【中学受験伴走】6年生の理科 「何から手をつけていいのかわからなくなった」ときの勉強法を中学受験塾『グノーブル』理科専任講師が伝授!
教育ジャーナリスト・佐野倫子さんによる「中学受験伴走」連載。中学受験塾「グノーブル」の理科専任講師に勉強方法を取材。理科・6年生編。3回目(全3回)。
【画像】中学受験に重要な「読解力」をはぐくむ読書術 〔3つの読書チャレンジ〕教育ジャーナリスト・佐野倫子です。「中学受験伴走(サポート)」連載の理科編の最終回。ついに6年生編です。理科の単元は全部で50ほどあり、あれもこれも復習しなくてはいけない受験生にとっては、無駄のない勉強の進め方や底上げの方法が知りたいところ。
今回も中学受験塾「グノーブル」理科専任のベテラン講師の方々にお聞きしてきました!
理科は「二刀流」の戦い方が有効!
──6年生になると、理科に対して得意だと感じるお子さん、苦手だと感じるお子さんの差が大きくなるように感じられます。6年生はどのように勉強を進めていくべきでしょうか?
永井裕康先生(以下永井先生):6年生では、2月(5年生の2月)から7月までで、理科のほとんどの単元を再び学び、全体の「底上げ」を図ります。
まずはカリキュラムにのって、コツコツ焦らず一歩ずつ。前期は穴を埋める意識を持って、しっかり復習していきましょう。
──6年生になると毎週のようにテストや模試があり、解き直さなければならない問題が溜まっていきます。どのように日々の授業と両立していけばよいでしょうか?
理科科専任講師・永井裕康先生
永井先生:「間違えた問題を何度も解かせて、100%できるように」というのは、一見いい案に見えます。しかし、理科については、やり過ぎた解き直しは、正直親御さんの「安心」のためになっているケースが多いように思います。
入試で必要なのは、「初めて見る問題」への対応力です。だから、我々は「復習は半分、新しい問題に触れることが半分」を理想と考えています。
つまり、6年生の理科のカギは、「完璧」ではなく「経験値」を増やすこと。特に夏以降は、「不安な単元」にあえて取り組むチャレンジも重要です。「繰り返しを徹底する」部分と、「初見の問題を解いて経験値を上げる」。この二刀流でいきましょう。
覚えたそばから忘れてしまうときの対処法は?
──理科には、暗記が重要な単元があります。しかし、習って1週間もすると忘れてしまって、またテスト前に覚え直す、という繰り返しになりがちです。どのようなサイクルが望ましいのでしょうか?
上原佑先生(以下、上原先生):「知識というのは忘れるのが当たり前」です。そこを出発点に考えてみましょう。
まず1週間しっかり覚えているために、単元ごとの宿題をしっかりやる。とは言え、ひと月後には忘れてしまいますよね。
でもそこで諦めずに、「確認する」を繰り返すこと。そうやってカリキュラムの中で、「知識」に厚みを増していきましょう。近道はないけれど、少しずつ積み重ねられたら、それでいいのです。そのうちに知識の継続性も増していきますから。
理科科専任講師・上原佑先生。
上原先生:とはいえ、6年生の後期は、暗記に集中的に取り組んで、細かい知識をつめるというのは有効です。こちらも二刀流でいきましょう。
概念を体系的にインプットするには集団授業が大切ですね。例えば「重曹はベーキングパウダーに使われていて、そういえば掃除にも使うよね」など、授業中に聞くとイメージがつきやすく、記憶に結びつきやすくなります。
「暗記に振り切る」とか、「授業で理解をしただけでOK」など極端なことをせず、6年生も家庭学習における暗記や問題演習、授業での深い理解を目指すことで、最後まで伸びていくことにつながります。
学校別対策は「枝葉」の前に「幹」を作ること
──6年生になると志望校の過去問に取り組みます。つい焦って「志望校の傾向に集中したい」と思ってしまいます……。
細川晃伸先生(以下、細川先生):前提として、どの学校でも通用する「普遍的な力」をまず育ててください。「幹」をしっかり作ってから、秋以降に「枝葉」である学校別対策に進むイメージです。
用語問題、選択問題、記述問題中心など、学校ごとに出題傾向はまちまち。でも基礎力がないのに対策をしても効果は薄いのです。しっかりとした力をつけた上で学校に合わせて微調整するイメージです。
理科科専任講師・細川晃伸先生。
──ということは、学校別の対策は秋以降で十分間に合うとお考えですね?
細川先生:そのとおりです。一般的に中学受験で「第1志望に合格する割合は3割程度」と言われています。
早い時期から第一志望1校に、全てを賭けるのはリスクが高い。それより、「第ニ、第三志望も、どの学校もいいよね」という視点を親子で持ち続けてほしいんです。
1校の特殊な問題傾向に特化するよりも、どの学校の入試問題でも「発揮できる力」を育てることが、正しい作戦だと思います。中学入学後も、その方が伸びるはずです。
苦手があるほうがモチベーションは続く
──「理科が苦手」と自信をなくしている6年生にアドバイスをお願いします。
細川先生:「理科が苦手=ダメ」と思い込む必要はありません。まず大切なのは、自信を持って取り組める「得意分野」を伸ばし、得意分野を少しずつ増やしていくこと。そうすると、「理科が苦手」ではなく「特定単元が苦手」な子になります。
例えば、「天体はそれなりに解けるけれど、地層は大の苦手」というお子さんがいた場合、つい「まずは苦手な地層を克服させないと」と考えてしまいがちです。
しかし実際には、地層は最低限の基本的な問題をしっかり押さえ、比較的得意な天体の完成度を高めていく方が、良い結果につながりやすいのです。
まずは「得意分野が出れば合格できる」という状態を作ることを、第一の目標にしてください。次に「苦手単元を伸ばす」こと。
誰にでも伸び代はありますが、得意と苦手のコントラストがはっきりしていれば、ラストスパートの時期にやるべきことが明確になります。
──6年生の復習は、時間との勝負です。家庭でできる具体的なサポートはありますか?
上原先生:根本的なことですが、理科は「自分で図を描いて理解すること」がとても大切です。
例えば、天球図を描いて説明できる子は、記憶も定着しやすい。授業後すぐに、自分で描いた図やメモを見返すと効果が高いですよ。ご家庭では、「どんな授業だった?」と聞きながら、ノートや教材を開かせてください。
お子さんに説明してもらうことで、理解が深まり、定着しやすくなります。点数がとれない単元こそ、ぜひやってみてください。
6年生でも焦らずに、効果的な勉強を積み重ねていきましょうね。
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3回にわたってお届けした理科の学年別勉強法。コツコツ積み重ねれば効果の大きい科目だということがわかりました。
親子で好奇心を大切にしながら、学んでいきたいですね。諦めずにがんばりましょう。応援しています!
撮影/日下部真紀
取材・文/佐野倫子
『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』著:佐野倫子(イカロス出版)