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「生き生きとした表情」をとらえ、保護犬のイメージアップに尽力する写真家・犬丸美絵さん

いぬのきもちWEB

写真家・犬丸美絵さん。取材当日、約3年ぶりに神奈川県動物愛護センターを訪問。収容犬のキヨちゃん(推定3才)は、職員さんにしかなつかないのに、犬丸さんは10分で仲よしに

ここでは、犬と、犬を取り巻く社会がもっと幸せで素敵なものになるように活動している方々をレポートします。今回は、『いぬのきもち』本誌でもおなじみ、保護犬ほか数多くの犬たちの写真を撮影する犬丸美絵さん。現在の活動の起点となった神奈川県動物愛護センターとのかかわりを紹介します。

初めて訪れた行政のセンター。そこで見たものとは


写真家・犬丸美絵さん。取材当日、約3年ぶりに神奈川県動物愛護センターを訪問。収容犬のキヨちゃん(推定3才)は、職員さんにしかなつかないのに、犬丸さんは10分で仲よしに


神奈川県動物愛護センター(以下センター)に到着すると、後部座席に大型犬を乗せた一台の車が停まっていたそうです。その犬は飼い主さんとのドライブがうれしかったのか、笑顔でしっぽを振っていました。犬丸さんは『まさかこのコを捨てに来たわけじゃないよね……』と思いながら、センターでの撮影に向かいました。

まず、保護犬が収容されている犬舎に行ってみると、そこにはきちんと世話をされて元気いっぱいに過ごす犬たちの姿がありました。

「職員さんはみんな愛情をもって収容犬に接していて、すぐにセンターへの負のイメージが変わりました。そもそも神奈川県のセンターは2013年に全国でもいち早く『殺処分ゼロ』を達成していたんですね」

2017年に撮影した、犬丸さんの靴ひもで遊ぶ愛らしい子犬の写真。センターとは思えない明るい雰囲気に(犬丸さん撮影)


最後に、収容されたばかりの犬などが入る個室房を訪れたとき、犬丸さんは駐車場で出会った大型犬がいるのを目にしました。

「その犬から笑顔は消え、檻おりの中で絶望した表情で座っていました。私は言葉を失い、『今後、センターに通ってこのコが幸せになるまでを追ってみよう、そして、ほかの保護犬たちも撮り続けて写真を表に出してあげよう』と心に決めたんです」

初めてセンターを訪れたときに出会った大型犬。写真は収容された直後の表情(犬丸さん撮影)
保護団体に引き取られ1年半後に新しい家族に譲渡されたとき(犬丸さん撮影)


犬丸さんは収容犬たちを撮るときは、明るい生き生きとした表情をとらえることを信条としています。それは「収容犬たちは、たまたまここにいるだけで、普通の家庭犬と何ら変わらない豊かな感情をもっているから。暗いイメージとして伝えたくなかった」と語ります。

取材当日、センター内のふれあいコーナーで収容犬のエリちゃん(推定6才)を、犬目線の姿勢で撮影する犬丸さん


こうして約3年間、センターの犬たちを撮影しつづけ、2022年には写真集『REMEMBER YOU』を発行。センターへの寄贈もしました。

コロナ禍もありしばらくセンターに足を運ぶことができなかった犬丸さんですが、取材当日、約3年ぶりに訪問。冷暖房が完備された個室に充分な運動ができる広いドッグランなどを備えた新しいセンターは2019年に完成しました。

犬丸さんは、「素晴らしい施設になってもちろんうれしく思います。でも、犬たちの本当の幸せはセンターの中にはないということを忘れてはいけません。新しい家族に迎えられることこそが最終的な幸せなんです」と力説。

センターの写真集。版元のドキュメンタリー最優秀賞を受賞。センターでは不定期で、犬丸さんの作品が飾られています


センターの課長を務める廣井惠津子さんは、「犬丸さんが何年も通ってセンターの写真を撮り続けてくれたことが、動物愛護の普及啓発の大きな助けとなりました。また、過去に何万頭もの犬が殺処分されていた旧センターの悲しい記憶を絶対に忘れないためにも、殺処分機などの写真を記録してもらったことが本当によかったと思っています」と語ってくれました。

出典/「いぬのきもち」2024年4月号『犬のために何ができるのだろうか』
写真/田尻光久
写真提供/犬丸美絵
取材・文/袴 もな
※保護犬の情報は2024年4月5日現在のものです。

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