〝花のまち〟福岡がフラワーショーでビジネス・交流・観光の促進をはかる
福岡市は来年2026年春、初の大規模なフラワーショーとして、『Fukuoka Flower Show』を開催する予定です。これに先立ち、今年2025年3月23日~27日の5日間、福岡市植物園で『Fukuoka Flower Show Pre-Event』を開催します。『一人一花』運動も踏まえながら、〝花のまち・福岡〟をテーマとしたまちづくりを考えていきます。
2025年3月23日~27日、『Fukuoka Flower Show Pre-Event』が福岡市植物園で開催
福岡市植物園のシンボルガーデン(画像提供:福岡市)
花とみどりあふれるまち・福岡のイメージを世界に発信――。
福岡市は2026年春に花をテーマとしたMICE『Fukuoka Flower Show(FFS)』にチャレンジすることとし、そのプレイベントとして、2025年3月23日から27日の5日間、福岡市植物園で『FFS Pre-Event』を開催する。
今回は、直径12メートルのシンボルガーデン設置をはじめ、フラワーコンテストやガーデンコンテストの開催および作品展示を行っていく。
また、英国で毎年開催されているチェルシーフラワーショー(CFS)の品種コンテストにおいて、2023年の第1位に輝いた、深い紫色を特徴とする『アガパンサス・ブラックジャック』を国内で初公開する。
さらに園芸にちなんだトークショーを開催し、花やガーデニング用品の販売なども行う予定だ。
福岡市では、5日間の会期中に約3万人の来場者を見込んでいる。
来春、花をテーマとしたMICE『Fukuoka Flower Show』開催へ
FFSでは、英国で100年以上続くCFSを参考としながらも、福岡らしさの演出として、集合住宅率の高さを踏まえたベランダガーデニングやまちなかでのお花の屋台の展開なども構想している。
CFSについて、福岡市によると、「イギリスで毎年5月に開催される世界最高峰の国際的なフラワーショー」とのことだ。
そして、「世界各国から集まったトップデザイナーによる世界最高レベルのガーデンなどが並び、世界中から20万人以上が来場する」という。
来春に開催されるFFSについて、福岡市都市住宅局の上原真之・一人一花推進部長は、次のようにコメントする。
上原真之部長
2026年春に開催する『Fukuoka Flower Show』(FFS)では、一過性のイベントではなく、花をテーマとしたMICEとして、花〝で〟経済効果をはじめ、ビジネス機会の創出や交流の場づくり、販路拡大、観光振興などを目指していきます。
そして、ガーデン文化の定着による市民生活の質的向上を図りながら、都市の成長と相まっての持続的な好循環をつくり出していきます。
2025年3月23日からの5日間開催する『FFS Pre-Event』は、来春のFFSにおける方向性やコンテストの水準などをいわば〝モデル展示〟するプレ大会ともなる場で、花柄やピンク色の服や小物などで「おめかし」して来ていただける方には、ちょっといいことがあるかもしれません。
是非、お越しいただきFFSとはどういったものか知っていただけれると嬉しいです。
福岡市都市住宅局の上原真之・一人一花推進部長
九州新幹線開業で始まったチューリップが咲きそろう福博花しるべ
画像提供:福岡市
九州新幹線・鹿児島ルートが博多駅に乗り入れて全線開業した2011年3月12日から4月10日、博多駅前~警固公園の約2キロにわたって10万本のチューリップが咲き誇った。
色とりどりのチューリップは、福岡市の都心部の魅力と回遊性の向上を図ることを目的とした『福博花しるべ』(現一人一花スプリングフェス)事業として植えられた。
福博花しるべでは、市民らが参加してのチューリップの植え付けをはじめ、まち歩き団体によるマップ作成、5,300人が参加したスタンプラリーなどを実施した。
さらに3月26日から4月3日の会期で福岡市役所西側広場において、『福博花しるべガーデンショー』を開催した。
会場では、企業や市民団体などから花壇出展や市民花壇コンテスト、さらに体験講座も実施し、1万5,000人の来場者が訪れた。
福博花しるべは、市民から福岡市長への提案が契機となった。
公益財団法人福岡アジア都市研究所では毎年、テーマを決めて市民研究員(現市民まちづくり研究部員)を公募している。
2009年度市民研究員の藤原正教氏は、個別研究報告『花が美しい都市FUKUOKAを目指せ~ツールとしての「花」の活用方策に関する研究~』において、「福岡市が、国際的にも美しい都市となるために、『花』の美しい都市を目指す」ことを提案した。
福岡アジア都市研究所の機関誌『FU+』No.11(2011年6月30日号、P12『福博花しるべ』)においても「平成21年度市民研究員が、福岡市が美しい都市となるための有効な手段として花の活用を市長に提言したことがこのイベントのきっかけとなった」と明記している。
花で共創のまちづくり『一人一花』運動が2018年1月に始動
出典:福岡市資料『一人一花運動について』
「一人ひとりが、一花育てて福岡市が花でいっぱいに」━━。
2018年1月にスタートした『一人一花』運動は、福岡市民をはじめ、企業・行政一人ひとりが、花と緑を育て、公園や歩道、会社、自宅など、福岡市の各所を花と緑で満たしていく取り組みだ。
2025年1月31日現在、天神・博多駅地区などで花壇の維持管理相当額を協賛する『おもてなし花壇』協賛企業は185社、道路や公園の花壇を管理する市民らの『ボランティア花壇団体』は382団体、民有地での花づくりに取り組む『パートナー花壇』登録は662カ所を数える。
また、花・緑の活動をする市民団体を対象に5パーセント引となる一人一花割引には、福岡市内の86店舗が参加している。
一方、北九州市でも2023年7月から一人一花運動が始まった。
また、福岡県でも2025年1月からまちづくり団体など向けに一人一花制度を導入している。
一人一花運動について、上原真之部長は、次のようにコメントする。
上原真之部長
従来の取り組みが『花〝の〟まちづくり』だったのに対して、一人一花運動では『花〝で〟共創のまちづくり』の実現を目指しています。
日々の暮らしに美しい花があれば、心も豊かになります。
誰でもが楽しめる・親しめる〝花〟をツールとして、共創のまちづくりを進めていけば、福岡市は、さらに住みやすい都市となり、つながりのある心豊かなまちになっていくでしょう。
これらの取り組みを通じて、福岡市の魅力や価値をより一層高めていくことも可能です。
日本の花き市場は取扱高3,605億円、花と緑を巡る〝いま〟
出典:『花卉園芸新聞』2024年7月15日号
『花卉園芸新聞』は2024年7月15日、2023年の市場協会花き流通調査の結果を報じている。
花卉園芸新聞によると、日本における花き市場の取扱高は、前年比1.1%減の3,605億円だった。
コロナ禍で過去最低となった2020年から2年連続で前年比増だったものの、3年連続増にはならなかった。
もっとも、コロナ禍前の2019年比では6.2%増となっており、コロナ禍前の水準に回復している。
花卉園芸新聞では、花き市場別の取扱高ランキングもまとめている。
同ランキングのトップは太田花きであり、前年補1.6%増の321.9億円だった。
大田花きは、東京都中央卸売市場大田市場の卸会社として、花き市場を運営しており、世界でも4番目に大きい花き市場だ。
福岡県花卉農業協同組合が運営する福岡花市場は、同1.0%増の88.6億円で第10位にランクインした。
福岡県花卉農業協同組合は、福岡市東区にある農業協同組合であり、花き卸売市場を運営する専門農協だ。
つまり、福岡花市場は,生産者らが有利な販売経路を確保するために設立した生産者市場となっている。
出典:『花卉園芸新聞』2024年7月15日号
福岡県は花き産出額3位。庭園樹苗木で1位、ガーベラ2位
出典:農林水産省『花きの現状について』
農林水産省が2024年11月に発表した『花きの現状について』によると、2022年の農業総産出額は、9兆10億円だった。
このうち、花きの産出額は3,684億円であり、農業総産出額に占める割合は4%強となっている。
都道府県別では、第1位は愛知県の花きの産出額594億円であり、続く第2位は千葉県の同246億円だった。同227億円だった福岡県は、第3位にランクインしている。
福岡県の耕地面積は、2022年時点で県土の16%を占める7万8,900ヘクタールであり、恵まれた自然条件の下で多種多様な農業が営まれている。
花き関連では、庭園樹苗木が全国の中でも第1位であり、ガーベラが第2位に入り、さらに第3位はきく、トルコギキョウ、洋ラン(鉢物)となっている。
福岡県は、花き分野においても大きな存在感を示している。
出所:福岡県『県の農業』
花と緑を生かした、共創による新たなまちづくりの可能性
九州新幹線の博多駅乗り入れを契機とした『福博花しるべ』は2011年に始まり、その後『一人一花』運動が2018年にスタートした。
いま、花をツールとしたまちづくりは、新たな段階を迎えようとしている。
このような状況を花と緑に詳しい専門家は、どのようにみているのだろうか?
一般社団法人ソーシャルグリーンデザイン協会の神木直哉理事は、次のように語る。
神木直哉理事
日本は依然として〝園芸は趣味〟的な概念のままですが、海外ではチェルシーフラワーショーに代表されるように〝花がビジネス〟になっています。
今日、地方創生が掲げる『ひと・まち・しごと』においても〝ビジネスになる花と緑〟は、有益な観光資源のツールとして魅力的です。
「福岡と言えば〝花〟」という認識を広く持ってもらうためには、行政として、市民や民間企業に寄り添っている一方、民間企業も自分事として自ら企画・提案して共創していくことが求められます。
そして、市民もいろいろ関わっていく中で自分たちのまちに誇りを持っていく仕組みづくりが大切です。
現状、受け身になりがちな業界体質をはじめ、作ることを目的化した〝引渡し〟という発想が根本にあり、さらに≪作って・運営して・管理する≫という活動自体も、連携せずバラバラになっているという現状があります。
このような状況を越境して、みんなで共創していくことが何より大事であり、花と同様に丹念に育んでいくことが今後、重要になっていくと考えます。
ソーシャルグリーンデザイン協会の神木直哉理事
FFSが〝花のMICE〟として花開くための土壌づくりとタネまき
〝花のまち〟福岡に向けて今後、フクオカフラワーショー(FFS)が、〝花〟をテーマにしたMICE(ビジネスミーティング)として、ヒト・カネ・ビジネスを呼び込む契機になれば、面白い展開も想定される。
福岡市都心から南西方面へ約3キロ、福岡市植物園をはじめ南公園のある小高い丘陵地一帯は江戸時代、大休山と呼ばれていた。
そして、貝原益軒は、著書『筑前国続風土記』において、大休山からの眺めを京都の天橋立や広島の厳島などにも勝る絶景と称賛している。
福岡市植物園は今後、リニューアル工事が計画されている。
そうした中、福岡市植物園が従来の植物園の枠を超えて、〝福岡の森〟という段階へアップグレードが実現できれば、新たな可能性も秘めてくる。
すなわち、観光をはじめグルメやアート、音楽、教育などとの掛け合わせができ、福岡の森×観光、福岡の森×グルメ、福岡の森×アート、福岡の森×音楽、福岡の森×学びなどの〝掛け算〟の中から新たな付加価値や魅力を創出していくことも可能だ。
一方、福岡市植物園ヘの交通アクセスについては今後、検討課題になってくる。
かつてロープウェー導入を検討した経緯のある福岡市では、モノレールとロープウェーの〝いいところ取り〟である『スカイレール』を植物園への交通アクセスとして検討すべきではないだろうか。
スカイレール自体は、広島市内での世界唯一の運航を2024年4月に終えたものの、車両や運賃システムの開発などに携わったのは西鉄OBの技術者であり、福岡の新交通システムとして復活を検討することの意味はあると考える。
今後、FFSが〝花のMICE〟としてヒト・カネ・ビジネスを呼び込んでいくためにも花の栽培と同様に土壌づくりと将来へのタネまきが重要だと考える。
参照サイト
花の祭典~Fukuoka Flower Show Pre-Event~いよいよ開催!
https://www.city.fukuoka.lg.jp/shisei/mayor/interviews/documents/kaiken2_250122_FukuokaFlowerShowPre-Event.pdf
市場取扱高3605億円~2023年市場協会花き流通調査
https://mpsjapan-blog.jugem.jp/?eid=6178#gsc.tab=0
「一人一花」運動始動!~花と緑があふれ、豊かな心が育まれるまちへ~
https://www.city.fukuoka.lg.jp/jutaku-toshi/ryokkasuishin/shisei/hitorihitohana.html
一人一花スプリングフェスについて
https://hitori-hitohana.city.fukuoka.lg.jp/hana-shirube/about/
農林水産省『花きの現状について』(2024年11月)
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kaki/flower/attach/pdf/index-102.pdf
都市政策研究 第12号 】2011 年 9 月 花の美しい演出の形態に関する研究 ― 福岡市の都心部における花の演出の提案 ―
https://urc.or.jp/wp-content/uploads/2014/03/20110930_ups12_07_fujiwara.pdf
福岡県:県の農業
https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/gaiyou-sangyou.html
福岡市よくある質問Q&A 質問福岡市植物園について知りたい。
https://www.city.fukuoka.lg.jp/jutaku-toshi/shokubutsuen/qa/FAQ2905.html
花卉園芸新聞
http://kakiengei.jp/guidance/shinbun.jsp/