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秋アニメ『最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか』キャラクターデザイン担当・芳我恵理子さんインタビュー|貴族なのでみんな姿勢が正しいというのは気を付けていました【連載09】

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

シリーズ累計187万部(漫画、電子含む)を突破するファンタジー小説『最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか』がTVアニメ化。2025年10月3日よりTOKYO MX・BS11・群馬テレビ・とちぎテレビ・MBS・CTV・AT-Xほかにて放送中です。

本作は、“武闘派公爵令嬢”スカーレットによる痛快ファンタジー。第8話では、北の街・スノーウィンドへ辿り着いた一行を、パリスタン王国の“真の聖女”を名乗る宿敵が待ち受ける。そして、裏切り者の正体が明らかになり……。

アニメイトタイムズでは、本作の見どころをキャスト・スタッフに聞くインタビュー連載を実施! 連載第9回目は、キャラクターデザインを担当した芳我恵理子さんに、デザインするうえで意識していたことを中心にお話を聞きました。

 

 

【写真】秋アニメ『さいひと』キャラデザ担当・芳我恵理子に聞く制作秘話「貴族なのでみんな姿勢が正しいというのは気を付けていました」

ジュリアスはアニメのデザインとして固まるにはなかなか苦戦したキャラクターでした

──最初に原作を読んだときの感想を教えてください。

芳我恵理子さん(以下、芳我):キャラクターデザインを担当すると決まって最初にコミカライズを読ませていただいたのですが、アクション、キャラクターの美麗さ、世界観、どこをとってもハードルの高い作品だなと感じました。そしてお話のテンポの良さにどんどん魅力的なキャラクターの登場。あっという間に既刊を読んでしまいました。

キャラクターデザインとしての視点で言いますと、まずほおのき先生の圧倒的画力と表現力に圧倒されました。表情の豊かさ、流線の美しさ、構図のカッコよさ、衣装デザインの秀逸さ。そして作品から溢れ出る熱量がクリエイターとしてアニメーションで必ず表現したい!と思った記憶があります。

 

 

──本作のキャラクターデザインを担当するにあたり、監督とはどのようなお話をされましたか?

芳我:アニメはコミカライズをベースとしているため、ほおのき先生の絵をアニメーションとして動かせるけど、あの美麗さを損なわないデザインにしましょうってお話はした記憶があります。絵コンテでもコミックスのコマを引用したカットが多く、監督はほおのき先生の絵の美しさ含めてアニメで表現したいのだろうと感じていましたし、私もそこはこだわっていきたいなと思っていました。

──スカーレットをデザインするうえで気を付けたこと・原作サイドの方々やスタッフからどのようなリクエストがあったのかを教えてください。

芳我:ジュリアスに百面相といわれるくらいには表情豊かでありつつ、とても繊細な表情をするスカーレットなので、キャラクター設定の表情集は21種類描きましたが、今思うと少なかったなと感じます。それくらいにはスカーレットは型にはまらないキャラクターでした。

設定作業する際に設定制作さんがコミカライズの既刊のコマを感情別の画像を作ってくださって、この時の感情だとここまで眉や下瞼は動く、口はどこまで大きく開くか、微細な違いを確認できる資料を作っていただいており、その資料にはとても助けてもらいました。

監督からは微妙な角度での立体表現や、眉の角度などをチェックバック頂いたように記憶しています。制作スタッフのサポートや監督チェックもあってか、原作サイドの方々からスカーレットに対する要望はいただいていないと記憶しています。なさ過ぎて困惑してました(笑)。

 

 

──第一王子のジュリアスのキャラクターデザインをするうえで気を付けたこと・原作サイドの方々やスタッフからどのようなリクエストがあったのかを教えてください。

芳我:ジュリアスでいちばん気を付けたのは目と眉でした。眉の角度が2度変わればジュリアスではなくなってしまうくらい、ジュリアスは眉!って思って描いていました。目もジト目ではないのですが、パチッと開かず憂いのある目元になるようにしています。そこがジュリアスのビジュアルとして聡明さを引き立てているのかなと思っています。

ただ、ジュリアスはアニメのデザインとして固まるにはなかなか苦戦したキャラクターでした。うろ覚えですが1ヵ月位うまくデザインをまとめられずに悩んで、まだ顔合わせもしていないのにリモートでほおのき先生にジュリアスについて質問をしたり、お話聞かせていただいたりしました。これを経て、眉や目がジュリアスのキーポイントだと気づけたのでほおのき先生や手配くださった皆様には感謝しかありません。

 

 

──ナナカは登場時からインパクトのあるキャラクターでした。ナナカをデザインするうえで気を付けたこと・原作サイドの方々やスタッフからどのようなリクエストがあったのかを教えてください。

芳我:ナナカはかわいい少年枠であり、ケモ枠であり、メイド服も着てくれ、空気も読める完璧少年。表情はカッコよくても、髪のシルエットがかわいいことを気を付けていました。ただ、脱ぐと意外とちゃんと少年でありつつ筋肉がついているので、裸は色々気を遣って描いた記憶があります。

先述しましたが、原作スタッフの方々からのリテイクは本当に数えるほどしかなかったのですが、唯一ナナカの狼姿は耳の肉感足しの要望をいただきました(笑)。

 

 

ディアナほど感情の起伏が激しいキャラが『さいひと』にはいないと思う

──貴族社会の様子が描かれる本作。そういった作品のキャラクターデザインを担当するうえで、事前に準備することや参考にする資料はございますか?

芳我:作品が動く際に設定制作さんが中世ヨーロッパ期の資料をたくさん集めてくださって、特に女性貴族の服装などは参考資料を確認することは多かったです。初めて作品に関わるアニメーターさんもいらっしゃるので貴族や下町の庶民のモブ設定を作成して伝わるように心がけていました。

そして、貴族なのでみんな姿勢が正しいというのは気を付けていました。スカーレットは特にそうですが、顎を引き、背筋は常に伸びており人と話す際も手を前に重ねています。カーテシーも所作として行うことも多かったので、監督や設定制作さんでその資料は作成され、作業者には共有されていました。

 

 

──本作のなかで特にキャラクターデザインするのが難しかった、もしくは悩んだキャラクターを教えてください。

芳我:先ほどお話した通り、いちばん苦戦したのはジュリアスでした。その次で言うと、パルミア教関連のキャラクターたちの収まり感で悩むことがありました。異端審問官だと、ミシェラン以外はサブキャラクターデザインの3人に描いてもらっていて、その監修をさせていただいておりました。

パルミア教関係のキャラクターはみんな個性派揃いで、第6話に出てきたジャルモウは超大柄だけど、どのくらいで頭身収めるか、第8話で出てきたパドラックや教皇サルゴンは身長低いけど頭が結構大きいのでどうバランスをとるか、というのを探りながら作業していました。

──悪逆な者たちをスカーレットが鉄拳制裁する様がスカッとする本作。芳我さんは、どんな瞬間にスカッとしますか?

芳我:アニメ制作をしていての話になりますが、必死に描いた絵が素敵な色や背景、撮影処理が乗って最高の画面になったときでしょうか。そして見てくれた方々に喜んでいただけた時がいちばんスカッとします!

 

 

──今後の見どころを教えてください!

芳我:ディアナの抱える感情でしょうか。ディアナほど感情の起伏が激しいキャラが『さいひと』にはいないので描いているのは楽しかったのですが、心に秘めているスカーレットへの感情はそうだったのか、と思ってしまうと思います。そしてテレネッツァとスカーレット、ジュリアスとスカーレットの因縁の顛末! 引き続きお楽しみください!

 
[文 M.TOKU]

 

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