西遊記に登場する三蔵法師玄奘がインドから持ち帰った般若心経の原典とは?【般若心経】
玄奘三蔵が持ち帰って漢訳
般若心経は、唐代の僧、三蔵法師玄奘(さんぞうほうしげんじょう)がインドから原典を持ち帰って漢訳(中国語に訳すこと)しました。玄奘は、明代の小説『西遊記』に登場するので、ご存じの方も多いでしょう。『西遊記』はフィクションを交えた小説ですが、玄奘は実在の人物です。三蔵法師とは、3種に大別される仏典(経蔵・律蔵・論蔵)のすべてに精通した僧侶のことで、転じて訳経僧(お経を訳す僧)をも指すようになりました。
三蔵法師とは、その役目を果たす僧の尊称で、人の名前ではありません。しかし、最も有名なのが玄奘なので、日本では三蔵法師といえば玄奘を指すことが多くなっています。
河南省落陽に生まれた玄奘は、インドで仏教を学びたいと願い、西暦627年、国禁を破って旅に出ます。命をかけて砂漠を渡り、インドに到達して仏道をきわめます。18年後、膨大な仏典を持って帰国。残りの人生は、寝る間も惜(お)しんでの仏典の翻訳と学僧への講義に費やしました。
玄奘の持ち帰った経典のなかでも、とくに重要だったのが600巻に及ぶ「大(だい)般若経」でした、名前のとおり、般若波羅蜜多の大切さと功徳(くどく)を説いた経典で、その前にあったおびただしい量の般若経典群をまとめたものです。
般若心経は、大般若経には含まれていませんが、その多くの部分が大般若経から抜粋されています。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 般若心経』
著:宮坂宥洪 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
真言宗の僧、仏教学者。1950年、長野県岡谷市生まれ。高野山大学仏教学科卒。名古屋大学大学院在学中、文部省国際交流制度でインド・プネー大学に留学し、哲学博士の学位取得。岡谷市の真言宗智山派照光寺住職。