姿を消しつつある、公衆電話の跡地をめぐる旅
一昔前、街を歩けば必ずと言っていいほど公衆電話が設置されていた。財布には必ずテレホンカードが入っていたし、出先で急に連絡を取らなければならない時に備えて、行動範囲のどこに公衆電話があるかは大体把握していたように思う。
消え去っていく公衆電話、その跡地をたどる
ところが携帯電話の普及に伴い、めっきり公衆電話を使わなくなってしまった。生まれた時から携帯電話のある生活に慣れている世代は、そもそも公衆電話の使い方自体を知らないという子も多い(筆者は中学校勤務なのだが、使い方を知らない生徒に教えたことも一度や二度ではない)。
利用回数の減少に伴い、公衆電話の設置台数も減少している。日刊工業新聞の記事によれば( https://newswitch.jp/p/41801 )、2000年3月末に全国で約73万台設置されていた一般公衆電話は、2024年度中に10万台を割り込み、25年間で9割近く減少することになるという。
携帯電話に慣れて公衆電話の場所を気にしなくなっているうちに、どんどん数が少なくなっていたのだった。
電話ボックスごと撤去されるなど、跡形もなく消え去ってしまう場合は「ここに公衆電話があったな」と思い出すことは難しいのだが、街の中には、かつて公衆電話があったことを伺わせる痕跡が遺されている場所がある。こうした公衆電話の跡地をたどってみたい。
公衆電話の跡地はどこで見ることができるか
電話ボックスに比べ、キャビネット型の公衆電話は鉄柱が地面に埋め込まれているせいか、電話が撤去されても外装が残されていることが多い。
キャビネットがスタンプ台などに転用されている事例もあった。
公衆電話の跡地を多く見られるのは、駅や公共施設などである。建物そのものに、公衆電話を置くための台が据え付けられている場合が多いからだ。かつて大きな駅では、公衆電話がズラリと並んで設置されていた。
公衆電話が撤去されたからといって、この設置台をすぐに取り壊すわけにはいかないという事情があるのだろう。
公衆電話はどのように減っていくのか
では、公衆電話はどのように減っていくのだろうか。複数台あった電話が、ある日全て撤去されるということは少ない。1台減り、2台減り……というように、徐々に数を減らしていくのである。
現在1台だけ設置されている公衆電話も、不自然にスペースが広い場合、「以前は複数台設置されていたんだろうな……」と察することができる。
そして、とうとう電話が1台もなくなってしまったという跡地。そこに公衆電話があったであろうという台や棚だけが残されている。
たまに荷物整理台などに使われることもあるが、存在意義を失ったその跡地を見ると、何とも切ない気持ちにさせられるのであった。
一般の公衆電話が減る一方で
一般の公衆電話は減少の一途をたどっているが、近年の自然災害の増加に合わせて、あらかじめ電話回線を開通させて災害時に避難所で端末を接続するという災害時用公衆電話の設置は逆に増加しているという。
(参考:総務省ホームぺージhttps://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/universalservice/02kiban03_04000791.html )
一般の公衆電話も、緊急時には必要になることがあるかもしれない。公衆電話の跡地を眺めながら、そのありがたみを再確認したいものだ。
イラスト・文・写真=オギリマサホ
オギリマサホ
イラストレータ―
1976年東京生まれ。シュールな人物画を中心に雑誌や書籍で活動する。趣味は特に目的を定めない街歩き。著書に『半径3メートルの倫理』(産業編集センター)、『斜め下からカープ論』(文春文庫)。