」を展開。2022年には企業合併・買収(以下M&A)により価値あるブランドをともに育てる「ECロールアップ事業」を始め、大きく事業を成長させています。
ACROVEとは、英語で「とがった・先端」という意味と「果樹園」を組み合わせた造語。フレッシュさのある20代後半の社員が多く、個々の長所を生かすことで、お客様・社会・社員の三者が笑顔になれる世界を目指しています。
ACROVEが今取り組んでいること、そしてその先に考える未来とは何なのか。事業本部長である井野部裕紀(いのべ ひろき)さんにお話を伺いました。
データ分析をもとに売上を確実に伸ばす提案をする。EC販売支援とM&Aでグループを成長させる
株式会社ACROVEの事業は大きく分けてECの販売支援をする「CX事業」と、M&Aにより価値あるブランドをともに育てる「ECロールアップ事業」があります。
「CX事業は代表の荒井が学生起業家として、プロテインをオンラインで販売したことから始まります。その事業が大変うまくいき、『蓄えられたEC販売の知見を、コロナ禍でオンライン事業に取り組む他社様のお役に立ちたい。それが社会貢献につながれば嬉しい』という思いからACROVEがスタートしました。
ロールアップ事業では、いわゆるM&Aである買収、売却が目的ではなく、価値あるブランドを持っている企業がグループジョインをして、そのブランドをともに育て、長期的に営業利益・売上を上げ、グループ全体を拡大させる戦略を取っています」
クライアントやグループジョインする企業は、なぜACROVEを選ぶのでしょうか。
「多数ある支援企業から、なぜACROVEを選んでくれたか考えると、弊社は事業者として一番に気になる収支計画の提案ができるからだと思います」
“ACROVE FORCE”という独自のEC最適化エンジンで、支援している法人の販売データを蓄積しており、中立的な立場で分析して現状を伝え、どのようにしたら売れるのか最適な提案ができるのだそうです。
「私たちとお客さまを橋渡しするセクションがあり、EC売上最大に向けてデータをもとに情報交換や実行予定の施策を提案する機会を定期的に持っているところが特長です」
その結果2024年9月の時点では、売上向上支援先は全国に約170社にまで増えました。グループ会社は現在10社以上、連結従業員数は約220名。2年間で16件のM&Aを実現しています。
お客様にしっかりと”ありがとう”と言われる水準になってるかが重要。提供価値の水準へのこだわり
ACROVEの特徴の一つに社員の年齢が若いことが挙げられます。
「社員1人1人の長所を生かすことがACROVEの社名に結びついています。平均年齢は約28歳と比較的若手の社員が多い一方で、お客様に価値提供できる基準を高くキープすることを非常に大事にしています。
法人様と消費者様双方に対して、それぞれ価値を提供することがビジネスの根本にあります。最終的に価値提供基準であるエンドユーザーに照準を合わせ、『お客様にしっかりと”ありがとう”と言われる水準になっているか』という物差しでちゃんと全員が同じ方向を向けるようになることが重要です」
それぞれの人と企業の価値を尊重しながら、グループを成長させる
ACROVE創業初期、サービスを広めていくフェーズであった2021年にジョインした井野部さん。入社してから早いスピードでグループジョインする企業が増える状況で、どのように会社は変化を遂げているのでしょうか。
「確かに事業は大きく成長していますが、軸は変わっていないと思います。お客様に対して高い価値を提供していくことはもちろん、それをともに実現する人を大事にしており、その軸はずっとブレていません。それがミッションでもある『社会の果樹園を創造する。』につながっていると思います。
M&Aに関してもジョインする企業の社風はそれぞれ尊重し、事業も文化も取り入れるものは取り入れる。そうすることで変化が生まれていくことを大切にしています」
グループ企業がジョインするまで、自社では知れなかったノウハウや販路、考え方を持っている領域に触れていく。そこを広げられるところがひとつの面白みだと井野部さんは話します。
社会貢献する人と事業が育つ、栄養豊富な肥沃な土壌・社会の果樹園を作る
ACROVEが今後目指す社会創造に向けて、社員はどの面から見ても「いい人」である必要があると言います。それは金太郎飴のような状態を目指しているのだそうです。
「代表はミッションである『社会の果樹園を創造する。』について、よく説明をしています。『社会の果樹園を創造する。』とは、社会貢献できる人や事業が育ち、世に出ていく肥沃(ひよく)な土壌を作るということです。私たちが作る土壌は、栄養が豊富だからこそ、人や事業が育つし、新しいサービスも生み出すことができます。
日々僕たちができることは、あらゆる局面で人と出会ったらその人を尊重し実直に仕事をする『いい人』であることです。その日々の行動が長期的に肥沃な土壌と果樹園を作ることにつながるはずです。
つまりACROVEの中での「いい人」とは、どんな人なのだろうか。
「価値提供をする相手の立場でちゃんと物事を見ること。そして、普段の言動や言葉から、しっかり相手の立場に立っていることが伝わってくることが重要です。それがビジネスの中で我々の思う『いい人』かなと思います」。
ACROVEを基に社会の循環を生み、社会貢献し続ける
今後ACROVEで活躍する人ばかりではなく、会社を卒業して、自分で社会をより良くするために活動をする人が生まれることも井野部さんは楽しみにしていると言います。
「代表も1つの土壌として人材輩出をすることは大切なことだと言います。もちろん優秀で活躍している人材には定着して、会社を盛り立ててほしいという本音もあるとは思うんです。
ただ、”ACROVE”という場所にとどまらず、世に貢献できる人がACROVEから輩出できるということも、大きな価値であり、良い社会循環につながりますし、ACROVEの本望でもあると思います」
今後、より良い社会循環を生み出すこと、また社会の果樹園となることを目指し、10兆円規模の企業を目指すACROVEから目が離せません。
聞き手:丸山夏名美・手島慧、執筆:藤木彩乃