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一人遊びが好きだと思っていたら…4歳自閉症息子、「友達が遊んでくれない」と涙。変化してきた友達付き合い

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一人遊びが好きだと思っていたら…4歳自閉症息子、「友達が遊んでくれない」と涙。変化してきた友達付き合い

監修:室伏佑香

東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程

2歳 友達から逃げる、一人で遊びたがる。いつになったら友達に興味を持つのだろう?

わが家の息子・たーちゃんは、2歳半の時に知的障害(知的発達症)のないASD(自閉スペクトラム症)と診断されました。2歳頃は一人遊びや私と遊ぶことが好きで、友達への興味は薄いように見えました。むしろ、公園や児童館などでほかのお子さんがいると離れたところで遊びたがり、私がずっと付きっきりだったことを覚えています。

同じくらいの年のお子さん同士で遊んでいる姿を見ると、「いいなぁ」と羨ましく思ったり、「どうしてたーちゃんは友達と遊ばないのだろう」と疑問に思ったりすることもありました。

たーちゃんは赤ちゃんの頃から人見知りがかなり強かったので、同年代のお友達に対しても、緊張してしまうのかな、と思いました。なので、「一緒に遊んでみたら?」と声かけはしましたが、無理に友達と遊ばせようとはしませんでした。

また、お兄さんお姉さんが公園にいるさまざまな年齢の子を誘って「おにごっこをしよう」「かけっこをしよう」と声をかけていても、たーちゃんは無視して一人で遊んでいることが多かったです。

ほかのお子さんが仲間に加わって楽しそうに遊んでいるのを横目に、「いつになったら友達と遊んでくれるのかな?」とかすかに不安に思っていました。

3歳 まだ平行遊び?マイペースな息子に、少し不安……

年少の頃は幼稚園にも少しずつ慣れてきて、一人で遊ぶか、たまに特定の子2~3人と遊んでいるようでした。友達とのやりとりも増えてきたかな?と思う反面、やはり、友達への興味はほかのお子さんと比べて薄いように思え、少し心配でした。よく公園で会う友達には少しずつ心を開いていったのか、近くで同じ遊びをしている、いわゆる平行遊びをする様子も見られるようになってきました。

また、ペダルのないトレーニングバイク(キックバイク)に乗ることが好きだった頃は、同じようなバイクに乗った友達と一緒に公園内を走って遊ぶ姿も見られました。しかし、ひととおり遊んだ後、友達がみんな別の遊びに移行しても、たーちゃんはまだ一人でバイクに乗って遊び続けていたのです。

それを見て、たまたま同じ遊びがしたい時が重なれば一緒に遊べるのかな、これも平行遊びなのかな、たーちゃんは友達と遊ぶよりも一人でマイペースに遊ぶことが好きなのだろうな、と思っていました。

4歳 息子が初めてぶつかった、友達付き合いの壁

年中になってから、たーちゃんが登園前にぐずることが多くなりました。理由を聞いてみると、「友達が遊んでくれない」と言うのです。

友達が遊んでくれないという事実が悲しくもありましたが、たーちゃんにも「友達と遊びたい」という気持ちがあるのだと初めて知り、驚いてしまいました。

よくよく話を聞いてみると、新しい組で仲が良いお友達はMくん一人だけ。Mくんがほかの子と遊んだり、別の遊びをしていたりすると一緒に遊べないから嫌だということでした。

「Mくんと遊べない時、たーちゃんは何してるの?」
と質問すると、
「一人で遊んでる」
とたーちゃんは答えました。

私はてっきり、たーちゃんは一人で遊ぶことが好きで、自分から一人で遊ぶことを選んでいるのだと思っていましたから、頭をガツンと殴られたような衝撃を受けました。

自分の気持ちを表すことが苦手なたーちゃん。お友達を遊びに誘うことも、すごく勇気がいるのだと思います。

長い間一人遊びが多かったたーちゃんにとって、友達付き合いはこれからじっくり学んでいくものなのだな、と感じました。ほかのお子さんたちが2歳、3歳で学んでいくようなことを、1年遅れ、2年遅れで気づき、それでも、どうにかしたいと葛藤する気持ちはほかのお子さんと変わらないのだな、と……。

情緒面での成長がゆっくりな分、幼稚園の担任の先生、市の心理士さん、発達外来の先生、そしてもちろん私と夫と連携して、たーちゃんの友達付き合いのサポートをしていきたいと思っています。

幼稚園以外の友達の存在。その大切さに気がつく

そして、今現在もまだ幼稚園ではMくんにべったりですが、たーちゃんにはもう一人大事な友達がいるのです。私自身の友人の子どもであるPくんは、赤ちゃんの頃からよく泊まりがけで一緒に遊ぶ友達です。

どんな子なのかお互いによく知っているPくんの存在は、たーちゃんにとってはとても大きいようで、Pくんとビデオ通話をしたい、おうちにPくんを呼びたい、Pくんと遊びたい……と最近よくねだるようになりました。

環境の変化に敏感なたーちゃんにとって、幼稚園以外の友達付き合いは心の安定に繋がるのではないかな、と思いました。たーちゃんが、MくんやPくん、そしてこれから出会う友達と温かな友情を育んでいけるように、ゆっくり見守っていきたいです。

執筆/みかみかん

(監修:室伏先生より)
みかみかんさん、たーちゃんのお友達との関わりについて詳しく共有してくださり、ありがとうございました。
たーちゃん、2歳頃にはお友達との関わりが少なくてご家族とのコミュニケーションが主体だったけれど、3歳、4歳と年齢を経るにつれて、お友達への関心が強くなり、一緒に遊びたいという気持ちがどんどん強くなったのですね。このような発達過程をもつお子さんは少なくないと思います。ASD(自閉スペクトラム症)は、周りの人への興味関心が薄いということが特徴の一つに挙げられますが、これは全てのASD(自閉スペクトラム症)の方にみられるわけではなく(興味関心がとても強く、見知らぬ人にも抱きついたりと、むしろ距離が近すぎるというお子さんもいらっしゃいます)、また発達段階によっても変わってきます。お友達への関心が薄いと感じられて、とても心配されている親御さんもいらっしゃると思います。このようなお子さんへの療育の基本は、無理にお友達の輪の中に入れようとするのではなく、安心できる家族や支援者との遊びを通して、コミュニケーションが楽しいということを感じてもらうことです。言葉が発達してくる前の段階では、言葉でのやりとりは難しいこともありますので、追いかけっこやかくれんぼ、キャッチボールなど相手を意識できる遊びや、たかいたかいやくすぐり遊びなどのふれあい遊びなどが有効なコミュニケーションの一つとされています。ご本人が楽しめることを見つけられるとよいですね。また、ひとり遊びをしている時に、お子さんの視野の中に入る場所で、お子さんに話しかけることも人への興味を引き出すことにつながります。何を話しかけたらいいか分からない時には、擬態語を交えながら、お子さんがしていることを実況中継してあげるのもよいでしょう(例:「◯◯くん、電車を走らせてるんだねー!ガタンゴトン!はやいねー!」)。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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