千葉県〈佐倉市立美術館〉にて、大ヒット作《この世界の片隅に》で知られる漫画家・こうの史代のデビューから現在まで、漫画家生活30周年の展覧会
広島市生まれのこうの史代は、1995年、「街角花だより」の連載で漫画家デビューし、インコとの日常を描く4コマ漫画「ぴっぴら帳(ノート)」で人気を博した。原爆の被害とその後に続く‟終わっていない”日々を真摯に紡いだ「夕凪の街 桜の国」では第9回手塚治虫文化賞新生賞、第8回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞し、本作は映画、ドラマ化もされた。その後広島の軍都・呉の戦災を描く『この世界の片隅に』は、戦前から戦後まで、個人の時間を奪う戦争の惨禍のすべてを、日常の低い視点から力強く描き、第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞、またアニメーション映画(片渕須直監督)がロングラン大ヒットを記録した。こうのにとっても集大成的な作品となった。
その他にもエッセイ漫画「平凡倶楽部」、ボールペンだけで忠実に古事記を漫画化した「ぼおるぺん古事記」、東日本大震災の翌年から描き継がれている「日の鳥」、漫符を素材にした画期的な漫画図鑑「ギガタウン 漫符図譜」、百人一首と遊んだ華麗なるカラー1コマ漫画「百一 hyakuich」など、ひとつとして似ていない作品を続々と発表。最新作「空色心経」では般若心経とコロナ禍の日々を2色の糸で撚り合わせるように重ね、時空を超えた世界と日常を結んでみせた。ブログ「こうのの日々」では「空色心経」の制作過程やインコTさんとの日常、日々のスケッチなどを公開している。
これまで、大ヒット作「夕凪の街 桜の国」「この世の片隅に」の原画展はこれまで数多く開催されてきたが、デビューから現在までを網羅した大規模な回顧展が、千葉県の佐倉市立美術館で開催される。500枚以上の漫画原画、挿絵原画、絵本原画、作品のコンテやメモ、さらにはブログ「こうのの日々」に登場するスケッチブック、制作風景を記録した初公開の映像など、こうの史代の画業のすべてがわかる展覧会である。
▲《この世界の片隅に》2007年 ©︎こうの史代/コアミックス
本展では、デビュー前の原稿、また高校生の頃に制作した漫画原画も展示される。そして展示は「読める」に工夫され、こうのが構成したストーリーを分断せず、制作しているその時の「漫画家の気持ち」を体感できるようになっている。そして、本館のみのこうの史代の「あとがき」展示スペースが最後に展示され、会場内には、こうのへのファンレターを書くコーナーが設けられ、特製ポストに投函できるようになっている。
▲制作風景 展示予定の動画より(撮影:白井茜)
こうのは、初期からアシスタントを起用せず、原稿をすべて一人で描いている。着彩も本人がてがけ、一部を除きスクリーントーンをほとんど使用していない。
『漫画家生活30周年 こうの史代展 鳥がとび、ウサギもはねて、花ゆれて、走ってこけて、長い道のり』
■会場:佐倉市立美術館(千葉県佐倉市新町210番地)
■会期:2025年8月2日(土)~10月2日(木) 10時~18時(最終入館は17時30分)
※月曜休館、但し、8月11日(月)・9月15日(月)は開館、8月12日(火)・9月16日(火)は休館
■お問い合わせ:043-465-7851
■アクセス 京成佐倉駅南口より徒歩8分、または、京成バス千葉イースト「JR佐倉駅」方面行きで「佐倉市立美術館」下車すぐ。
JR佐倉駅北口より徒歩20分、または、京成バス千葉イースト「京成佐倉駅」方面行きで「二番町」下車すぐ。
HP:https://www.city.sakura.lg.jp/section/museum/