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【追悼、大山のぶ代さん】「ドラエもん」以前の活動は?黒柳徹子さん、「パーマン」三輪勝恵さんと「ブーフーウー」でこぶたの三兄弟を演じたことも

アットエス

SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回は2024年9月29日に亡くなられた、声優で俳優の大山のぶ代さんについて伺いました。※以下語り、藤津亮太さん

ドラえもんだけではない!大山のぶ代さんの魅力

大山のぶ代さんは1936年生まれで、1979年から2005年までドラえもんの声を担当されていました。料理本も出版されていて料理研究家という側面もあるのですが、あまりにドラえもんの印象が大きく、訃報の際にも、そのほかの側面にはあまり他に触れられていなかったという印象です。なので、今日は『ドラえもん』以前の大山さんの話をしたいと思います。

声優で、勝田声優学院も主宰されていた勝田久さんの『昭和声優列伝』(駒草出版)と、大山さんのドラえもんにまつわる回想録『ぼく、ドラえもんでした。』(小学館)を参考にお話をします。

『昭和声優列伝』の中で勝田さんは大山さんをこう紹介しています。「声優には美声の持ち主が多い。しかしそうでない人もいる。その代表ともいえるのが大山のぶ代である。美男美女ばかりがぞろぞろ登場してきたのではドラマが作れない。アニメだって同じこと。様々なキャラクターが様々な声を発して、登場してこそ面白いのである」

大山さんの得がたい個性を端的に言い表している言葉ですよ。大山さんは子どもの頃から、あの特徴的な声をしていたそうです。幼い頃は特に気にしていなかったそうですが、やはり思春期になると「変な声だ」とクラスメイトなどから言われるようになります。しかしお母さんが気にしなくていい、むしろどんどん喋りなさいと背中を押してくれたため、積極的に振る舞えるようになり、高校では演劇部と放送研究部に入ります。

このように大山さんにとってすごく大きな存在だったお母さんですが、大山さんが高校生のときに41歳で亡くなってしまい、それが大山さんに強い影響を与えることになります。いつまで生きられるのかわからないし、家族ができてもこんなに早く死んじゃったら悲しい思いをさせるから自分は1人で生きていこうと、その時には思うほどだったそうです。

自分の特技も鑑み、俳優ならば女性1人でも生きていけると、高校3年の春に俳優座の養成所に入り、俳優の道を歩むことになりました。ところが、お父さんに反対されてしまい、高校を出るタイミングで一人暮らしをすることになります。家を出るときに持って出たのが、お母さんが使っていた糠床。やはり子どもの頃にお母さんから料理のいろんなことを教わったという記憶があったようですね。

養成所時代にNHKドラマのレギュラーが決まり、卒業後もだんだん声の仕事が来るようになります。20歳くらいのときには『名犬ラッシー』というアメリカのテレビドラマの吹き替えで主役の少年をやり、1960年には人形劇『ブーフーウー』のブーをやります。ブーフーウーは三匹のこぶたなのですが、フーは後にパーマンの声をあてた三輪勝恵さんで、ウーは黒柳徹子さんでした。

ここからどんどん声のお仕事をするようになって1966年に『ハリスの旋風』、1972年に『国松さまのお通りだい』で主人公の男の子、石田国松を務めました。1977年には『無敵超人ザンボット3』の主人公・神勝平という役があります。なぜ大山さんがロボットものの主役なのかと当時のファンからも疑問が出ていましたが、石田国松みたいな「自由奔放に生きているやんちゃ坊主の感じが勝平にほしかったからだ」と富野監督が語っています。『ザンボット3』は天真爛漫だった少年が、悲惨な戦いの中で世界を知っていく様子を描いた作品だからこそ、大山さんの声が必要だったわけですね。こんなふうに大山さんは、ドラえもん以前に既に男の子役の得意な声優として、広く定着していたんですね。

現在、ドラえもんを演じている水田わさびさんは、のび太との友達感を軸に演じられているという印象を持っています。これに対して、大山さんのドラえもんはのび太のお母さん的な雰囲気があって、庇護者という側面が強い印象です。大山さんの『ドラえもん』降板が発表されたあと、夜中に黒柳徹子さんから、「どこか具合が悪いのか」と心配する電話がかかってきたそうです。大山さんが、最初のレギュラーキャストが全員卒業するのだと伝えたところ、黒柳さんは『徹子の部屋』は30年やってるのだからもっと続けてよと、言われたそうですが、「病気でなくてよかった」とも言ってくれたようで、「本当に友達って」ありがたいと大山さんは回想されていました。

大山さんの声は大変心に残る声ですし、ドラえもんといえば大山さんと感じていた人も多いと思うのですが、それ以外の大山さんの顔も含めて、改めて振り返っていただけるといいんじゃないかなと思いました。

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