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線の力で紡ぐ美の物語 ― 泉屋博古館東京「ライトアップ木島櫻谷Ⅱ―おうこくの線をさがしに」(取材レポート)

アイエム[インターネットミュージアム]

木島櫻谷(1877-1938)は、明治から昭和初期に活躍した日本画家で、その作品は泉屋博古館東京にも多く所蔵されています。今回の展覧会では、櫻谷の線の表現に焦点を当て、人物画や写生帖を通じて、繊細かつ大胆な線描の美を探求します。


泉屋博古館東京「ライトアップ木島櫻谷Ⅱ―おうこくの線をさがしに」会場入口


櫻谷は「写生とは実物に何度も接し、そのイメージを頭に留めるためのもの」と語り、600冊を超える写生帖を遺しました。明治25年、今尾景年の門下で学んだ櫻谷は、写生会や写生旅行を積極的に行い、日常生活でも常に写生に励みました。

初期の写生は、短い線で形を正確に捉えることに重点を置き、次第に線が伸びやかになり、側筆を活かした表現が見られるようになります。最終的には、筆数を減らし、対象の動きや存在感を捉えるクロッキー的な描写へと変化します。


第1章「櫻谷の写生帖、なんども繰り返し写した線の軌跡。」

第1章「櫻谷の写生帖、なんども繰り返し写した線の軌跡。」


櫻谷は京都で運筆を重視する環境で修練を積み、筆使いを巧みに磨きました。その結果、彼の作品には多彩な線が駆使され、形を写し取るだけでなく、存在感や感情、さらには動きまで表現することができました。

人物画では、顔や手足、衣紋線などを駆使して細やかな表現を行い、動物画では荒々しさや力強さを描き出しました。


第2章「息づかい、感情、存在感…、櫻谷の線は語る。」

第2章「息づかい、感情、存在感…、櫻谷の線は語る。」 木島櫻谷《かりくら》明治43年(1910)櫻谷文庫


大正中期、住友家の十五代当主・住友吉左衞門友純は、天王寺の茶臼山に新たな邸宅を建設し、その空間を飾るために櫻谷に四季連作屏風を依頼しました。

屏風には柳桜、燕子花、菊、梅など四季のモチーフが描かれ、大正期の「琳派風」を意識しながらも、写生に基づく独創的な表現が見られます。特に、柳の枝や梅の枝、菊の葉脈などに表れる櫻谷の線の妙が作品の魅力を引き立てています。


第3章「線がおりなすハーモニー 住友家本邸を飾った四季連作屏風。」

第3章「線がおりなすハーモニー 住友家本邸を飾った四季連作屏風。」


同時開催の特集展示「住友財団助成による文化財修復成果―文化財よ、永遠に2025」では、狩野山雪の《歴聖大儒像》と《十一面観音菩薩像》が、住友財団の支援を受けて修復され、修復過程や使用された道具も紹介されています。

文化財の保存の重要性が伝えられ、櫻谷の芸術とともに、時を超えて受け継がれる文化の魅力を感じることができます。


特集展示「住友財団助成による文化財修復成果―文化財よ、永遠に2025」


ただ形を捉えるだけではなく、対象の命を吹き込むような生命力を持っている、木島櫻谷の線。櫻谷が遺した作品の数々を通じて、その「線」に込められた情熱や感情に触れてみてください。

[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2025年4月4日 ]

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