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【レビュー】『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』 ─ 作戦で戦う『三体』『シン・ゴジラ』的スリル、家族の絆の普遍性

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ここ数年のアメコミ映画はヒーローのオリジンを割愛するのが主流だ。『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(2022)『スーパーマン』(2025)もそうで、過去に何度も映像化された有名キャラクターだからこそ、冒頭で「活動X年目」と示してからすぐに活躍を描く。

(MCU)『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』も全く同様だ。本作でファンタスティック・フォーは宇宙探索中にスーパーパワーを授かってから4年目という設定。この有名ヒーローチームは(いずれも鑑賞率が高いとは言えないながらも)2000年以降3度映画化されていることもあり、今回はオリジンを飛ばして勢いよく開幕する。ちなみに、これまでのマーベル作品とは別世界の話なので、予習は本当に全く何も要らない。

監督はドラマ「ワンダヴィジョン」(2021)のマット・シャックマン。同シリーズはシットコムの劇中劇風に描かれ、作中の視聴者と現実の視聴者を混合させるトリックで毎週ファンを巻き込んだ。一方、ファンタスティック・フォーは彼らの世界で有名セレブヒーローという特徴があり、シャックマンが「ワンダヴィジョン」で培った劇場型ストーリーテリングが臨場感たっぷりに機能する。ファンタスティック・フォーに憧れて応援する市井の人々の視点に、観客はあっという間に同化できるようになっている。

© 2025 20th Century Studios / © and ™ 2025 MARVEL.

© 2025 20th Century Studios / © and 2025 MARVEL.

いわば、“街の人々”がひとつの登場人物として一定の立場や力を持っている。群衆の存在はヒーローにとって苦痛ともなう活動の動機となりうるが、彼らは気まぐれで、何かをきっかけに批判側に転じうる。これはサム・ライミの『スパイダーマン』シリーズでよく取り入れられた描写だが、現代ではヒーローの規模や舞台が国際的・宇宙的に広がるにつれ、この要素は徐々に希薄になっていった。DC『スーパーマン』がこのスタイルを再解釈した一方で、後攻『ファンタスティック4』も同様のアプローチになっているのが興味深い。

映画の冒頭で、観客はチームの成り立ちや活躍ぶりを素早く確認しながら、彼らの人生にとって劇的な転期に立ち会うことになる。その頃にはもう彼らの単独映画をすでに1〜2本観たことがあるような親近感を錯覚するから不思議だ。この映画の立ち上がりは、ペドロ・パスカル、ヴァネッサ・カービー、エボン・モス=バクラック、ジョセフ・クインの、それぞれにカリスマ性があって親密な演技に大いに支えられている。

© 2025 20th Century Studios / © and ™ 2025 MARVEL.

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そんな彼らの元に、惑星を喰らう捕食者ギャラクタスとその使者シルバーサーファーが襲来。ギャラクタスはコミックに忠実な姿で初めて実写化されると、荒唐無稽な設定と姿ながらも、その巨大すぎる存在感に圧倒される。女性版として描かれるシルバーサーファーは気高く独特の魅力があり、スクリーン上で文字通り輝いている。家族チームの温かさと、冷たい宇宙との対比によって、映画に力強い推進力が働いている。

クライマックスにかけての展開は怒涛で、まるで小説『三体』と『シン・ゴジラ』のエッセンスを素早く凝縮してまとめたようなスリルとロマンがある。IMAXの巨大スクリーンでギャラクタスを見上げれば、思わず口がアングリだ。我々の知る世界のと違い、基本的に生身であるファンタスティック・フォーにとって極めて危険度の高い戦いに息を呑む。今年公開された他のマーベル映画と異なり、本作では作戦と戦略を持って強大な敵に対処しようというゲーム性もある。『ゴジラ』実写ドラマシリーズも手がけているシャックマンによる怪獣映画的アプローチは迫力満点だ。

(c) 2025 20th Century Studios / (C) and TM 2025 MARVEL.

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1960年代のレトロフューチャーな世界観(思わずグッズが欲しくなる!)や、宇宙や惑星にも飛び出すコズミック・アクション、怪獣映画のような迫力と、本作にはファンタスティックな魅力がいくつもあるが、一貫して強調されるのは「家族の絆」、そして「母の強さ」。人間の子であれば誰にでも響く強力な普遍性がある。

とりわけスー・ストーム役のヴァネッサ・カービーの芯の通った演技が素晴らしく、映画を観終える頃には彼女が女神のように感じられる。もちろん、リード・リチャーズにジョニー・ストーム、ベン・グリム、そして相棒ロボットのハービーも、我々ファンにとって共通の「家族ぐるみの仲」のような存在になるはずだ。

© 2025 20th Century Studios / © and ™ 2025 MARVEL.

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そんな愛すべき友人家族が次に登場するのは2026年12月18日に日米同時公開の『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』。ソニー・ピクチャーズ『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』を除けば、本作はクロスオーバーまで最後のマーベル・スタジオ映画だ。作中に『ドゥームズデイ』にもつながるシーンがある?それは観てからのお楽しみ。今回も最後まで楽しんで。

『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』は2025年7月25日、日米同時公開。

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