3月1日から春の全国火災予防運動 リチウムイオン電池による火災にも注意を呼び掛け
3月1日から7日まで、春の全国火災予防運動が全国各地で実施される。住宅火災の発生件数は減少傾向にあるものの、2023年には火災による死者数が2014年以来9年ぶりに1000人を超え、依然として深刻な状況が続いている。これを受け、消防庁は同期間に山火事予防運動および車両火災予防運動を一体的に実施する。また、建築物防災推進協議会でも「建築物防災週間」として、建築物の防火・避難対策を中心に防災指導を行う。
乾燥による森林火災も多発、地震時の電気火災リスクも見直して
年末から年明けにかけて、全国各地で死傷者を伴う火災が相次いで発生している。また、冬季の乾燥により、2024年12月以降、鎮火までに時間を要する林野火災が複数発生している状況だ。加えて、阪神淡路大震災から30年を迎えた現在でも、大規模地震時には電気に起因する火災が多く発生している。これらの背景を踏まえ、地震時の電気火災リスクを低減するため、感震ブレーカーの普及推進が急務とされている。
消防庁は、春の火災予防運動において以下の重点推進項目を設定している。
・地震火災対策の推進
・住宅防火対策の推進
・林野火災予防対策の推進
また、推進項目として、防火対象物における防火安全対策の徹底、製品火災の発生防止、多数の人が集まる催事での火災予防指導などを掲げている。
さらに、建築物防災推進協議会は同期間を「建築物防災週間」と定め、建築物の防火・避難対策に関する防災指導を実施する。特に、住宅・建築物の耐震化促進や非構造部材の耐震診断、建築物密集地域での防災対策、小児の転落防止、エスカレーターの安全利用の周知、定期報告の徹底、防災査察の実施、所有者・管理者への広報活動など、総合的な安全対策を推進する。
身近な製品が火災の原因に!? リチウムイオン電池の火災リスク
近年、リチウムイオン電池が原因となる火災事故が急増している。リチウムイオン電池は、スマートフォン、ノートパソコン、モバイルバッテリー、電動アシスト自転車、電熱ウェア、充電式カイロなど、さまざまな製品に使用されており、生活に欠かせない存在となっている。しかし、熱や衝撃に弱いという性質があり、取り扱いを誤ると発煙・発火・過熱に伴う火災事故を引き起こす可能性がある。また、誤った廃棄により、ごみ収集車やごみ処理施設での火災が発生する事案も続いている。
このことから、春の火災予防運動ではリチウムイオン電池の廃棄に関する注意喚起も行っている。
電熱ベストなどの暖房製品での事故も増加
消費者庁の事故情報データバンクによれば、2014年4月から2024年9月までに「リチウムイオン電池を使用した暖房製品」での事故が68件報告されており、2020年度以降、事故件数は増加傾向にある。
特に電熱ベストや電熱ジャケットに関する事故が35件(51.5%)と最多であり、次いで電熱グローブが15件(22.1%)、電気ブランケット・電気毛布が7件(10.3%)となっている。
事故事例は以下の通り。
・電熱ベストを着用中にバッテリーが異常に熱くなり、脱いだところバッテリーが溶けていた
・ネット通販で購入した電熱インソールを使用中に突然発煙。靴と靴下が溶け、やけどを負い、救急搬送された
東京消防庁がまとめたリチウムイオン電池を搭載した製品からの出火要因を見ると、使用者の明らかな誤使用(分解、衝撃、充電方法誤り等)による火災のほかに、製品の欠陥により突然出火するケースもある。
また、廃棄物処理の過程における発熱・発火を原因とする、収集運搬車両や廃棄物処理施設の火災事故も急増しているという。
この背景を受け、東京都では「リチウムイオン電池 混ぜて捨てちゃダメ!」プロジェクトを立ち上げ、リチウムイオン電池使用製品を廃棄する際の注意喚起を促すためのポスターを作成している。
リチウムイオン電池を安全に使用するためには、以下の点を徹底することが推奨される。
・取扱説明書の確認:メーカーの指示に従い、正しい使い方を守る
・衝撃を避ける:強い衝撃や圧力を加えず、損傷がある場合は使用しない
・充電時の安全確認:充電中は目を離さず、異常を感じたらすぐに使用を中止する
・適切な充電器の使用:製品推奨の充電器を使い、改造品は使用しない
・保管場所の確認:高温多湿を避け、安全な場所で保管する
・リコール情報の確認:製品の安全性に問題がないか、購入前に確認する
また、リチウムイオン電池を含む製品は、分別し、ほかの廃棄物に混ぜないこと、許認可を受けた収集運搬業者・処分業者に委託することを呼び掛けている。
春の全国火災予防運動に関する総務省の資料は同省ホームページで確認できる。
また、東京都の「リチウムイオン電池 混ぜて捨てちゃダメ!」プロジェクトは東京都の公式サイトで確認できる。