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【算数・国語のプロに聞く!第1回】算数嫌いは何が原因?苦手な子のためにできること

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小学校では、「算数」という教科を習います。「わが子は算数が苦手」と悩みを持つママがいるのではないでしょうか。最初は順調だったけれど、高学年になるにつれ、算数が苦手になってくる子どももいます。 今回は、主に小学生の算数と国語の家庭教師を10年間勤め、現在「音読道場連盟」代表、小学生向けオンラインスクール「音読キッズ」を運営する前田大介先生に、算数の力を伸ばす方法を教えていただきました。

低学年・中学年・高学年別「算数が嫌いになる理由」

――算数が嫌いになる子は多いと思います。まず低学年で算数が苦手になるきっかけは、どういうところでしょうか?

前田大介先生(以下、前田先生):低学年で算数が嫌いな子は、1、2といった「文字」としての数字と、その数字の「量の感覚」がくっついていないように見えます。算数を始めたての子は、たとえば5という数字を覚えるとき、どんぐりを5つ頭の中で思い浮かべ、「5という数字は、どんぐり5つと同じ数のことだな」というように考えます。それが一致しないままに、「1+2=?」「3+4=?」と計算がどんどん進んでいくと、ただの記号にしか見えなくなってしまう気がします。すると子どもは、「算数は、なんかよくわからない」という印象をもつのだと思います。文字としての5と、5つのどんぐりが同じものだと、数と量を一致させることが大切です。

――中学年になってくるとどうでしょうか?

前田先生:中学年になると、2桁のたし算、たとえば「15+17」は「32」だなと数字を見ただけで瞬時に判断できるようになればいいですね。

――数が10以上になってくると、難しさを感じる子どももいるのではないでしょうか?

前田先生:次の段階として、10の塊を作れるようになると楽になります。10の塊を作るというのは2つの数字を足して10になるという意味で、「1+9」「2+8」「3+7」「4+6」「5+5」しかないんです。これらを覚えてしまえば、子どもにとっては「全部でこれだけしかない」という安心に繋がります。もちろん「塊を作る」ことは10だけでなく、いろいろな数字に言えることです。

――高学年になってくるとやや複雑なものも出てくると思うのですが、どうでしょうか?

前田先生:家庭教師をしていて感じたのですが、よく高学年が苦手にしているのは、「分数計算」と「割合計算」ですね。6/24(24分の6)を約分するときに、2で割って3/12(12分の3)と答えを出す人がいます。でも計算の速い人はこうしない。見た瞬間6で割って1/4(4分の1)と答えます。24の中に6があって九九の6×4が隠れているという発想がないまま、計算能力を上げてきた子どもは、分数や割合が苦手になる気がします。

算数はイメージ力が大事です。中学受験の難しい問題は、じつは図に書いてみたら簡単というものばかりです。ただ数値の計算だけじゃない、さまざまなイメージ力があるとやりやすいですよ。

――「この問題にはこのやり方が鉄板」と覚えない方がいいということですか?

前田先生:そうです。1つの問題に対して、いろいろなやり方を知った上で最適な解き方を見つけられる子が、本当に賢い子だと思います。そもそも算数はやみくもに公式を覚えるものではありません。計算さえ速ければなんとかなるという考え方も違いませんか。問題をやるときにいろいろなやり方を試行錯誤して、問題を解く度に最適解を考える、そういう頭の使い方こそすごく重要です。やり方はいくつもあるので、自分で毎回判断する経験は、たくさん積んでいた方がいいなと思うのですよね。

算数が嫌いになってしまったときは「なぜ嫌いになったの?」という対話が大事

――子どもが算数を嫌いになってしまったときはどうすればいいのでしょう?

前田先生:ママやパパが一緒に嫌いな原因を一緒に考えるのは、いい方法だと思っています。嫌いな原因を親と一緒に考えたら、親も対策しやすいですよね。嫌いな部分がわかれば、その嫌いなところだけ鍛えられる教材を使うこともできます。

――子どもがどこを苦手にしているのか、親が把握しておくほうが良いのですね。うまく聞ける自信がないのですが……。

前田先生:家庭教師のようにはいかないかもしれませんが、会話自体があらゆる面でいいと思うのですよ。家族関係を良くすることにも繋がりますし、国語力も向上できます。子どもが成長したときに、「助けて、わからない。どこがわからないのかわからない」しか言えず、苦手なところを言語化できないと、後で困ります。どこがわからないのかを言語化する作業は、親子で会話のなかでやるのがいいですよ。

やる気にさせるためには「ずっと集中できる環境を作ること」

――算数が得意になるために、またやる気にさせるために、子どもが小さいうちから家庭でできることはありますか?

前田先生:その子どもが遊び感覚で集中できるもの……おもちゃやパズルを家に置いておく方法が簡単です。 例えば、ビー玉を転がす道を作る木のおもちゃ。「これがいいのかな、いや、こっちがいいのかな」と組み合わせながら考えているときにこそ、頭がよくなっていると思うのですよ。ハマったら2時間ぐらいやり続ける子もいます。 パズルをするとしたら、プラパズルやタングラムのような手で触れられるパズルがいいですね。暇なときに「いじいじ」できるパズルは、集中力が続きにくいタイプの子と相性が良いですよ。いくつか用意しておいて子どもに選ばせると、子どもは「自分で選んだ」と思って、「やらされた」という感覚がなくなります。こうしたパズルは、子どもと出かけるときのお供としてもおすすめです。

――ほかにおもちゃというと、ブロックはどうでしょう?

前田先生:ブロック遊びもいいですね。作って壊して……を繰り返して、自然と創造力が育まれますから。親も楽ですしね。 僕の活動においてはいつも、ちょっと遊んでいるような感覚は絶対忘れさせないようにしています。この解き方があって、次はこの解き方があって……と詰め込むと、すぐお腹いっぱいになっちゃう。だからまず「遊ぶ」のが大事なのです。僕も遊んでいますよ(笑)。

――前田先生は、普段の活動で子どもたちにどのような「遊び」をしていますか?

前田先生:僕は、「サイコロ道場」という学び場を普及しているのですが、そこでは多面体に数字がランダムに書かれたサイコロを5つ同時に転がして、出た目を足し算・掛け算するというようなこともします。最初はドットが書かれた大きめの六面体のサイコロから始めてドットを数えられるようにします。だんだん面数を増やして、高学年ぐらいになると、12面体のサイコロ4個で掛け算しようという感じになります。サイコロを転がすから、先生にやらされているのではなく、自ら遊んでいるような気持ちになりますよ。

子どもは先が見えない。「ゴールを見せること」は大事

――遊びだと、子どもを安心させることもできますね。

前田先生:算数はある単元を習い終わったら、次の新しい単元があり、終わりのない山登りを続けているような気分になるじゃないですか。算数や数学が嫌いな人は、「いったいこれはどこが終わりなのだろう」と思ってしまうんです。だから、「今のゴールはここだよ。今やっていることは、この範囲でしか遊んでいないよ」ということを教えてあげると、子どもは見通しが立って安心できます。特に10代の間は目の前のことに精いっぱいで、全体を見ることなど考えもしないですよね。僕は全体像を最初に教えて、安心させてから勉強するようにしていますね。

 

(編集後記) 子どもが算数でつまずいたときは、「どこがどういうふうにわからないのだろう」と親子で会話することが大切だと前田先生は言います。ママとお子さんで、「算数を楽しむ」ことを忘れないようにしたいところです。

※取材は2024年7月に行いました。記事の内容は取材時時点のものです。

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