牛乳嫌いの子どもに栄養たっぷりの牛乳を飲ませる方法とは!?【小児科医ママが教えたい 体・脳・心を育てる!子どもの食事】
栄養バランス◎の牛乳でみるみる元気に
飲ませるコア満点・カルシウム豊富な牛乳
牛乳にはカルシウムをはじめ、たんぱく質、ビタミンA、ビタミンB2などが豊富に含まれています。さらに、たんぱく質を構成する必須アミノ酸が全部含まれている。とても栄養バランスのいい食品なのです。
日本人のカルシウム不足が叫ばれていますが、小学校に通う年齢の子どもにとっては給食の牛乳が貴重なカルシウム摂取の機会となっています。
ひと口に牛乳といっても、じつはいろいろな種類があるのをご存知でしょうか。ほとんどが以下の6種類に分類されています。
おもな牛乳の種類
●成分無調整牛乳(牛乳):生乳を殺菌し、そのまま詰めた牛乳。乳脂肪分が3.0%以上
●成分調整牛乳:生乳から乳成分(脂肪・ミネラル・水分など)の一部を除いたもの。乳脂肪分1.5%以上
●低脂肪牛乳:成分調整牛乳のうち、生乳から乳脂肪分のみを除去し、乳脂肪分を0.5~1.5%にしたもの
●無脂肪牛乳:成分調整牛乳のうち、生乳から乳脂肪分を除去し、乳脂肪分を0.5%未満に調整したもの
●加工乳:生乳や牛乳に乳製品(脱脂粉乳・バター・クリームなど)のみを加えて、濃厚タイプや低脂肪タイプにしたもの
●乳飲料:生乳や乳製品を主原料に、乳製品以外(ビタミン・果汁・カルシウム・コーヒーなど)を加えたもの
こんなにも種類があると、どれを選べばよいのか迷いますよね。じつは脂質の量は異なりますが、それ以外の栄養成分はさほど変わらず、カルシウムやたんぱく質のよわい供給源。乳そのものの味を求めるのであれば成分無調整牛乳、そのコクや甘味が苦手な子や脂質が気になる場合は低脂肪牛乳、鉄やビタミンDなどを添加してあるものを求めるのであれば乳飲料がよいでしょう。
アミノ酸スコアって?
食品の中に含まれる、体の中でつくることができない必須アミノ酸のバランスを評価したもので、100に近いほど良質なたんぱく質を含んだ食品ということになります。
牛乳を飲みすぎると鉄欠乏になることも!
牛乳はたんぱく質・カルシウムの供給源としてすばらしい飲み物ですが、飲みすぎてしまうと鉄欠乏になることがあります。理由のひとつとしては、鉄の吸収を妨げる場合があることや、鉄欠乏により消化管粘膜に障害が生じ、消化管からの出血により鉄久が悪化することなどが挙げられます。
さらに*¹⁴カナダで約1300人の未就学児を対象にした研究によると、牛乳を飲めば飲むほどフェリチンという貯蔵鉄の数値が低くなったという報告がありました。では、1日にどれくらい牛乳を飲めばよいのでしょうか。
子どもの日々の食事にもよりますが、日本人の栄養摂取基準に基づくと、小学生であれば、1日500mLくらいの牛乳を飲むのがよいでしょう。つまり給食で牛乳を1パック飲んだら、おうちで飲むのはコップ1杯くらい。給食がない日や休日はコップ2杯を目安にするとよいでしょう。
おなかのゴロゴロは解消できるかも
毎日飲みたい牛乳ですが、おなかがゴロゴロするから苦手という子どもも多いですよね。牛乳でおなかが張ったりおなかを壊したりする場合、乳糖不耐症の可能性があります。
乳糖不耐症は牛乳や乳製品に含まれる乳糖を消化できない状態のことで、大人にもよく見られます。ただし、このような症状が出ても必ず乳糖不耐症というわけではなく、思いこみによっておなかがゴロゴロする感覚をもつというケースも少なくありません。*¹⁵ある研究で「私は乳糖不耐である」との自覚がある人に、乳製品だとわからない状態で乳製品を与えたところ、なんの症状も出ずに牛乳コップ1~2杯分程度摂取できたとの報告があります。
*¹⁶また近年の研究では、乳糖を含む製品を毎日少しずつ摂り続けることで、乳糖不耐の症状が出にくくなるという報告が増えています。「おなかがゴロゴロするから牛乳は飲まない」のではなく、アレルギーなどがない場合は少しでもいいから飲み続けてみることを、選択肢のひとつとして考えてみてはいかがでしょうか。
また、一気に牛乳コップ1杯飲まずに、2~3回に分けて飲むようにしてもゴロゴ口症状が出にくくなりますし、牛乳よりもヨーグルトやチーズのほうが乳糖不耐症の症状が出にくいという報告もあるので、おなかがゴロゴロするからと牛乳や乳製品はあきらめなくても大丈夫かもしれませんよ。
牛乳を飲むと背が伸びるって、本当?
答えは○でもあり△でもあるといえます。体を構成するのに必要なアミノ酸をバランスよく含み、カルシウムも摂れる牛乳は、背を伸ばすために必要な栄養を摂取できる食品です。しかし、飲むほどに背が伸びるという根拠は今のところなく、むしろ牛乳を飲みすぎることで、他に必要な栄養を含んだ食事をとれなくなるおそれも。そうなると栄養バランスが崩れることにもつながるため、背を伸ばしたいからとがむしゃらに牛乳ばかりを飲むのは控えたいところです。
麦芽飲料やココアで栄養価アップ
アレルギーではないけれど、牛乳の味自体が苦手だという子どもには、左ページのような方法もあります。子どもの好みに応じて、試してみてはいかがでしょうか。
牛乳にかぎらず、食べ物や飲み物は「全体の栄養バランス」と「どこに比重を置くか」を考えることがとても大事です。ほかの食べ物に比べて、牛乳はさまざまな栄養素を手軽に摂れる食品のひとつといえます。まったく飲めないよりは、少し味をつけてでも飲めるようにして、栄養価を上げて飲んだほうがメリットがあると考えることもできます。
乳糖が苦手な子ども向けの食品も
乳糖不耐症の症状が見られるなら、乳糖を除いたり酵素で分解したりした食品を試すのも選択肢のひとつです。赤ちゃんであれば無乳糖の粉ミルク、乳糖分解牛乳など、おなかにやさしく栄養素もきちんと摂取できます。
牛乳が苦手な子どものためのアイデア5
1 温めてゆっくり飲む
牛乳を温めると腸の動きが活発になり、ラクターゼ(乳糖分解酵素)の働きもよくなります。冷たい牛乳だとおなかがゴロゴロするという場合や寒い時期には、ホットミルクにして飲むのもよいでしょう。
2 麦芽飲料をプラス
麦芽飲料には、ビタミンD、鉄などが含まれているものもあります。飲みすぎには注意したいところですが、甘味が気になるからと子どもから遠ざけてしまうのは、もったいないかもしれません。
3 ココアにする
ココアには、鉄、亜鉛、銅、食物繊維が含まれています。温めた牛乳に糖類が足されていない純ココアを加えることで飲みやすくなります。
4 ほかの乳製品を摂る
ヨーグルトやチーズなど、牛乳以外の乳製品のほうがゴロゴロ症状が出にくい場合もあります。牛乳が苦手なら、無糖ヨーグルトなどの乳製品を試してみるのもよいでしょう。
5 小分けにする・毎日飲む
牛乳を少しずつ数回に分けて飲んだり、少しずつでも毎日飲み続けたりすることで、おなかがゴロゴロしにくくなる場合も。
*¹⁴Maguire JL et al.(2013)『The relationship between cow’s milk and stores of vitamin D and iron in early childhood』
*¹⁵Suarez FL et al. (1995)『A comparison of symptoms after the consumption of milk or lactose-hydrolyzed milk by people with self-reported severe lactose intolerance』 N Engl J Med. Suarez FL et al. (1997)『Tolerance to the daily ingestion of two cups of milk by individuals claiming lactose intolerance』 Am J Clin Nutr.
*¹⁶善方裕美(2022) 191の 疑問に答える周産期の栄養『産科編Q&A妊娠前Question12 乳製品が苦手です。代わりにカルシウムは何から摂ったらよいですか?』周産期医学Vol.52 No.13
【出典】『小児科医ママが教えたい 体・脳・心を育てる!子どもの食事』著:工藤紀子