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<ママ友からの宣戦布告>会えばウチの夫の話ばかり。トドメは夫へ……プレゼント攻撃【まんが】

ママスタセレクト

写真:ママスタセレクト

半年ほど前の話です。私はシホ、夫キョウスケと9歳の息子ハルタとの3人暮らしです。ハルタはテニス教室で同じ学年のリクくんと仲が良く、そのママであるアヤコさんともよく話すようになりました。夫のキョウスケはテニス経験者。たまにハルタとリクくんを連れて近所のテニスコートへ練習しに行ったりもしています。今日は私がテニス教室の送迎担当です。

普段は引っ込み思案なハルタですが、レッスンでは生き生きしていて楽しそうです。アヤコさんはいつも見学しているのでよくレッスン中のハルタの様子を教えてくれて、自然と距離が縮まりました。

アヤコさんは私より少し年上で頼りになる雰囲気です。ただ最近、やたらキョウスケの話題を持ち出してくるような気がします。私の気にしすぎでしょうか……。

テニス教室への送迎は週2回。火曜を私、金曜はキョウスケというふうに夫婦で分担しています。今日は金曜日ですがキョウスケの都合がつかず、急きょ私が代わることになりました。私がパートを切り上げてお迎えに行くとアヤコさんがいました。「あれ、今日のお迎えはキョウスケさんだったはずじゃ……?」

今日のアヤコさんは上品なワンピースを着ていてメイクも決まっています。あれ? 私がお迎えの日はいつもラフな格好なのに……。少し違和感を抱いていると、アヤコさんがたずねてきました。「ねぇ、キョウスケさんって私と同じ36歳だよね?」

「今週の日曜で37歳になるよ」と言うと、アヤコさんは妙に上機嫌になりました。どうしてそこまで嬉しそうにはしゃぐんだろう……。やがてテニス教室が終わってハルタとリクくんがこちらにやってきました。「今日ね、リクに勝ったの!」ハルタが言うとアヤコさんが私たちにも聞こえる大声でリクくんに話しかけました。「リクくやしい? もっとうまくなりたい?」

「じゃあハルタくんのパパにまた教えてもらおうか」アヤコさんが言うと、ハルタに負けたばかりのリクくんはやる気満々です。「教えてもらいたい!」「ねぇシホさん、リクがキョウスケさんにまたテニスを教わりたいって」

アヤコさんから「次の日曜がいいです」と希望があり、キョウスケも都合をつけてくれました。私はパートの曜日なので行けず、当日はハルタとリクくん、キョウスケにアヤコさんというメンバーで練習に出かけてきました。

ハルタにはとても楽しく充実した時間になったようです。しかしキョウスケは少し困った顔をしていました。「どうしたの?」「いや、それがさ……」キョウスケは見慣れない紙袋のなかからきれいにプレゼント包装された箱を取り出しました。

キョウスケの言葉に驚いた私は、しばらく固まってしまいました。いくら家族ぐるみの付き合いがあるとはいえ、私がいないところで誕生日プレゼントを渡すなんて……。私がパートでいないのを知っていて、日曜に練習したいと言ったアヤコさん。私に見えないところで渡そうと思っていたのかとモヤモヤしてしまいます。アヤコさんとはよくお互いの家族についての話もしているのですが、最近キョウスケの話題がことさら多くなっている気もして不安になったのでした。

高価なプレゼントにモヤモヤ!まさか……不倫に発展フラグ?

「でも、よその旦那にわざわざプレゼントって……」「いや、深い意味はないと思うよ。中身はなんだろう?」キョウスケは心配する私をよそに包装を開けました。

実はアヤコさんは以前、私の誕生日に手作りのお菓子をくれたのです。だから今回もクッキーやハンカチなどのちょっとしたものかなと思ったのですが……。中身はなんとブランド物のスポーツウェア!! 一瞬見ただけで、高価なものだと分かります。

よその夫にわざわざ高価なものをプレゼントするなんて、深い意味を感じざるを得ません。しかも身につけるものなんて……。それなのにキョウスケはいぶかしむどころか喜んでいるので、余計にモヤモヤします。さっそく着てみようと手にとったキョウスケを、私は思わず止めました。

私はキョウスケがもらったスポーツウェアを洗濯しながら深いため息をつきました。アヤコさんは明らかにキョウスケに好意を抱いているように思うのです。鈍感なキョウスケはそのことに気づいていません。そして翌日パート先に出勤すると、同僚のミカさんが話しかけてきました。

私がプレゼントのことを打ち明けると、ミカさんは同情してくれました。「身につけるものって……なんかイヤだね」

「そうなんだよ……。でもキョウスケはそういうの鈍感みたいで、無邪気に喜んでいて……。別に不倫に発展しそうな様子はないと思うんだけどね」「……まぁ、今はね?」ミカさんの言葉に心がざわつきます。

ミカさんは私を諭すように言います。「その誕生日プレゼントは宣戦布告だよ! キョウスケさんを必ず落とします、ってことじゃない? 油断しないほうがいいよ。男の人って押しに弱いから」

「そもそもなんでキョウスケさんの誕生日を知ってたの?」そう聞かれてハッとしました。アヤコさんにキョウスケの年齢を聞かれたとき、私はうっかり「今週の日曜で37歳になるよ」と伝えてしまったのです。アヤコさんはキョウスケと同学年であることではなく、さりげなく誕生日を聞けたことに喜んだのでしょう。まんまと彼女の作戦にのってしまって悔しいです。

わざわざ誕生日にブランドもののスポーツウェアをあげるなんて、絶対になにか意図があると思います。もしミカさんが言うように、私への「宣戦布告」だったら……? キョウスケのことは信じているけれど、このまま放っておくと関係に進展があるんじゃないかと怖いです。けれど本当にただの善意だった場合、いきなり「夫にプレゼントなんてやめて」と言うのも失礼です。私はどうやってアヤコさんに釘を刺せばいいのかわからず頭を悩ませるのでした。

不敵な笑みを浮かべ……「旦那さんが私に手を出すかもね!」

ハルタのお迎えに行くと、アヤコさんはいつも通りニコニコと挨拶をしてきました。今日のアヤコさんはかなりラフな格好でお化粧も薄め。キョウスケがお迎えに来る日は、上品なワンピースを着ていてメイクも決まっているのに……。キョウスケと会う日にわざわざおしゃれをしているのは間違いありません。先日の誕生日プレゼントのことをどう切り出そうか迷っていると、アヤコさんの方から話しかけてきました。

「キョウスケさんはプレゼント気に入ってくれた?」「もう着てくれたかな?」「きっと似合うと思うんだよね」しつこく聞かれ、私は思わずイラっとしました。

ムカつくあまり、ストレートに聞いてしまった私。「……アヤコさんはキョウスケに気があるの?」するとアヤコさんは余裕ぶった表情で、大げさに笑い出しました。

「まさか! ママ友の旦那さんには手を出さないよ」「でも……」今までのやりとりから、アヤコさんがキョウスケを狙っているのは間違いありません。しかもアヤコさんは不敵な笑みをたたえながらこうも言いました。「もしかしたら旦那さんから手を出してくるかもしれないけどね?」

「ママ聞いて! 今日ハルタに勝った!」レッスンを終えたリクくんやハルタが戻ってきたので、その日のアヤコさんとの話はそれで終わりになりました。私はもうこれ以上、アヤコさんとママ友を続けることはできない……。けれど、どんなに距離を置きたいと思っても、ハルタがテニス教室を続ける以上は顔を合わせることになるはずです。帰り道もずっと思い悩んでいると、ハルタが話しかけてきました。

「ママはぼくがテニスするのイヤ?」「えっ? そんなことないよ。続けてほしいよ」「でもいま、すごく暗いよ」ハルタの言葉にハッとしました。子どもは親の言動に敏感なものでしょう。もし私がアヤコさんと口を利かなくなれば……。

ハルタとリクくんの関係に影響が出てしまうのは、どうしても避けなければいけないと思いました。私は気持ちを切り替え、できるだけ明るい声で答えます。「お母さんはハルタが楽しそうにテニスをしている姿が好きだよ」

「よかったー」ハルタはホッとしたように笑いました。引っ込み思案のハルタが変わるきっかけになったテニスを、私はこれからも続けてほしいと思っています。そしてリクくんとのいいライバル関係も、親の都合で変えたくはないのです。

アヤコさんと直接会話をしたことで、なんとなく不安に思っていたことが確信に変わりました。まさに私はアヤコさんに「宣戦布告」されてしまったのです……。これ以上ママ友として付き合いを続けることはできそうにありません。けれど親同士のもめごとでハルタとリクくんの関係にヒビが入ってしまうことだけは避けたいです。ハルタからはまた「お父さんとリクと一緒に練習したい」という話があったので、その気持ちは応援してあげたいと思います。

鈍感な夫、気づいて!ママ友のアプローチ、食い止める方法は

ハルタが眠りについたあと、私はキョウスケに思い切ってアヤコさんのことを切り出しました。「ねぇ、キョウスケ。アヤコさんのことなんだけど……。アヤコさんは、キョウスケのことが好きなの」私がアヤコさんからの言葉をそのまま打ち明けました。

キョウスケは驚いたような顔をしました。「まいったな……」

「キョウスケはアヤコさんのことをどう思っているの?」「もちろんまったく恋愛感情はないよ」「本当に? 信じていい?」「信じて。シホが嫌なら、アヤコさんからもらったスポーツウェアも着ないから」キョウスケは真剣な顔でそう言いました。

「プレゼントに喜んでいてショックだった」アヤコさんからの誕生日プレゼントには、異性に対する特別な意味が込められていました。それをようやく理解したキョウスケは、私に謝ります。「ごめん、鈍くて……。俺にとって大切なのは家族だし、好きなのはシホだけだ」

テニスで活躍していたキョウスケは大人気で、昔からたくさんの女の子に言い寄られていました。でも私と付き合いはじめてから不倫する素振りなど一度もありません。今もずっと、妻として大切にされているのを感じます。アヤコさんが何をしようが、私のキョウスケへの信頼が揺らぐことはありません。

本題はここからです。どうしたらアヤコさんのアプローチを回避することができるのか……。「今度また、ハルタとリクくんが練習する日があると思う。そのときアヤコさんに会ったらはっきり断ってほしい」「断るって? 告白されたわけじゃないのに?」

「相手は俺に好意はないって否定してるんだろ? 告白されてないのに断ったら角が立つよ」確かにアヤコさんのことだから「あなたたちの勘違い」で済ませてきそうです。

キョウスケは「一緒に考えよう」と言ってくれました。真剣に考えようとしてくれるのは頼もしいです。私もひとりで抱え込まず、最初からキョウスケにはっきりと自分の気持ちを伝えていればよかったのかもしれません。

私はアヤコさんの旦那さん、ツカサさんに連絡してみようと思い立ちました。ツカサさんと普段テニス教室で会うことはありませんが、お互いの父親同士でメッセージのやりとりをしたことがありキョウスケは連絡先を知っています。なるべく角が立たないようにアヤコさんのアプローチを止めるには、どうしたらいいのか……。アヤコさんは表向き「好意はない」と言っていますが、このままの状況が続くならツカサさんも巻き込まざるを得ないでしょう。キョウスケと協力して頑張りたいと思います。

【夫の気持ち】相手の意図が分かり「もしかして……」恐怖ッ!

俺はキョウスケ、妻シホと9歳の息子ハルタとの3人暮らしです。ハルタはテニス教室で同じ学年のリクくんと仲が良く、テニス経験者の俺が休日にふたりを教えることもあります。ある日俺はリクくんのお母さん・アヤコさんから高価な誕生日プレゼントをもらいました。いつもテニスを教えているお礼かなくらいにしか思っていなかったのですが、シホに「アヤコさんはキョウスケに気がある」と言われました。聞けば、アヤコさんから「私の方から手は出さないけど、旦那さんから手を出してくるかもね?」と言われたというのです。アヤコさんが俺に好意を持っているだなんて……正直驚いています。けれどふり返ると、それらしい言動がちらほらあったことに気づきました。

テニス教室にハルタを迎えに行った日のことです。コートの外からレッスンの様子をうかがっていると、アヤコさんから急に話しかけられました。なんとなくふわっとした服装で、青いバッグを持っていたのを覚えています。

何が違うのかまったくわかりませんでしたが、女性がそう言うなら服でも褒めてほしいのかなと思いました。とりあえず見た目の印象で「シックですね」と答えます。

「正解! 実はキョウスケさんの好きな青を差し色にしたんです」アヤコさんはそう言うと、青く塗ったツメをなぜか俺に向けて見せてきました。このときは「俺の好きな色を覚えているなんて記憶力がいいんだな」としか思いませんでした。

またあるときはアヤコさんから誕生日プレゼントを渡されました。「どうしてアヤコさんが俺の誕生日を知っているんだろう」とは思いましたが、きっとシホが教えたんだろう、とあまり気にしていませんでした。

アヤコさんからは「いつもお世話になっているので!」とお礼の言葉がありました。俺がリクくんの面倒をみているのは確かだし、単純に「人になにかを贈るのが好きな人」なのだろうと思って受け取りました。

けれど、シホから話を聞いた今なら、全部アヤコさんからのアプローチだったのだとわかります。もちろん、アヤコさんとどうこうなりたいという気持ちは少しもありません。なんとか止めてもらわなくては……。夫婦で頭を悩ませ、シホがアヤコさんの夫・ツカサくんに連絡することを思いつきました。

ツカサくんは真面目そうな男性です。俺よりも年下だということくらいしか知らず、会ったことは数回しかありません。ただ以前メッセージのやりとりをアヤコさんも含めてしたことがあり連絡先を知っていました。

「すみません、突然連絡して。いつもハルタがお世話になっています」「こちらこそいつもリクの面倒を見てくださって感謝しています」「いえ、俺も楽しんでるので! ところで……」ここからは、シホが考えてくれた文面どおりに送ってみます。

俺はツカサくんに、誕生日プレゼントのことを知っているかどうかを確かめます。「この間は誕生日プレゼントをわざわざいただいてしまってすみません」そしてツカサくんからの返事は……。

俺は心のどこかで、ツカサくんから「いえいえ、お気になさらず。良かったら使ってください」というような返事が来ることを願っていました。旦那さん公認のプレゼントなら、単純に「リクくんの面倒をみてもらっていることのお礼」以外の意図はないだろうから……。けれどツカサくんは案の定、アヤコさんが俺に誕生日プレゼントを渡していることを知りませんでした。アヤコさんはツカサくんに内緒でこっそり、俺に高価な誕生日プレゼントを贈ったことがこれではっきりしたのでした。

「2回目なんです」相手夫から聞くママ友の過去

俺はアヤコさんから誕生日プレゼントをもらったことをツカサくんに伝えました。するとメッセージはすぐ読まれたものの、しばらく返事が来ません。シホとふたりで「どうしたんだろう……」と待っていると、思わぬメッセージが返ってきたのです。

「直接どこかでお話できないでしょうか」ツカサくんからそう伝えられ、翌日俺は仕事帰りにファミレスに向かいました。ツカサくんはすぐに話を切り出しました。「突然すみません。アヤコが渡したプレゼントっていうのは……」

ツカサくんにブランド物のスポーツウェアを見せると、重い沈黙が流れました。そのとき、俺はシホとハルタのことに必死で、ツカサくんにまで配慮できていなかったことに気づきました。よく考えれば、自分の妻が他の男に誕生日プレゼントを渡している事実を聞かされたらかなりつらいはずです。しかも張本人に……。俺は慌てて謝りました。

「そのスポーツウェア、最近アヤコが気に入って着ているんです」ツカサくんの言葉を聞いて背筋が凍りました。もし俺がなにも気にせず外で着ていたら、アヤコさんとおそろいの服を着ていると誰かに思われたかもしれません。

ツカサくんの気持ちを考えると俺はなんと言ったらいいのか……。フォローの言葉を探していると、ツカサくんが突然俺にお礼を言いました。「ありがとうございます」

そして俺はツカサくんから思わぬ事実を聞かされます。「こういうこと、実は初めてじゃないんですよ」「えっ?」「アヤコは……前にもよその男性に誕生日プレゼントを渡していたことがありました」

「不倫に発展する前に報告してくれたことに感謝しています」ツカサくんは切なそうに笑います。ほかの男性にたびたびアプローチをしようとするアヤコさんを、それでも許そうというのでしょうか。あまり踏み込んではいけないことなのかもしれませんが、俺は思わず聞いてしまいました。「……離婚はしないの?」

俺がシホのことを大切に思っているように、ツカサくんもまたアヤコさんのことを愛しているのでしょう。まだ実際に別の男性との不倫に発展したことはないようです。もし可能性があるなら、もう一度自分にふり向いてほしいのだと思います。

「でもアヤコのせいでご迷惑をかけるわけにはいかないので、ぼくのほうでなんとかします」この場を去ろうとするツカサくんを俺はとっさに呼び止めました。「待って!」

俺はツカサくんの誕生日を確認しました。シホが以前アヤコさんとの雑談のなかで、近々誕生日だと聞いていたのです。俺はツカサくんに耳打ちしました。

まさかアヤコさんが他の男性にもアプローチをしていたとは……。裏切りを承知しながら黙っているツカサくんの気持ちを考えると胸が痛くなります。だからこそ同じことが二度と起こらないようにしたいのです。俺はツカサくんの誕生日が来ることを利用して、アヤコさんに自分のしたことで周りがどういう気持ちになるのか分かってもらおうと思いました。シホの作戦を打ち明けるとツカサくんは驚いた顔をしましたが、どうやら協力してくれそうです。

【私の気持ち】「目には目を!」仕返しすると……怖ッ、ママ友がブチギレ!

キョウスケに相談すると、アヤコさんの夫ツカサさんに連絡をとってくれました。帰宅したキョウスケはツカサさんとの会話の内容を私に伝えます。

どんな結果になるのか不安だったのですが、ツカサさんは「教えてくださってありがとうございます」とキョウスケにお礼を言っていたそうです。ツカサさんによれば、アヤコさんは以前も別の男性にもアプローチしていて、今回が二度目だというのです……。ツカサさんの気持ちを考えると胸が痛いです。

「ツカサくんも協力してくれるって。来週の土曜日でいい? ツカサくんの誕生日なんだ」「うん。その日はパートもないし」私たちはアヤコさんの目を覚まさせるため、どうしたら自分のしたことの罪深さを分かってもらえるのかと頭を悩ませていました。そしてひとつの作戦を思いついたのです。

キョウスケはたびたび、近所のテニスコートでハルタとリクくんの練習につきあっています。当然、キョウスケを狙っているアヤコさんも来るはず……。そして当日、普段は行かない私とツカサさんもテニスコートに集まりました。

テニスコートでは、キョウスケが子どもたちにテニスを教えています。私は談笑するアヤコさんとツカサさんに割って入りました。「アヤコさん、今日ってツカサさんの誕生日だよね?」「そうだけど……なんでシホさんが知ってるの?」アヤコさんは少し驚いたような顔をします。

私はかまわず笑顔を作り、ツカサさんに誕生日プレゼントを渡しました。「ツカサさん、おめでとうございます!」「ありがとうございます。びっくりです」ツカサさんはあらかじめ知っていてあえて演技をしてくれています。アヤコさんが唖然としている横で、ツカサさんはプレゼントを開封しました。

「リストバンドだ! 刺しゅうが素敵ですね。手作りですか?」「はい、趣味なんです。ほら!」私は自分の手首につけているリストバンドを見せました。

誕生日にプレゼント、しかも身に着けるもので、おそろい……。私はアヤコさんがキョウスケにしたことをそのまま返したのです。するとアヤコさんはいきなり声を荒げました。「なによそれ!」

「人の旦那におそろいのものをプレゼント? バカにしているの? いい加減にして!」しばらく沈黙が流れます。そして口を開いたツカサさんが冷静にアヤコさんに言い放ちました。「君に怒る権利はあるの?」

その瞬間アヤコさんは、自分のしたことがツカサさんに全てバレていると悟ったようです。私たちの意図が伝わったのか、口をつぐんでしまいました。立場が変わるとものの見方も変わるでしょう。された方は悲しい気持ちになるということを、アヤコさんにもわかってもらえたらと思います。ハルタとリクくんにはこのまま良い関係でテニスを続けてもらいたいので、なにもことを荒立てたいわけではありません。不穏な雰囲気を出さずに解決できたらと思っています。

子どもたちのイイ関係は継続させたい!私たち親が出した結論

私がツカサさんへのプレゼントをリストバンドにしたのには意味があるのです。それは……。

テニスコートでキョウスケと練習していたハルタとリクくんが休憩しにきました。リクくんはツカサさんに話しかけます。「その手首のはなに?」「これはリストバンドだよ。ハルタくんのお母さんにもらったんだ」私はすかさず、バッグからいくつものリストバンドを取り出してみせます。「みんなの分もあるよ!」

私はハルタとリクくん、そしてキョウスケにも同じ刺しゅう入りのリストバンドを渡しました。みんな嬉しそうにつけてくれています。休憩を終えて子どもたちが元気よくコートに戻っていったあと、私はアヤコさんにも……。

「みんなでおそろいだから心配しないで」私はリストバンドを差し出しましたが、アヤコさんは目を合わせようともしません。「……いらない」

「私はハルタとリクくんにこれからも楽しくテニスをしてもらいたい。だから大人の事情をはさみたくないの。そういう気持ちでいま、これを渡してる」

リストバンドは私なりの和解のしるし。渋々ではありましたが、アヤコさんはリストバンドを受け取りました。これからもハルタとリクくんにテニスを楽しんでもらいたいという気持ちはアヤコさんも同じなのでしょう。しばらくしてハルタが声をかけてきました。「ママたちもテニスやらない?」

「アヤコも入りなよ。ぼくもやるから」ツカサさんに促され、大人たちも入って全員で打ち合うことになりました。最初は気まずそうだったアヤコさんも、だんだんといつも通りの明るさを装えるようになっていました。そんなアヤコさんを見て、ツカサさんも微笑んでいるように見えました。

その晩、ツカサさんからメッセージが届きました。「今日はありがとうございました。アヤコも反省していたので離婚はしないことになりました」ツカサさんとアヤコさん夫婦が関係を修復していくのはまだこれからなのかもしれません。でもひとまず一件落着したかなと思いました。

続けてアヤコさんからもメッセージが届きます。「迷惑をかけてごめんなさい。スポーツウェアは捨ててしまって構いません」キョウスケにとって、アヤコさんからの誕生日プレゼントは嫌な思い出になっているはずです。深刻になりかけた空気を振り払うかのように、私はおどけて言いました。「どうする? そこそこ高値がつくだろうし、売っちゃう?」

私たちは後日、アヤコさんからもらったスポーツウェアを処分しました。今後はアヤコさんが周りの男性に浮ついた行動をとらないよう願うばかりです。リクくんのためにもツカサさんと誠実に向き合い、夫婦関係を継続していってほしい……そう心から思います。紆余曲折ありましたが、結果的に私とキョウスケの結びつきは前よりも強くなりました。もうアヤコさんを「友達」と思うことはできませんが、ハルタとリクくんのために付き合いは続けていこうと思います。


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