消えゆく街の本屋 進むデジタル化が背景に
京急弘明寺駅のそばの「大林堂書店」が今夏、創業49年の歴史に幕を閉じた。
「『いらっしゃい』より『おかえり』と言う方が多かった」と話すのは店主の佐藤ゆかりさん(63)。長年地元で愛されてきた店の閉店には、デジタル化による活字離れが影響している。
9月17日に文化庁が発表した2023年度「国語に関する世論調査」によると、1カ月に何冊の本を読むかという問いに対し、62・6%の人が「読まない」と答えた。この中には電子書籍が含まれており、紙の本を読む人の数はさらに少なくなる。
大多数がスマホを持ち、漫画や雑誌は電子書籍で気軽に読むように。旅行先に時刻表やガイドブックを持参することもなくなった。本屋に行く機会は減少する一方だ。
30年前、661だった神奈川県書店商業組合の組合員数は24年には125に減少した(6月現在)。全ての書店が加盟している訳ではないが、この30年でいわゆる「街の本屋」が県内で500軒以上閉店している。
コンビニエンスストアでの書籍の販売や大型書店の台頭も要因の一つ。同組合事務局の天野潔さんは「本を売って書店に入る利益は約2割。その中で手数料が発生する電子決済の導入など、時代の変化についていけずに閉店した店も多い」と話す。
大林堂書店の佐藤さんも「心意気だけでは難しくなってしまって」と昨年閉店を決めた。
創業者である父が亡くなった約40年前から店に立つ。文庫1冊でも読みたいとの声を聞いたら出版社から取り寄せた。
「会話のできる店にしたい」という父の思いを受け継ぎ、客とともに歩んできた。中には書店や出版社に就職したり、作家の卵や小説家として活動する人も。そうした人たちをつなげたり、客が仲良くなり家族になっていく姿も見守ってきた。
佐藤さんは「突然閉店を知った方にはごめんなさい、元気でやっていますと伝えたいですね」と話した。