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50年前の名曲を再定義!ブルースの「明日なき暴走」を聴いてコンプライアンスを考える

Re:minder

1975年08月25日 ブルース・スプリングスティーンのアルバム「明日なき暴走」発売日

「明日なき暴走」リリース50周年を機に再定義


ブルース・スプリングスティーンの代表曲「明日なき暴走」がリリースされてから50年になる。1972年生まれの私はこの曲を後追いで聴いた世代だ。中学生の時に大ヒットしていた『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』がきっかけでスプリングスティーンを好きになり、それから過去の作品をさかのぼって聴いたわけだ。収録アルバムの『明日なき暴走』はリアルタイムではなかったものの、私にとって最も好きなスプリングスティーンのアルバムになった。特に表題曲は歴史的名曲であることに異論をはさむ余地はないだろう。ライブで最高に盛り上がるナンバーとして、スプリングスティーンのファンから最も愛されている楽曲だ。

コンプライアンス的視点から見ると「明日なき暴走」はアウト!


しかしこの曲、最高にカッコいいのだが2025年的感覚で注意深く聴いてみると、コンプライアンス的にはアウトなのだ。

① 主人公は昼間の仕事に汗を流してはいるが、ハッキリ言って労働意欲は高くなさそうで、勤勉とは言えない。

② 夜になるとバイクで爆走。

③ 彼女へ愛を告げる言葉として “今夜、死んでもいい” とか言っている。

④ ニュージャージーのいかがわしい界隈での情景描写も不適切。

①④はギリギリセーフだとしても、②③は完全にコンプラ的にアウトだろう。そして、そんな歌詞がひたすら前向きでパワフルな全肯定サウンドに乗せて歌われる。ちょっとした後ろめたさから派手なサウンドは避けそうなものだが、1975年のスプリングスティーンは迷うことなくストレートでポップなロックンロールに仕上げている。

2025年、多くのサラリーマン(特に管理職)は日頃から自分の行動や言動がコンプライアンスに抵触していないだろうかという自問自答の日々を過ごすことを強いられている。例えば、成果獲得や目標達成のために難しい仕事や時間のかかるタスクを引き受ける時、“これ、結構な成果が上がるけど、スタッフに無理させちゃうかもしれないよな…” と悩むだろうし、部下から “上司から無理な仕事を命令されました…” などとコンプラ担当部署へ通報されたらマジでヤバい状況になるわけです。

1975年と2025年では意味合いが違う「明日なき暴走」


さて、本曲がリリースされた1975年の状況を考えてみましょう。当時、スプリングスティーンは1973年のデビューから2枚のアルバムを出していたがセールス的にはパッとしない。このサードアルバム『明日なき暴走』が売れなければ、レコード契約を切られても仕方のないところまで追い込まれていました。そんな厳しい状態から逃げ出したい、でも、ロックンロール・サクセスへの夢は諦められないという2つの相反する気持ちを同居させる歌として「明日なき暴走」は作られたのです。

そんな状況でもスプリングスティーンは「明日なき暴走」を前向きな歌として作ったのでしょう。もっと端的にいうと、前向きに夢と希望を歌うロックンロール・ナンバーにするという選択肢しか無かったのかもしれません。なぜならば、現実逃避と無茶苦茶なバイクでの暴走をテーマに取り上げたことにほんの少しでも後ろめたさやコンプライアンス云々といった思考がよぎったら、パワフルで前向きなロックンロール・ナンバーには仕立てられなかったはずです。

1975年当時、ヤバい状態に追い込まれたら、がむしゃらに突っ走って現状を打破するというのが一般的な選択肢だったのでしょう。でも2025年には、ヤバい状況になったら無理はせずに止めてしまうという選択肢が用意されています。サラリーマンとして、日々コンプライアンスに照らし合わせながら仕事をしていると、無茶をして “明日なき暴走” することが許されない場合は往々にしてあるのです。

50代のサラリーマンは「明日なき暴走」を聴いて何を思う?


でも、どうでしょう? この「明日なき暴走」を素直な気持ちで聴いてみると、やはり2025年の今日でも希望の歌として力強く響き、そして、背中を押してくれる。そう考えるとコンプライアンスを意識しすぎて萎縮してしまうことはつまらない選択肢なのかもしれません。

夢と希望を不良っぽく歌った「明日なき暴走」を聴き、50代の管理職の私はコンプライアンスについて改めて考えています。コンプライアンスの遵守は必須と理解しながらも、時にはオッサンも “明日なき暴走” しちゃう勇気が必要なのかもしれません。そのためには、ちょっと無理めの厳しい状況でも、自分にも負担を強いてしまう業務になるかもしれないけど、乗り越えるためには仲間との信頼関係が必要ですよね。

スプリングスティーンにはEストリートバンドという仲間がいます。私も目標に向かって共に暴走してくれる仲間はいるのでしょうか?近々、仕事帰りに部下を飲みに誘ってみようかな。でも、無理に誘うのは厳禁。コンプライアンス的に問題になってしまいますからね。でも、勇気を出して “明日のために少し暴走” するのもありかもしれません!

相反する二面性を内包する「明日なき暴走」。2025年の今だから気付かされるテーマといえるでしょう。あなたはそこから何を読み取るのでしょうか? きっと、あなたの日常にもこの曲と重なる物語が含まれているはずです。

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