「人生ってどの時代もしんどい。だから…」監督に聞いた!映画『九十歳。何がめでたい』の見どころ
シリーズ累計175万部のベストセラーエッセイ『九十歳。何がめでたい』(Ⓒ佐藤愛子/小学館)。
90歳を迎えた作家自身の、日々の暮らしと世の中への怒り、戸惑いを独特なユーモアでつづった作品です。
その実写映画が、6月21日(金)に公開されます。
実在の主人公・作家の佐藤愛子を演じるのは、昨年の10月に“90歳”を迎えた、草苗光子さん。
あるシーンに、HBC大竹彩加アナウンサーも出演しています。
撮影後、前田哲監督が映画に込めた想いや、主演・草笛さんの魅力を、大竹アナが聞きました。
【この記事の内容】
・監督から見た、草笛さんの魅力
・「一声で物事が好転することがある」
・「監督なのに最初に笑ってしまう」ほどのシーンも
・「人生ってどの時代もしんどいことがある。だから…」
・「映画を育てていただくのは観客」
・ストーリー、キャストなど
【一足先に観て感じた、映画の魅力3選:90歳の孤独…それでも。ベストセラーエッセイ『九十歳。何がめでたい』映画化!魅力3選】
90歳の草笛さん、生命力あふれる理由
大竹アナ:草笛さんはほんとにお茶目な方ですね。
前田監督:チャーミングな方ですよね。それが作為的ではないんですよ、自然な感じでね。そこがエンターテイナーでもあるし、天然でもあるし、素敵な人だと思います。
大竹アナ:撮影の合間にも、監督と草笛さんが指切りをされていましたよね?
前田監督:(セリフや演出上の)約束をすぐ破るんで(指切りをした)。自由な人なんですよ。自分勝手なのではなく、自由な人なので。
感じたまま、今、瞬間瞬間を生きている人なんですよね。だからあんなに生命力があふれていて、みんなが力をもらえる。エネルギーを発していると思うんですよね。
大竹アナ:監督と草笛さんの絆がすごく強いと感じたんですけど、監督にとって草笛さんはどんな存在ですか?
前田監督: 銀幕のスターであり、非常にリスペクトする人生の大先輩。すごく尊敬もしていますし、大好きなんですけど、なかなかそう思うと強いことを言えない。映画をよくするために、そういう自分の内に秘めているものは打ち切って、いち女優といち監督として向き合おうと頑張っております。
大竹アナ:元旦に草笛さんの自宅を訪れていると伺いましたが…
前田監督:1月1日に必ず呼んでいただいて、おせち料理を食べるというのが毎年の繰り返しになっています。100歳まで続けばいいんですけど。
一声で物事が好転することがある
大竹アナ:映画『九十歳。何がめでたい』は、どんな作品でしょうか。
前田監督:一言で言うと、観た人がみんな元気になれると思うんです。
90歳の草笛光子さんが実際に90歳の役を演じるわけですから、もうそれだけで僕は奇跡かなと思っていて。毎日奇跡が起こるんじゃないかなと、実際起こっているんですけども。
いろいろなドラマがあるんですけど、草笛さんがスクリーンにいるということが、全て元気、エネルギー、太陽のような人なので、そういうものを感じさせてくれる。
前田監督:今、社会的にいろいろなことが起こっているじゃないですか。そこで下を向いているのではなくて、もう少し何か人にアクションすることで、何か人に一声かけることで、物事が好転していくことってあると思うんです。
そういう映画になるんじゃないかなと思っています。
ぼく自身が、とあるバスに乗ったときに、運転手さんが「いってらっしゃい!」と停留所ごとにおっしゃっていたんです。
月曜日で、雨が降っていて、ちょっと重い空気だったのが、だんだん明るくなっていくんですね。
そして小学生が「いってきまーす!」って言ったんですよね。そうすると、そこでパアーッと、みんな明るくなって。
月曜日で、これから仕事が始まるなというちょっと暗い雰囲気が、明るくなって。僕も現場に行ったら「おはよー」と明るい声で挨拶ができたんですよね。そうすると言われた方も明るくなるじゃないですか。
そういうことで社会全体がみんな明るくなっていけるような、そういう映画にしたい。
映画を観た人が誰かに優しい言葉とか、明るい言葉をかけて、その人がちょっとでも幸せな気持ちになれる、そしてその人がまた違う人に言う…
そう広がっていくような映画になってくれればいいなと思っています。
「監督なのに最初に笑ってしまう」ほどのシーンも
大竹アナ:撮影自体もわきあいあいとした雰囲気で、すごくびっくりしました。映画の撮影に携わらせていただいたのは初めてだったので、もっとピリピリしているのかと思っていました。
前田監督:映画作り自体は楽しいものです。そして草笛光子さんという存在が、そういう影響をさせていると思いますよ。
「私帰る」とか「私怒ってるの」とか言いながらも、先ほど言われたようにチャーミングな方なので、みんなを幸せにするオーラを持っているんじゃないでしょうか。
大竹アナ:撮影中で印象に残っていることはありますか?
前田監督:印象に残っていることは、唐沢さんと草笛さんのかけ合いのシーン。
そこが面白すぎて、ぼくは監督なのに、ぼくが最初に笑ってしまうという現象がたびたびありました。
大竹アナ:えー!気になりますね。
前田監督:気にしてください(笑)
若い世代でも楽しめる?
大竹アナ:「九十歳」がテーマになっていると思うんですが、若い世代でも楽しめますか?
前田監督:おもしろいと思います。
「九十歳」と言っていますけど、人生ってどの時代もしんどいことがあると思うんです。小学生は小学生で、中学生は中学生、高校生は高校生でと、ずっと。20代、30代も仕事していて、いいことばかりではないので。
そういうときにどうやって自分を励ますか、そういう要素がエッセイの中にあると思うんですよね。だからすごく励まされる。
だからどの年代の人が観ても、元気になると思います。草笛さんは90歳で、映画タイトルも「九十歳」ですけど、草笛さんは年齢とか性別を超えた存在で、ある種、妖精とも言えますけど(笑)そういう存在だから、みんなそういう人を観たら、やはり好きになるんじゃないでしょうか。
映画を観てもらわないとわからないですけど、エネルギーと生命力と、人の背中をスッと押してくれる力が、草笛さんという存在にあると思っています。
映画館にぜひ来てください。草笛光子さんは最高です。最強で最高ですね(笑)
「映画を育てていただくのは観客」
大竹アナ:最後に改めて、この作品がどんな作品になってもらいたいと思いますか?
前田監督:映画は大ヒットしてほしい。多くの人に観てもらいたい、その一言につきます。
やはり映画は最終的に、ぼくらは生み出すことはできますけども、その映画を育てていただくのは観客なんですね。
観ていただいて、育てていくということができて、やっと映画が成長して大人になっていくと思っています。
ぼくたちスタッフとキャストは生み出すところまでなんですよ。あとは観客のみなさんがどう育てていただくか、どういうふうに映画が大きくなっていくのかというところを、すごくいつも楽しみにしているので、そういう意味ではまだこれからです。
よろしくお願いします。
【一足先に観て感じた、映画の魅力3選:90歳の孤独…それでも。ベストセラーエッセイ『九十歳。何がめでたい』映画化!魅力3選】
映画『九十歳。何がめでたい』 6月21日(金)全国公開
・ストーリー
数々の文学賞を受賞してきた佐藤愛子。90歳を過ぎ断筆をして人付き合いも減り、鬱々と過ごしていたところに、中年の編集者・吉川がエッセイの依頼を持ち込む。「いちいちうるせえ!」と世の中への怒りを赤裸々に書いたエッセイは意図せず大好評となり、愛子の人生は90歳にして大きく変わっていくのだが…
・キャスト
草笛光子
唐沢寿明 / 藤間爽子 片岡千之助 中島瑠菜
オダギリジョー 清水ミチコ LiLiCo 宮野真守 石田ひかり 三谷幸喜
木村多江 真矢ミキ
・企画・プロデュース:岡田有正
・企画:古賀誠一 石塚慶生
・プロデューサー:近藤あゆみ 山田大作
・原作:佐藤愛子『九十歳。何がめでたい』『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』(小学館刊)
・監督:前田哲
・脚本:大島里美
・音楽:富貴晴美
・製作:2024映画「九十歳。何がめでたい」製作委員会
・制作プロダクション:スタジオブルー
・配給:松竹
ⓒ2024映画 「九十歳。何がめでたい」製作委員会 ⓒ佐藤愛子 小学館
インタビュー:HBCアナウンサー・大竹彩加
編集:Sitakke編集部IKU
※掲載の内容は試写会時(2024年5月)の情報に基づきます。