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師匠から継いだウコンの種を未来へつなぐ「カズイチウコン」。

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師匠から継いだウコンの種を未来へつなぐ「カズイチウコン」。

新潟でウコン栽培に取り組む、田中さんと斉藤さん。三条市下田で長年ウコンの栽培を続けてきた山崎一一(カズイチ)さんから種を引継ぎ、「カズイチウコン」の名前で毎年ウコンを作っています。ウコンと聞くと健康によいものというイメージが強いですが、豊かな香りも特徴のひとつ。香りの素晴らしさを知ってもらおうと、商品開発にも取り組んでいるんだそうです。今年から下田にあった畑を新潟市へ移したということで、収穫の時期にお邪魔して田中さんにお話を聞いてきました。

カズイチウコン

田中 美央 Mio Tanaka

1989年新潟市生まれ。新卒で旅行会社を経験した後、世界各国を旅して回る。新潟に戻ってからは地域おこし協力隊として三条市下田地区で活動。ウコン農家の山崎一一さんとの出会いをきっかけに、5年前より「カズイチウコン」の名前でウコン栽培をスタート。本業の傍ら農作業に取り組む。

下田で出会った、ウコン栽培の師匠。

――まずは田中さんたちがウコンの栽培をはじめたいきさつを教えてください。

田中さん:もともと三条の下田地区で地域おこし協力隊をやっていたんです。その頃に知り合った山崎一一(カズイチ)さんというおじいちゃんが、下田で30年間、ウコンを栽培していて。最初は「ウコンってなんなんだろう」「どうしてここで育てているんだろう」って思っていましたね(笑)

――一一さんが「カズイチウコン」という名前の由来になった方ですね。

田中さん:一一さんは足が悪いんですけどひとりで畑作業をしていたので、心配で手伝いにいっていたんです。ウコンという農作物に興味を引かれたのもあって、収穫作業とか加工とかを私も一緒にやっていました。

――それから田中さんと斉藤さんも自分たちで畑を持って、ウコンの栽培をはじめられたと?

田中さん:最初は一一さんが畑を辞めると言っていたので、一一さんの畑を借りてウコンを作っていました。でも自分たちでは管理しきれない場所だったのと、そのタイミングで一一さんの息子さんが戻ってこられたので、私たちは別で畑を借りることにしたんです。そしたら一一さんも「負けてられない」って(笑)。畑は辞めずに毎年ウコンを栽培して、お互い情報交換をしながら切磋琢磨していました。

――師弟関係でもあり、同じ作物を育てる仲間のような関係でもあったんですね。

田中さん:ホームセンターで買った苗を植えるのとは違って、一一さんがずっとつないできた種をいただいたからには、絶やすのも申し訳ないというか。いろいろ教えていただいた恩返しじゃないですけど、一一さんの歴史を途絶えさせたくないなっていう気持ちがあります。私の自己満足かもしれませんけどね。そんな感じで続けています。

――ところで、一一さんはどうして下田でウコンの栽培をはじめられたんでしょう?

田中さん:一一さんが退職旅行で沖縄に行ったときに、農家さんが庭にウコンを広げていたそうなんです。その頃の沖縄だとウコンは万能薬みたいな立ち位置の作物だったらしくて。一一さんは長年身体の不調に悩んでいて、自分が元気になれるものを探していたんです。それで沖縄から種を貰ってきて、定年後に下田でウコンの栽培をはじめました。

――へ~、じゃあ沖縄ではウコンの栽培が盛んなんですね。

田中さん:ウコンの原産はインドなんです。暖かい地域で育つ作物なので、沖縄とか奄美大島とかでよく育てられています。

――それなのに、新潟のような雪国でもちゃんとウコンが育つのはどうしてなんでしょう?

田中さん:そこが難しいところで。ウコンってショウガみたいな見た目をしていて、収穫した一部を翌年の種芋にするんです。沖縄のような南国では、冬の間も種芋を土の中に入れたままにしておきます。でも新潟だとどうしても雪が降るので、種芋を土の中から取り出して、冬の間は湿度とか気温とかを調整しながら保管するんです。だから冬さえ越せれば、新潟でも問題なく育てることができます。

ウコンの豊かな香りを感じられる「ウコンチャイ」。

――収獲されたウコンはどんなものへ加工しているんですか?

田中さん:そこは未だに模索しているところなんです。一一さんは乾燥させたウコンを粉砕して、パウダーと粒にして販売していました。それなら私たちは、私たちにしか伝えられない感覚の部分を商品にしてみようってことで、「ウコンチャイ」っていうドリンクを作ったりしています。

――ウコンのチャイってどんな味がするのか気になります。

田中さん:ジンジャーとか山椒とかも入っていて、身体が温まりますよ。試飲イベントをやることもあって、気に入って買ってくださる方は多いですね。

――春ウコンと秋ウコンという2種類のウコンを作られているそうですが、どういう違いがあるんでしょう?

田中さん:品種が違うんですけど、植える時期も収穫する時期も一緒なんです。秋ウコンはスパイスの「ターメリック」になる品種です。一方で、春ウコンはすごく苦いんですよ。でも香りがとってもよくって。私たちはウコンの効果というよりも香りが好きで可能性を感じているので、香りを感じてもらえるような商品を作っています。

一一さんから受け取ったウコンの種を、絶やさずつないでいきたい。

――収穫の直前だというタイミングで畑にお邪魔しています。今年の出来はいかがですか?

田中さん:「芽出し」と言って、電気マットみたいなもので種芋を温めて、芽を出させてから植えるとウコンがよく育つんです。でも人工的な力を加えることに違和感があったので、今年は芽が出ないうちに植えたんです。そしたら、この畑で育てるのが初めてということもあって、あまり育ちませんでした……。

――あらら……。

田中さん:私たちもウコンを育てて5年ぐらい経つのかな。年に1回しか試せないので、毎年やり方を変えています。なかなか前には進みませんが(笑)。でも種さえとれれば次につなげられるので、焦らず、絶やさずに続けていければいいなと思います。

――今後の目標として考えていることはありますか?

田中さん:とりあえず、大きいウコンを育てたい(笑)。それから今は「ウコンチャイ」しか商品がないんですけど、それもウコン以外のものが混ざっているので、ウコン単体の香りを伝えられて、日常で使ってもらえるような商品を作りたいなと思っています。

カズイチウコン

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