年収400万35歳独身女性、住宅ローン35年で返せる目安額は?
FPオフィス「フォルテシモ」へ依頼されたお客さまの家計簿を、mymoで診断する【うちの家計簿】。今回は35歳独身女性、公務員Dさんの家計簿です。現在は賃貸暮らしですが、いずれマイホームを購入したい気持ちもあり、ローンの目安額を知りたいというご相談です。
賃貸暮らし・35歳独身公務員女性Dさん
賃貸で暮らして10年ほど経ちますが、いつかは自分の家が欲しいなとも考え始めました。家を購入することも検討しています。70歳までに住宅ローンの返済を終えたいのですが、いくらぐらいまでの物件だったら買えるのか、目安が知りたいです。
Dさんの家計簿は…?
月々の手取り26万3000円です。毎月の貯金額は手取りの約15%である4万円、その他ボーナス等でさらに50万円を貯金し、年間貯金額は98万円です。現在の貯金額は650万円です。
住宅購入と「ローン」利用
日々の買い物をする際に、手元にあるお金で無理なく買える金額かどうか考えるのは、皆さん当たり前にやっていることと思います。手元のお金で買えないものがあれば、分割払いを検討し、返済が完了するまでにどのくらいの期間がかかるかを具体的に考えて、「買う」「買わない」などを判断していくと思います。
しかし、住宅など高額なものを購入するとなると、月々の収入の中では買うことができませんし、貯金から一括で支払って買える方は少ないため、多くの方は住宅ローンを申し込んで住宅を購入する流れとなります。
「ローン」とは
【画像出典元】「stock.adobe.com/thodonal」
「ローン」には「貸し付け」「融資」などの意味があり、一般的に「銀行などの金融機関からお金を借りること」、つまり借金を意味します。
お金を借りると、借りたお金に「利息」を加えた金額を返済していくことになります。「利息」は、お金を借りたときに決めた「金利」によって変わります。
また住宅ローンを申し込む際に必要となる「担保」とは、金融機関に対してお金を返すことができなくなった際に、住宅ローンの契約者が金融機関に差し出すもののことをいいます。
住宅ローンの担保には不動産を対象とした「物的担保」と、人を対象とした「人的担保」があります。「人的担保」は住宅ローンの残高の返済を第三者に保証させることをいい、お金を借りた本人の返済が滞ると、金融機関から「人的担保」の対象者に返済請求が行われます。
モデルハウスを見学して気に入った物件を見つけ、年収から「借入可能額」を試算してもらうことがあると思います。想像していたよりも多くの金額を借りることができると言われ、嬉しくなってそのまま止まらないエスカレーターに乗ったようにあまり考えることなく購入してしまった、というお話も伺います。
しかしローンは借金であり、ローンを組んだら必ず借りたお金を返済しなければなりません。返せる金額かどうか、頭金の金額や返済期間などについて検討し、事前に無理のない返済計画を立てておくことが大切です。
「金利」「利息」以外にも、返済できない時の「担保」の内容についてどのような「物」や「人」に影響を及ぼすことになるのか詳細を十分確認し、住宅購入手続きを進めるようにしましょう。
「家賃」と同じ返済額であればローンは大丈夫?
Dさんは10年ほど賃貸にお住まいとのことですが、購入する場合は「固定資産税」「修繕費用」「火災保険料」「地震保険料」、マンションの場合には「修繕積立金」や「管理費」などの支払いが必要となります。
ここからは、住宅ローンの月々の返済額以外で住宅に関する支払金額が年間でいくらぐらいになるか、どのように支払っていくかを具体的に考えてみましょう。例えば家賃と返済額が同額だとして、その他の住まいにかかる費用を貯金から支払っていくとすると、当たり前ですが貯金できる金額が少なくなります。
返済しながら貯蓄ができるように:返済額の目安
返済期間を70歳までに終えるとすると、Dさんは現在35歳なので返済期間は35年となります。
毎月の住宅ローン返済額から借入可能額を確認してみます。
毎月の返済額を6万円として仮にマンションの維持費を2.5万円とすると、合計月々8.5万円が住宅関連費用の支出となります。
現在の家計から8.5万円を住まいの費用として月々支払うと考えると、現在の家賃7.3万円に加えて1.2万円の支出が必要となります。現在は毎月4万円貯金できていますので4万円から1.2万円を住まいの費用に回しても、2.8万円が貯金できます。
【毎月の返済額から考える借入可能額】
金利1.0%、35年で返済するとしたら2125万円の借入が可能となります。
仮に頭金を500万円出すとすると、2125万円+500万円=2625万円となります。
2625万円の物件であれば、ボーナスからの貯金には影響を与えないこともあり、今の家計のその他の支出には大きな影響はでないと考えられます。
働いて得た収入をどのように使っていくか具体的に考えていくことで、納得できる物件の購入に繋がっていくと思います。住宅ローンを返済しながら、自分のやりたいことなどのために貯金をできるかなども考えていきましょう。
住宅価格が高騰すると借入額・利息も高額に
「頭金ゼロでもいいのでは」「頭金を出すより、超低金利の今のうちに借りた方がおトクなのでは」と考える方もいるかもしれませんが、借入額が高額になると、それに加わる利息も高額になります。住宅ローンは長期の支払いになるため、支払期間途中の金利の変化も意識して返済計画を立てておきましょう。
「頭金ゼロの人も多いらしい」「なんとかなるかも」と考えても、一人一人家計の状況、価値観などが違います。頭金ゼロの場合と頭金を〇〇円入れた場合のシミュレーションをそれぞれ行った上で検討することが大切です。
賃貸暮らしを続ける場合のシミュレーションも
【画像出典元】「stock.adobe.com/mizar_21984」
住宅を購入しない場合、70歳まで現在の家賃を支払い続けると
7.3万円×12カ月×35年=3066万円
3066万円支払っても不動産を所有しているわけではないので、自分の資産が増えているわけではありません。70歳以降の家賃をどのように支払っていくかも考えておく必要があります。
購入か賃貸か、どちらが正解かということはありません。どちらの場合もざっくりとシミュレーションしてみて、自分の収入をどのように使い、どのように生きていきたいか考えてみましょう。
30年、35年支払い続ける買い物が住宅です。購入・賃貸、どちらにしても住宅にはお金がかかります。自分のやりたいことを一番考えられるのは自分しかいません。これからの自分の住まいについてじっくり考えてみましょう。
アドバイスを受けたDさん談
数字を具体的に考えていくとイメージが湧いてきました。これから自分がどうしたいか考えてみようと思います。70歳の自分はまだ分からないけれど想像することはできるので、先のことをイメージしながら、購入と賃貸の両方を検討した上で、購入について前向きに検討していこうと思います。
家計簿診断を終えて
共働き世帯の場合、お互いがフルタイムで働いている今の収入、貯蓄から借入額などを決めてしまうと、その後の出産や育児で産休や育休、転職や退職などで世帯の収入が少なくなった際に返済に困ることがあります。将来のライフプランの変化にも柔軟に対応できるよう計画を立てておきたいですね。