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映画「ヒプノシスマイク –Division Rap Battle-」音楽集『MIC AS ONE』レビュー後編|「Claim Victory」が全Ver.収録!? 往年の名曲も収録されたおすすめ盤です!

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

2017年のプロジェクト始動から数々の伝説を作り上げてきた『ヒプノシスマイク –Division Rap Battle-(以下、ヒプマイ)』。2025年には待望の映画化が行われ、日本初の観客参加型のインタラクティブ映画としての公開ということでも話題を巻き起こしました。

そして、2025年6月11日(水)に映画「ヒプマイ」の音楽集『MIC AS ONE』がついに発売! アニメイトタイムズでは、DISC1、DISC2を前後編に分けて全曲レビューを行っています。今回は後半でありDISC2のレビューをお届け!

DISC2は映画「ヒプマイ」のラストバトルの曲である「Claim Victory」が、チュウオウ・ディビジョンVS勝ち上がった全チームごとのバージョンが収録されているという豪華仕様。インタラクティブ映画ということで、全部のエンディングを見ることが難しかったかと思いますが、『MIC AS ONE』を購入すれば映画に登場する全ての曲が聴ける、という寸法です(お得!)。

レビュー後編も楽曲数が多いためさくっとまとめてみました。それではさっそく行ってみましょう!

レビュー前編はこちら!

 

01.Claim Victory(Buster Bros!!! Ver.)/ Buster Bros!!!・言の葉党

ついにチュウオウ・ディビジョンとの一騎討ち。言の葉党の面々が登場した当初は各ディビジョンのメンバーからすると、圧政を敷く諸悪の権化のようなイメージがかなりありましたよね。しかし、ストーリーが進んでいくと彼女らなりの理想があり、皆が幸せになる道を進んで、その道から逸れてしまっているだけというのがわかってきました。

そしてそれが違っていたと改心した今、それでも戦う彼女たちの意思がこの「Claim Victory」に現れています。この曲、個人的には対戦相手によって意味合いが変わってくるのかな、なんて考えています。

例えばBuster Bros!!! Ver.は、基本のマニフェスト。全ての男性の代表として勝ち上がってきたBuster Bros!!!に対して彼女たちのまっすぐな思いが歌われていると思います。

これがMAD TRIGGER CREW Ver.になってくるとちょっと違ったニュアンスも出てきて、碧棺 左馬刻と碧棺 合歓の対立関係が見えてきます。<押し付けんなよ良妻賢母>という歌詞もBuster Bros!!!の時は女性全体のパブリックイメージとして歌っていたものが、MAD TRIGGER CREW Ver.では兄の碧棺 左馬刻に対しての私怨が籠もっているように感じるのです。

ちょっと考えすぎかもしれませんが、そういうニュアンスを勘ぐってしまったり、リスナーが自由に楽しめるのも『ヒプマイ』の度量の深さだと思います。あと何より、そんなことを考えながら曲を聴くのが楽しかったりするんですよね。

Buster Bros!!! Ver.では山田家のシニカルなパンチラインが光るところがポイント。難しいことよく知ってるね三郎ちゃん! な<GPTでも秒で即答>、めっちゃわかるよダルいよね二郎! な<ラフで見苦しいカンフーサッカー>、一郎ちょっと言い過ぎだけどわかる!(笑)な<出来が悪いタイプのなろう小説>などなど、山田家らしさを感じられるのも面白いです。

あと、三郎の<見て言えこの肌水分量>が地味に効く……。

 

02.Claim Victory(MAD TRIGGER CREW Ver.)/ MAD TRIGGER CREW・言の葉党

MAD TRIGGER CREW Ver.は先程もお伝えした碧棺 左馬刻と碧棺 合歓の対立関係がやはり注目ポイント。碧棺 左馬刻の<出来ねえ 今更キャラ変更 ガキん時決めた「俺がやらねえと」>という歌詞が泣けますね……。なんて不器用な兄貴なんだ……。しかし、それでも突き通す男の美学ってもんがあるんだ。

そんな碧棺 左馬刻と肩を並べるパワーコンビ、入間 銃兎と毒島 メイソン 理鶯の火力の高いこと高いこと。毒島 メイソン 理鶯なんかは、<これは徹甲焼夷弾>とリアル火力を持ち出す始末! 入間 銃兎は<まるで脱法ドラッグ>と己の過去の因縁も含めたメッセージが熱い。

ヨコハマの面々は<泣き声響くハマのアーケード>のために戦います。

 

03.Claim Victory(Fling Posse Ver.)/ Fling Posse・言の葉党

実は一番、言の葉党の面々と因縁があるFling Posse。飴村 乱数は古巣との対決となるし、有栖川 帝統は母親の東方天 乙統女との親子対決になります。

飴村 乱数はわりと普段通り歌う事ができているようですが、有栖川 帝統は少し個人的な感情も含まれていそうで面白いです。<アンタ賭け事 向かねって話>というアンタは東方天 乙統女に言っているような感じもあるなと思っています。「アンタの賭け事、それで合ってんの?」と問いただしているかのようです。

対する東方天 乙統女は難しい言葉が多いのですが、関わってきそうなのは<夜郎自大な>という部分。「夜郎自大」とは、「自分の力量を知らない人間が、仲間の中で大きな顔をしていい気になっていること」とのこと。「あなたは何もわかってないわ」とでも言わんばかりですね。

 

04.Claim Victory(麻天狼 Ver.)/ 麻天狼・言の葉党

韻踏闘技大會で優勝した実力はそのままに、それぞれの葛藤をも乗り越えた麻天狼。もう釣りに行ってのほほんとするだけのチームじゃありません!(そういうところも好きだけど!)

個人的に観音坂 独歩の<平等の為 ワンクッション不平等>という歌詞が好きで、いろいろと考えてしまいます。言の葉党の掲げる平等は一部の不平等によって生まれている。観音坂 独歩の言葉を借りるなら<虚弱肉強食>ということですね。こういったことは我々の中にもあるな……、なんて考えたり。

また、神宮寺 寂雷の<必ず守る 同意なき被験者>という言葉は、これまでのストーリーを知っていると重みが違います。当初から医者という立場もあり、癒やす、救うといったワードは多かったのですが、今回の寂雷先生は一味違いますね。

 

05.Claim Victory(どついたれ本舗 Ver.)/どついたれ本舗・言の葉党

笑いで世界を変えるどついたれ本舗。「Claim Victory(どついたれ本舗 Ver.)」では、3人それぞれの個性が光る歌詞に注目です。

天谷奴 零は<理だけじゃそのペテンいいとこ>というペテンにかけては天才な彼が言うことによって説得力が違います。<内部分裂の汚点見ると 押し売り紛いのテンプレート>と、痛いところをついてくるのも彼らしいですよね。

躑躅森 盧笙は先生らしい説教で訴えかけます。<子供の声聞け 手前の三名>の部分が面白くて、全校集会で生徒を叱る先生みたいですよね。しかも叱る相手が子供ではなく大人というところもミソ。

白膠木 簓はやはり笑いを忘れません。最後のパートに彼の目指すものが凝縮されています。<願おうかい笑門来福 良い意味でしょーもないLife来る インフラ・公共サービス 目指すうちらの笑いは大分Cool>良い意味でしょーもないってなんかいいですよね。しかも笑いをインフラにしちゃおうなんて発想が面白い。

 

06.Claim Victory(Bad Ass Temple Ver.)/ Bad Ass Temple・言の葉党

やはりBad Ass Templeは勢いがあります。その勢いを表すように天国 獄のバースが火を吹いています。<すこぶる快調気分は 1900cc超え二輪の排気量 法廷内では法定速度 の加減は微塵もない器量>と猛スピードでブルンブルン言わせています(天国 獄が乗っているバイクは1900ccだったんですね。超排気量!)。

そして嬉しかったのは四十物 十四のパート。最近の楽曲では飾らない純粋な姿を見せてくれていましたが、やはりアルゴ ξ 楽団の彼の姿も見たかったところでこの曲です。<熱き血を欲すヴァンパイア>を聴いたときは「ひょー!」と言ってしまいました。嬉しい。

さらに波羅夷 空却。いつも通り仏教用語で我々を導いてくれます。<ダークサイドから衆生済度>の「衆生済度(じゅじょうさいど)」とは、仏や菩薩が現世で苦しみ悩んでいるすべての者を救済し、悟りへと導くことだそう。また、<あわや六文銭の通貨危機>の「六文銭」とは、江戸時代に使用されていた一文銭を6つ束ねたもので、故人の棺に納められる副葬品でした。仏教の六道(地獄、餓鬼、畜生、阿修羅、人間、天上)にそれぞれ一人ずついるとされる地蔵菩薩に渡すために納められていたとか。そんな六文銭すら渡せないくらいにみんな困ってんだよ! というメッセージだったんですね。

 

 

07.IKEBUKURO WEST GAME PARK(Remastered) / Buster Bros!!!

 
ここからは往年の懐かしい楽曲たちがリマスターで収録されています。まずは「IKEBUKURO WEST GAME PARK(Remastered)」。「おはブクロ」こと「おはようイケブクロ」もBuster Bros!!!らしい曲なんですが、個人的には「IKEBUKURO WEST GAME PARK」のほうがBuster Bros!!!を象徴するような曲だなと思っています。

 

 
曲の冒頭部分の3人がサイファーをしているようなパートがまさにそう感じるところで、やはり彼らの本当の舞台はイケブクロという街なんだなと思います。最近は大きなステージに立っている姿が多くてキラキラしていてかっこいいなと思うのですが、「IKEBUKURO WEST GAME PARK」のようにイケブクロの街で楽しげにラップしている姿のほうが彼らの本来の姿なのかもな……なんて思ったり。

そんな彼らを育ててきたのはイケブクロなのです。そして、そんなイケブクロというバックアップがあるからこそ彼らは輝ける。しかも、彼らもしっかりとイケブクロをレペゼンしているというのもいいんですよね。

 

08.Yokohama Walker(Remastered) / MAD TRIGGER CREW

 
実はMAD TRIGGER CREWで個人的に一番好きな曲が「Yokohama Walker」です。この曲の好きなところは曲のクオリティが高いことはもちろんなんですが、MAD TRIGGER CREWの3人がヨコハマの街で生きているというのがわかるからなんです。

<肩で風切り歩くこの街><軽く流すいつものコース><ここに潜伏し眺める街を>みたいなリリックがMAD TRIGGER CREWの3人がヨコハマという街で出会ういろいろな瞬間を切り取ったようで、なんだかものすごくリアルなんですよね。

「Yokohama Walker」を聴きながら現実の横浜の街を歩いていたら本当にそこに碧棺 左馬刻、入間 銃兎、毒島 メイソン 理鶯がいるような気がして……。なんて考えすぎですが、それほどまでに彼らの内面まで現れたようなこの曲が好きなんです。

 

09.Shibuya Marble Texture -PCCS-(Remastered) / Fling Posse

 
シブヤのキラキラした街並みが似合う「Shibuya Marble Texture -PCCS-(Remastered)」。現実の渋谷も様々な色で溢れていますが、Fling Posseの3人が見るシブヤの景色はそれぞれ違って見えるようです。そんな彼らの視点が楽しめる一曲になっているのも面白いんです。

そんなバラバラな彼らが最終的に集まっていく。

<やあやあ皆今日は何して遊ぼうか~>
<ストレートに行こうや showdown! Like a Poker!>
<騒がしい余興だけれど付き合いましょうか…>

この集まりに入りたい……! いや、遠くから邪魔しないように眺めていたい……! そんな気持ちにさせてくれます。

MVも今見ると懐かしく(なんと6年前!)、渋谷の景色もかなり変わりましたね。久しぶりにこの曲を聴きながら渋谷でも歩こうかしら……。

 

10.Shinjuku Style ~笑わすな~(Remastered) / 麻天狼

 
麻天狼の曲の中でもかなり荒々しくて珍しい曲が「Shinjuku Style ~笑わすな~」です。この曲、ライブで聴くとかっこいいんですよね。とにかくかっこよすぎて盛り上がる。いつも落ち着いた雰囲気がある麻天狼の面々ですが、こういう強い一面をたまに見せてくれるとキュンとしちゃいます。

速水奨さんがCDのジャケットイラストを模した椅子に座って登場した2nd LIVEのステージが凄まじかったですよね。思わず「びゃ〜!」となりました。このころの麻天狼は本当に最強なイメージがありました(もちろん今も強い!)。

いつもは優しい麻天狼の3人がバトルになると毒牙を見せる。それを体現したような曲で、なおかつバイブスが半端なくてパワーがある。これがShinjuku Style!!!

 

11.あゝオオサカdreamin’night(Remastered) / どついたれ本舗

 
どついたれ本舗の自己紹介曲として登場した「あゝオオサカdreamin’night」。この曲は発表されるやいなや爆発的な人気となり、『ヒプマイ』を知らない人でもこの曲は聴いたことがあるほどでした。なんと、YouTubeにアップされたMVは脅威の2575万再生(2025年6月時点)!

今、改めてこの曲を聴いてみると本当によくできていて、楽しい雰囲気もあるし、それが最後まで続き、絶妙に物足りないくらいで終わるのがいいんです。「え、もっかい聴こう」となる癖になる味があります。

曲に関しては当時のレビューで詳しく書いていますので、ぜひ合わせてご覧ください!

 

12.Bad Ass Temple Funky Sounds(Remastered) / Bad Ass Temple

Bad Ass Templeの最初の曲が「Bad Ass Temple Funky Sounds」。勢いとパワーがあるのは最初から変わりませんね。そしてやはりそれぞれの個性が濃い! それがひとつのチームとしてまとまっているのが本当に奇跡ですよね。

「Bad Ass Temple Funky Sounds」は強烈なサウンドとリリックで聴くものに衝撃的なインパクトを与えます。<一度聞いたら忘れない My フレーズ>というリリック通りの曲になっているんです。

特に後半にフックを連続で繰り返すことによって、フレーズが頭に残りやすくて印象に残りやすいのもいいんです。まさに自己紹介曲にふさわしい。もちろんこちらの曲も過去に解説していますので、以下もチェックを!

 

13.Femme Fatale(Remastered) / 言の葉党

 
ラスボスとも言える言の葉党が満を持して登場したのがこの曲「Femme Fatale」でした。この曲が発表されたときは本当にたまげたものです……。かっこよすぎる……、こんなの勝てっこないよ……となりましたね……。

それまで『ヒプマイ』では、各チームの名曲が生まれ続けており、言の葉党の楽曲のハードルが上がっていたように思います。そりゃそうですよね。ラスボスがショボかったらそのゲームは終わりなんです。でも、そのような状況でも言の葉党は我々を蹴散らして、なおかつ言の葉党の配下にしてしまったんです。何を隠そう私も、「お姉様方、ついていきますわ!」と思った次第。

そのラスボス感は映画「ヒプマイ」まで続き、そしてあのような決着を迎えることになるとは。人生、何が起こるかわかりませんね。

 

玄人向けだけど初心者向けでもある必聴アルバム!

DISC2レビューをお届けしました。DISC1、DISC2を通して思ったのですが、玄人向けでもあるし、初心者向けでもあるいいアルバムだなと。

特にDISC2は、「Claim Victory」を全パターン収録という狂気の沙汰とも思える玄人仕様なのですが、後半になると各チームの代表曲をリマスターでお届けするという初心者にも嬉しい仕様。映画の余韻でDISC1を聴いて、続けてDISC2を聴いていくと、『ヒプマイ』にはどんなターニングポイントがあったのかがわかるようになっている気がします。

やはり『ヒプマイ』は考えられている……。『ヒプマイ』沼には入口が多くていいですね!

購入を迷われている方は後悔する前にぜひお手に取ってみてください! あなたの心を熱くさせる『ヒプマイ』の魅力が待っていますよ!

 
[文/石橋悠]

 

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