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博多駅前再開発「博多コネクティッド」で変わる九州の玄関口。再開発の概要を解説

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街中で見られる「博多コネクティッド」ロゴ

九州の玄関口「博多エリア」で再開発が進行中

博多祇園山笠

九州の玄関口である博多は、九州全体の経済と文化の中心地だ。古くから商人の街として栄え、日本各地やアジアとの交易が盛んに行われてきた。現在も交通の要所として、国内外から訪れる観光客やビジネス関係者にとって重要な拠点となっている。福岡空港からわずか10分ほどのアクセスの良さは、観光とビジネスの双方で博多エリアの強みといえるだろう。

博多駅周辺には「キャナルシティ博多」や「櫛田神社」などの観光スポットが点在し、オフィスビルや商業施設も集まる経済拠点として成長を続けている。
さらに、2023年3月には福岡市営地下鉄七隈線が博多駅まで延伸され、福岡市内主要エリアである「天神」や「大濠公園」へのアクセスが格段に向上した。この延伸により、福岡市の観光とビジネスの連携が強まり、博多エリア全体の魅力がさらに高まっている。

このような背景のもと、さらなる地域発展に向けて、再開発プロジェクト「博多コネクティッド」が進められている。福岡市が掲げる「アジアの玄関口」としての地位を強化するための重要な施策として、博多駅周辺の経済・文化の発展を目指す。

都市機能の向上とにぎわい創出を目指す「博多コネクティッド」とは

「博多コネクティッド」は、博多駅周辺の半径約500メートル以内を中心に、交通基盤の拡充とあわせて、にぎわいのある街づくりを推進する再開発プロジェクトだ。

このプロジェクトでは、交通基盤の整備やビル建て替え、歩行者ネットワークの拡大により、文化と経済が共存する都市開発を進めている。
都市整備が円滑に進むよう、建物の容積率緩和や税制優遇措置も導入されている。「ハード面」としての都市基盤整備と、「ソフト面」としての文化・商業の活性化を組み合わせ、住民と訪問者の双方にとって魅力的なエリアを創出している。

具体的には、2024年3月末時点で建築確認申請数は29件、竣工済みの建物は22件に達した。これにより、博多駅周辺の都市機能が多面的に強化され、ビジネス・観光・生活のすべての分野で発展が期待される。

博多コネクティッドの計画概要(出典:福岡市ホームページ)

このプロジェクトを支えるのは 「博多コネクティッドボーナス」という制度だ。博多コネクティッドボーナスとは、にぎわい創出等の要件を満たしたビルを認定し、インセンティブを与える制度である。

具体的に容積率が最大プラス50%になる容積率緩和や、PR・テナント誘致の支援などが行われる。これにより、開発事業者は建築コストの削減や運営支援のメリットを享受でき、博多駅周辺の都市開発がスムーズに進められる。

認定要件は、「周辺とつながり・広がりが生まれる回遊空間の創出」や「イベント利用などにぎわいが生まれる魅力的な広場空間の創出」など、にぎわいや回遊空間の創出に重点が置かれている。他にも、緑化の推進やユニバーサルデザインへの配慮が要件として定められており、これらの要件を満たすことで、福岡市が目指す持続可能な都市づくりに貢献する建物として認定され、インセンティブを受けることができるのだ。

並行して進められる再開発「天神ビッグバン」との違いは?

福岡市には、博多コネクティッドと並行して進められているもう一つの重要な都市再開発プロジェクト、「天神ビッグバン」が存在する。2015年に始動したこの「天神ビッグバン」は、福岡市最大の商業エリアである天神の都市機能を大幅に強化する取り組みだ。国家戦略特区「グローバル創業・雇用創出特区」に指定されたことで、航空法の高さ制限が緩和され、都市の多様性と文化的な魅力を高めることを目指している。

具体的な成果として、2021(令和3)年に開業した「天神ビジネスセンター」は、最新のオフィス設備を備えたビジネス拠点として注目されている。また、2022(令和4年)に完成した「福岡大名ガーデンシティ」は、「旧大名小学校跡地まちづくり構想」に基づいて、公民連携(PPP)手法を用いた開発で都市景観大賞を受賞。「ザ・リッツ・カールトン福岡」などの高級ホテルを誘致することで、新たな観光のランドマークとなっている。

天神ビッグバンの計画概要(出典:福岡市ホームページ)

これに対し、2019年に始動した博多コネクティッドは、交通の要所である博多駅周辺を対象に、主にビジネスと交通インフラの強化を図るプロジェクトだ。九州新幹線の開業、地下鉄七隈線延伸、はかた駅前通りの再整備など、交通基盤の拡充を背景に、博多駅を中心とした広域的な回遊性と賑わいの創出を目指している。オフィスビルと商業施設の整備を通じて、ビジネスと観光の結節点としての機能を高めている。

両プロジェクトの特徴的な違いは、インセンティブ要件に表れている。天神ビッグバンでは建物のデザイン性や周辺との調和に力を入れる一方、博多コネクティッドではにぎわいを生む広場空間や回遊性を重視している。両プロジェクトとも容積率プラス50%の緩和は共通だが、博多コネクティッドでは屋根のある広場等の公開空地評価を最大2.5倍とすることで、さらなるにぎわいと回遊性の創出を目指している。

「博多イーストテラス」に「コネクトスクエア博多」。新たに生まれている博多駅周辺の魅力

博多コネクティッドの象徴的な施設のひとつが、2022年8月に完成した10階建てのオフィスビル「博多イーストテラス」だ。博多コネクティッド第1号のこの施設は、「自分らしく新しい働き方を実現する次世代ワークプレイス」として、新たな働き方を提案する。680坪という博多最大級の大規模オフィス空間を有するだけでなく、屋上多目的スペースや北側ワークスペースは、緑豊かな空間でリフレッシュできる居心地のいい空間となっており、快適な仕事環境をそなえている。また、共用施設の混雑状況やオフィスビルでのイベント情報がわかるアプリも導入されているそうだ。 博多駅から徒歩2分という好立地に位置し、ビジネスの拠点として重宝されるだろう。広場では、地元企業や住民が参加するマルシェや文化イベントが頻繁に開催され、ビジネスと地域文化が融合する新たな拠点となっている。

博多コネクティッド第1号となった「博多イーストテラス」(出典:福岡市ホームページ)
「コネクトスクエア博多」はデザイン性の高さが特徴的だ(出典:福岡市ホームページ)

2024年3月に博多駅筑紫口に完成した12階建ての「コネクトスクエア博多」も注目されている。デザイン性の高い設計は「デンマーク王立図書館」などを手掛けた建築デザイン事務所「シュミット・ハマー・ラッセン・アーキテクツ」によるものだ。階層ごとのねじれが目を引き、洗練された印象を受ける。1階には飲食店、2~3階に福岡県博多県税事務所、4~12階に一般オフィステナントが入居。施設内の広場と歩行空間にはベンチが設置され、1年を通して花や緑を楽しむことができる。街の景観と調和する緑豊かな環境が、訪れる人々に潤いと憩いを提供し、都市生活の中に自然を感じさせる空間を演出している。

環境に配慮した「博多駅前三丁目プロジェクト」や線路上空を活用した「博多駅空中都市プロジェクト」など、これから竣工されるビルにも注目

博多コネクティッドでは、今後も多くの建物の建設が計画されている。2025年6月に竣工予定の「博多駅前三丁目プロジェクト」は、地上13階建ての複合ビルとして、最新のオフィス設備を備えた施設になる予定だ。このプロジェクトの大きな特徴は、環境面に配慮して建設・設計されていることだ。既存躯体の一部再利用や太陽光発電設備の導入、再生可能エネルギー由来の電力の使用などを通じて、大幅なCO2の削減を図る。また、観光客や地元住民が利用しやすい広場には、四季折々の樹木やパブリックアート、ベンチの設置が計画されており、シェアサイクルポートも整備されることで、博多駅周辺の回遊性が向上する見込みだ。

博多駅前三丁目地区の計画イメージ(出典:福岡市ホームページ)
博多駅空中都市プロジェクトの計画イメージ(出典:2022年3月16日 JR九州・博多コネクティッド ニュースリリース)

さらに、2028年度には「博多駅空中都市プロジェクト」として、博多駅の線路上空を活用したビルの竣工が予定されている。地上12階建てのこの複合施設には、ラグジュアリーホテル、商業施設、オフィススペースが一体化する計画となっている。在来線は新駅ビルの2階部分を通り、その下の1階部分は商業エリアとして整備される予定で、高層階には海外からの高級ホテルの誘致も進められている。博多駅を中心とするこれらの開発プロジェクトは、地域経済のさらなる活性化と都市機能の向上に大きく寄与することだろう。

伝統と現代が調和する未来型の都市モデルを目指して

博多駅前の様子

博多コネクティッドは、福岡市の都市戦略の中核を担う再開発プロジェクトとして、地域住民、観光客、企業のすべてに多面的な価値をもたらし、九州経済全体の成長を促進する可能性を秘めている。

地域住民にとっては、広場やオープンスペースが日常生活の憩いの場となり、イベントや文化活動を通じて地域コミュニティのつながりを深めることができる 。利便性の高いホテルや観光名所の整備は、観光客にとって訪問の魅力を高め、アクセスの良さも相まって国内外からの訪問者を引き寄せる要因となっている。また、最新の設備を備えたオフィスビルの集積により、博多エリアは企業にとっても魅力的なビジネス拠点として、競争力をさらに高めている。

一方で、交通量の増加による渋滞の悪化や、建設工事に伴う環境負荷が課題とされている。特に、再開発エリア周辺の道路混雑は、地域住民の生活環境に影響を与える可能性がある。

福岡市はこうした課題に対し、公共交通機関の増便や道路インフラの整備によって混雑対策を講じている。さらに、緑地の確保や省エネルギー技術の導入など、環境配慮も重要なテーマとして計画されている。こうした取り組みを通じて、福岡市は地域の成長と持続可能な都市開発の両立を目指す。

また、急激な都市開発による課題も浮上している。地元では、「古き良き福岡の街並みが失われるのでは」という懸念の声があり、九州内では「福岡市一極集中」の影響が他地域に及ぶ可能性も指摘されている。こうした指摘もあるが、博多コネクティッドは、交通と文化が交差する地域の特性を活かし、伝統と現代が調和する未来型の都市モデルを構築しようとしている。

博多コネクティッドにより、持続可能な都市開発と地域社会の成長が両立することで、福岡市は国内外からの注目をさらに集めるだろう。今後もこのプロジェクトが地域社会に与える影響を見守りつつ、その進化を期待したい。

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