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【企業レポート】“技術のまち 長岡”を設計し、次世代へバトンを繋げる 廣井 晃代表取締役に聞く(新潟県長岡市)

にいがた経済新聞

長岡市地蔵に本社を構える株式会社広井工機(設立:1964年)は、創業以来、工作機械や半導体製造装置、省力化機器の設計を手がける、長岡の老舗設計企業だ。高度な一貫設計体制と柔軟な対応力を強みに、JR東日本や長岡技術科学大学、国内外のメーカーと連携してきた。近年では、戊辰戦争時に長岡藩が外国から購入したとされるガトリング砲の復元や、3Dプリンタを活用した新製品開発などにも挑戦している。

美沢にも施設を構える広井工機

同社の廣井 晃代表取締役は長岡市出身。長岡高校を卒業後、東海大学工学部精密機械工学科に進学し、卒業後は倉敷機械に3年半勤務。産業機械や工作機械、航空機治具の設計、機械の検査などを経験した。帰郷後、父が創業した広井工機に入社し、現在は代表取締役として会社を率いている。PTAやNPO活動にも積極的に関わり、かつては長岡市議会議員も務めた。現在は長岡工業高等専門学校で非常勤講師も務めており、産・官・学の分野で幅広く活躍している。今回は、廣井代表に「ものづくりの未来」と「地域社会への想い」について話を聞いた。

父親の代から続く会社を守っている廣井 晃代表取締役

― 長岡のものづくり産業の現状をどう見ていますか?

長岡には古くから機械加工や設計技術が根付いていますが、技術者不足や若者の流出といった課題も抱えています。私は、外国人インターンの受け入れや自動化技術の活用など、柔軟な取り組みで次代に対応していく必要があると考えています。もはや中堅メーカーの下請けに甘んじていればいい時代ではありません。変化を恐れず挑戦することが、中小企業にこそ求められています。守るだけではなく、攻めていかなければなりません。

かつては、図面を描ける人材が貴重でした。そのため、設計士の需要も高かった。しかし、CADが普及したことで、パソコンが扱えれば誰でも設計ができる時代になり、設計自体の需要が相対的に減ってきました。一方で、図は描けるけれど中身の伴わない図面も増えています。それは、実際に機械を扱う経験が不足しているからです。機械を使いこなす経験を活かし、実践的に仕事ができる人材が今、強く求められています。

― 地域との連携について、具体的な取り組みを教えてください。

長岡技術科学大学と連携し、スペイン、マレーシア、スリランカ、モンゴル、中国、インドなどからインターンを受け入れています。設計技術だけでなく、日本の現場文化にも触れてもらい、国際的な視野を持った技術者の育成を目指しています。また、地元企業との協業による省力化機器のカスタム開発などを通じて、地域全体の生産性向上にも貢献しています。

― 過去に市議を務められていましたが、その経験は現在にどう活きていますか?

当時は産業界からの立候補者がいませんでした。「誰かが出なければ」という想いから立候補し、2011年から2期にわたり市議を務めました。ちょうど当選した年に東日本大震災が発生し、災害時には生産性が著しく低下する現実を目の当たりにしました。そこで、地域外の企業と連携して産業防災体制を整えました。この経験を通じて、産業行政に一定の貢献ができたのではないかと感じています。現在は議員職を離れていますが、その経験は今も経営判断の大きな土台となっています。

― 少数精鋭の現場で、どのようにチームをつくっていますか?

現在は正社員3名で現場を運営しています。できる限り業務をアウトソーシング化し、案件ごとに専門家を集めた分業体制をとっています。この体制によって、意思決定を自社で完結できるようになり、結果として短納期で高品質な製品提供が可能になります。

3Dプリンタを活用した新商品の開発にも積極的に取り組んでいる。たとえば、ペットボトルの蓋を使って遊べるおもちゃを製作しており、SDGsにも配慮したものづくりを進めている。

― 若い世代に向けて、起業やものづくりへのメッセージをお願いします。

完璧である必要はありません。まずは動き出してみてほしい。長岡には支援制度も整っており、相談できる人材も豊富にいます。都会に出るだけが選択肢ではありません。地元で起業し、根を張って生きる道もあるのです。

また、自分の技術に酔ってはいけません。現場をよく観察し、お客様と密に連絡を取りながら製品をつくることが大切です。ものづくりは長岡市の基幹産業であり、ひとづくりであり、まちづくりでもあります。ものづくりが盛んになれば、まちづくりも自然と活気づいていくのです。

ものづくりの現場と地域社会、その両方に目を向けてきた廣井氏の言葉には、次代を担う覚悟と、現場に根ざした確かな視点が滲んでいた。

(文・写真 湯本泰隆)

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