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AIで材料開発を「時短」、週単位の事例も│TECHBLITZが選ぶスタートアップ5選

TECHBLITZ

2024年の年明け、Microsoftから新素材領域でこんなタイトルの研究結果報告が飛び込んできた。『Discoveries in weeks not years(年単位でなく、週単位での発見)』。リチウムが主流となっている全固体電池向けの新素材をわずか2週間で発見したという内容で、高性能AIと次世代クラウドコンピューティングを組み合わせた成果。「干し草の山から針を探す」とも例えられる新素材の研究開発だが、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)の進歩で、わずか数年前ですら想像できなかったほど発見ペースは加速しているという。

※TECHBLITZでは、「AI x 新素材」に関する国内外のスタートアップを独自に調査。記事後半では、中でも注目の5社を紹介します。

マテリアルズ・インフォマティクスとは:
機械学習やデータマイニングなどの情報科学(インフォマティクス)を用いて、材料開発の効率化を図る取り組み。データ駆動型で、経験や勘に頼ることなく研究開発が行える。

<目次>
・わずか数週間で新素材候補を発見
・異分野からMI領域への参入
・TECHBLITZが選ぶ、「AI x 新素材」関連スタートアップ5選
 1. Materials Zone(イスラエル)
 2. Nature Architects(日本)
 3. Mattiq(米国)
 4. Citrine Informatics(米国)
 5. Arzeda(米国)

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わずか数週間で新素材候補を発見

 Microsoftが発表したのは、米エネルギー省傘下のパシフィック・ノースウェスト国立研究所(PNNL)と共同で実施した全固体電池向けの新素材の開発に関する研究結果。

 それによると、Microsoft側が担当した新素材の絞り込み作業は大きく2段階に分けて実施された。第1段階では、トレーニング済みのAIが3200万種類に上る無機材料を候補出しし、化学構造的に安定した50万種類にまで絞り込み。第2段階で、コストなどを含む各材料の実用性を評価し、候補となる素材を18種類にまで絞った。第2段階にかかった時間は、わずか80時間だったという。

 共同研究には、Microsoftが提供する量子計算プラットフォームの「Azure Quantum」が用いられた。この新素材はすでに合成に成功しており、プロトタイプのバッテリーが製造されているという。PNNLのCDO(最高デジタル責任者)を務めるBrian Abrahamson氏は「バッテリーが長期的に有用かどうかは関係なく、この発見スピードは非常に説得力がある」とコメントしている。

image: Dan DeLong / Microsoft

異分野からMI領域への参入

 このように、AIや高性能コンピューティングの発達により、近年は素材メーカーや化学メーカーだけでなく、異分野からMI領域に参入する動きが増えてきた。成果も着々と出始めている。

 例えば、GoogleのAI研究部門は2023年11月、AIを駆使して220万種類の新たな結晶構造を予測したと発表。ローレンス・バークレー国立研究所との共同研究で、AIツールの「GNoME(Graphical Networks for Material Exploration)」を活用した。

 この結晶構造うちの38万種類は現実世界で合成できる可能性を秘めており、すでに外部研究者によって700種以上が生成され、実験されているという。これらは、コンピューターチップやバッテリー、ソーラーパネルなどへの応用が期待されている。

TECHBLITZが選ぶ、「AI x 新素材」関連スタートアップ5選

 マテリアルズ・インフォマティクスは、膨大な計算量の高速計算を可能にする高性能コンピューティングに加え、AI技術の進歩によって加速度的に発展しており、材料の物理的な挙動の予測やインサイト提供などにAIを活用するスタートアップが登場している。TECHBLITZ編集部が選ぶ、「AI x 新素材」関連のスタートアップ5社はこちら。

無料でPDFダウンロード

1. MaterialsZone

MaterialsZoneAIで新素材の発見や研究コラボを支援設立年2017年所在地イスラエル テルアビブ MaterialsZoneは、AIクラウドベースの材料発見プラットフォーム。顧客組織の実験データに加え、外部データベース、エクセルシート、論文など、複数のソースからデータを自動的に集約し、データベースに構造化。AI / 機械学習アルゴリズムを利用し、これらのデータを分析、望ましい特性を持つ新しい材料の発見、材料合成のための「レシピ」の生成を後押しし、研究開発の時間を短縮させる。image: MaterialsZone

2. Nature Architects

Nature Architects材料の機能向上を実現するメタマテリアル設計ソリューション設立年2017年所在地日本 東京 Nature Architectsは、自然界には見られない機能を持つ「メタマテリアル」の設計 / シミュレーションソリューション。AIを活用し、樹脂や金属といった材料の物理的な挙動を予想し、材料設計を最適化することができる。三菱マテリアルやダイキン工業などが出資。image: Nature Architects

3. Mattiq

MattiqAIを活用したサステナブルな燃料合成プロセス設立年2023年所在地米国 イリノイ州 スコーキー Mattiqは、AIを利用して何百万もの化学物質のスクリーニングと分析を行い、触媒材料を開発 / 提供。また電気化学プロセスの開発と展開、さらにモジュール式の電気化学リアクターの提供等を行う。これらにより、例えば固体高分子型(PEM)水電解向けに希少なイリジウム含有量を減らした電極を開発し、大規模なグリーン水素の製造が可能となる。image: Mattiq

4. Citrine Informatics

Citrine Informatics材料の開発サイクルを短縮するAIデータベース設立年2013年所在地米国 カリフォルニア州 レッドウッドシティ Citrine Informaticsは、マテリアルに特化した、AIデータプラットフォーム「Citrine Platform」を開発。材料や化学物質に関する大量のデータを統合し、AIを用いた独自のインサイトを提供することで、新規材料の発見および開発期間を短縮することができる。image: Citrine Informatics

5. Arzeda

Arzeda酵素などのタンパク質をデータ解析で最適設計設立年2009年所在地米国 ワシントン州 シアトル Arzedaは、ビックデータを用いた計算化学とバイオテクノロジーによる、タンパク質設計プラットフォーム。人為的にカスタマイズされたタンパク質をデザインした発酵菌株に与えることで、通常は合成できない化学物質を作り出すことができるという。image: Arzeda

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