韓国創作ミュージカルの新作を紹介する『2025 K-Musical Roadshow in TOKYO』が開催 司会は加藤和樹ら
2025年11月12日(水)ヒューリックホール東京にて、韓国のオリジナル・ミュージカルを紹介する『2025 K-Musical Roadshow in TOKYO』が開催されることが決定した。韓国から5つのミュージカルのキャスト、スタッフが来日、名場面をダイジェストで紹介する。
韓国のオリジナル・ミュージカルは、2025年の米トニー賞で『メイビー、ハッピーエンディング』が作品賞をはじめ6部門を受賞するなど、世界から注目されている。日本でも近年、毎年10作品近くが翻訳上演されており、韓国発のコンテンツとして人気を集めている。また、ミュージカル『ミセン』『梨泰院クラス』など、韓国のクリエイター(原作、脚本家、作曲家、演出家)と日本の製作会社が組んだ新作も続々と生まれている。
『K-Musical Roadshow』は韓国発のミュージカルを世界に発信していくために2016年にスタートした。「韓国文化体育観光部」が主催し、企画支援、海外事業、研究開発・コンサルティングを行う舞台芸術専門の国家芸術支援団体「韓国芸術経営支援センター」が主管。2023年12月には東京でも開催され、日本での開催は今回が2回目となる。
同センターが主催する『K-Musical Market』は欧米、中国、日本などからプロデューサーを韓国に招待し、現地で韓国オリジナル・ミュージカルの紹介と交流をするもので、韓国のオリジナル・ミュージカルを韓国のコンテンツとして海外輸出していくために、さまざまな施策が実施されている。
今回の『2025 K-Musical Roadshow in TOKYO』には、韓国での審査を通過した5作品のスタッフ・キャストが来日する。韓国演劇のメッカ、大学路(テハンノ)で活躍する実力派俳優らが約20分のダイジェストシーンを実演。終演後には日韓のプロデューサーの交流会も実施し、韓国オリジナル・ミュージカルの多彩さ、豊かさを堪能できるイベントとなっている。
また、前回に引き続き司会進行を、韓国ミュージカルにも出演し、現地での観劇も多い俳優・加藤和樹と、韓国ミュージカルに造詣の深いキム・テイが務める。
ショーケース披露作品
■『すいかのプール』
原作:アンニョン・タル
脚本:ユン・フィギョン
作曲:キム・テグン/チョ・ソニョン
演出:チン・ヨンソプ
プロデューサー:パク・ミョンウ/チョ・ギルラ
日本でも出版されているアンニョン・タルの絵本『すいかのプール』(岩波書店、訳:斎藤真理子)をミュージカル化。田舎町に現れた巨大なすいかのプールを舞台に、温かい家族愛と純粋な空想の世界を描いた作品で、目の前で巨大なすいかが割れて、空を飛ぶ雲屋さんの愉快なフライングショーが幅広い観客層の五感を楽しませる人気作。
【あらすじ】
仕事が忙しくてなかなか娘と遊んであげられないことを申し訳なく思うジニの両親は、夏休みに入ったジニが思いっきり走り回れるようにおじいちゃんの家に遊びに行くことを計画した。仕事がある両親より一日早くおじいちゃんの家に行くことになったジ二は、青く広々とした自然の中で楽しく過ごしていた喜びも束の間、久しぶりに会ったおじいちゃんとはなかなか話が合わない。ひらひらと飛んできた蝶を追いかけて、不思議な森で道に迷ったジニは、まるっとして可愛いらしいすいかの種と出会った。ジニは、家を探しているすいかの種を手伝うと約束するのだが…。
制作会社:株式会社AM culture
■『三つの風と一本の木』
脚本:アン・リジュン
作曲:ホ・スヒョン
演出:キム・テヒョン
プロデューサー:コ・ガンミン
暗い時代を照らす青春の革命劇。混乱と不安の時代の中で、運命のように出会った平凡な若者たちの激動の生き様を描いた物語。心躍るメロディー、ダイナミックな振付、そして俳優たちのマルチロール(複数役)によって暗い時代に光をさす。英雄ではなく、不安と孤独を抱えながら生きる三人の平凡な青年たちの姿は2025年前半、演劇の街・大学路で多くの観客の心を強く揺さぶった話題作。
【あらすじ】
混乱と不安が渦巻いていた1930年代の中国。親も祖国もなく街をさまよっていた青年ムヒョクは、偶然ドギョンとジャギョンに出会い、仲間となる。大義よりも「今日より少しだけましな明日」を願っていた平凡な三人の若者たちは、やがて「正義の銀行強盗」という無謀で奇抜な道を選び、独立運動に身を投じていく。不器用で粗削りな計画と数々の失敗の中でも笑い合い、ぶつかり合いながら、互いに支えあう三人。しかし、時が経つにつれ、現実の壁と相次ぐ危機が彼らを襲う。仲間たちは犠牲となり、一人取り残されたムヒョクは、自分だけの理想郷を心に抱きながら生きていく。
制作会社:MBZ Company
■『たんぽぽの笛』
脚本:キム・ジシク
作曲:ユ・ハンナ
演出:パク・コウン
プロデューサー:キム・ジシク
2024年にDIMF(大邱国際ミュージカルフェスティバル)創作支援作に選定され初演。韓国で愛される詩人、尹東柱(ユン・ドンジュ)と弟の尹一柱(ユン・イルジュ)の人生、そして同名の童詩集をモチーフにしている。尹東柱を題材にした作品は彼の悲劇性や愛国志士としての生涯に注目したものが多いが、本作は弟の視点から見た尹東柱という人間、そして兄弟愛に焦点を当てているのが特徴。兄弟の詩と人生、童心と詩心を照らし出し、現在を生きる私たちの心にも小さなタンポポの綿毛を咲かせたいと企画された。
【あらすじ】
舞台は日本統治時代。詩人という夢を追って京城の延禧專門学校に留学中の青年、尹東柱(ユン・ドンジュ)には、故郷の北間島の明東村に10歳年下の弟・尹一柱(ユン・イルジュ)がいた。イルジュも兄に似て文学への関心が高く、特に子供たちの心を映し出す詩を書きたいと思っていた。暗い時代の中でも、ふたりは詩の写本や手紙を通じて心を通わせ、互いの夢を励ましあっていたが、やがて日本軍による民族抹殺政策(母国語の禁止、創氏改名)などが加速し、ついには戦争が始まる。その状況下でも詩を諦めず、兄弟はまるで廃墟に咲くタンポポのように、詩と童話を最後まで書き上げようとするのだが…。
制作会社:RAINBOW WORKS
■『ナルチスとゴルトムント~知と愛~』
脚本・演出:ユン・サンウォン
作曲・音楽監督:ユ・ハンナ
プロデューサー:キム・スジ
哲学的な問いと自己省察の機会を与えてくれるヘルマン・ヘッセの同名小説『ナルチスとゴルトムント(邦題「知と愛」)』が原作。感覚と愛、芸術と死といったゴルトムントの人生をナルチスの視点から描き、正反対の性質を持つ二人が互いに影響を与え合う過程に観客は深い共感を抱く。また、美しい照明と振付、仮面や生花の使用などの素晴らしい舞台演出を楽しめるのもこの作品の魅力。
【あらすじ】
舞台は世間から隔絶されたマリアブロン修道院。若き修道士ナルチスは、父親に手を引かれやってきた幼い少年ゴルトムントの性質を見抜き、惹かれ合う。ナルチスに憧れ彼のようになりたいと願うゴルトムント。自分とは全く違うタイプのゴルドムントが修道院生活に苦労しているのを不憫に思うナルチス。互いに接点はなく意識しあっていたふたりだったが、偶然の出会いで打ち解け合い友達になる。正反対の2人は、生と死、精神と本能の狭間で互いに向き合うことになり…。
制作会社:ソムロカンナビ
■『とっても楽しいお嬢さんたち』
原案:キム・ジェファン
脚本:キム・ハジン
作曲・音楽監督:キム・ヘソン
演出:オ・ギョンテク
プロデューサー:カン・ビョンウォン
貧しいから、女だからと文字を学べなかったおばあちゃんたちを描いたドキュメンタリー映画が原作。ハングルを学ぶ彼女たちの人生と詩をもとにした心温まるミュージカルで、多くの人に感動を届けている。80歳を超えても日々学ぶ喜びを大切にするおばあちゃんたちの姿は、観客に新しいことに挑戦するのに年齢は関係ないという勇気を与え、親子3世代が一緒に楽しめる、心温まるファミリーミュージカル。
【あらすじ】
「年老いたら死ぬだけ」を口癖にしながら、毎日休まず学校へ通うパルボク村のおばあちゃん、ヨンラン、チュンシム、インスン、ブンハン。文字を読めない悔しさを胸に秘めて生きてき彼女たちが学ぶのはハングルだ。ある日、ドキュメンタリー専門のプロデューサー、ソックがラジオでおばあちゃんたちの存在を知り、訪ねてくる。予算削減で授業存続の危機に瀕していた教師のカウルは、ソックに「おばあちゃんたちが詩を書く姿を世間に伝えよう」と提案する。「詩なんて書けない」と最初は自信がなかったおばあちゃんたちだが、宝探しをするように、日常から自分だけの言葉を探し始める。
制作会社:ライブ株式会社