ノーベル文学賞受賞で気になる「518光州事件」をテーマにした韓国ドラマと映画4選
10月10日、韓国の女性作家ハン・ガンがノーベル文学賞を受賞した。
作品名は『少年が来る』。BTS(防弾少年団)のV(ブイ)が読んだことで知られるなど、今、日本でも話題沸騰中の小説だ。
物語の背景は、多くの犠牲者を出し、韓国現代史における最大の悲劇と言われる5.18事件(光州事件)。
これまでにも数多くの作品のテーマとして取り上げられ、その度に熱い視線が注がれてきたあの悲しい出来事だ。
気になっている人のために、事件の概要に触れ、同事件を題材にして話題を呼んだ過去のドラマと映画を2つずつピックアップした。
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『少年が来る』の背景となった5.18事件とは
5.18事件は、1980年5月18日から10日間に渡って、韓国の光州市を中心に起きた、大学生を含む市民による軍事政権への民主化要求運動のこと。
政府がデモを鎮圧すべく警察や軍隊を動員したのだが、鎮圧活動は日を追うごとに激しさを増し、負傷者はもちろん命を落とす人まで現れるなど悲惨な状況に。5月27日に終了した時には、数えきれないほどの被害者が出ていた。
そんな暗い歴史をテーマにしたのが、冒頭で触れた小説『少年が来る』だ。事件の前後を取り扱い、登場人物の内面に焦点を当てたメッセージ性の強い小説となっている。
本作以外にも、韓国には同事件を題材にした作品があり、お茶の間やスクリーンでも度々注目を浴びてきた。
五月の青春 (KBS/2021)
5.18事件を扱って最近ドラマで視聴者の関心を集めた作品といえば、『五月の青春』。イ・ドヒョンとコ・ミンシが主演を務めたヒューマンロマンスだ。
激動の時代を背景に、互いに惹かれ合う男女の許されない切ない恋をはじめ、親子の葛藤なども描かれている。
韓国では、1980年特有の雰囲気をしっかりと描き出した演出はもちろん、物語の完成度も高いという評価。成功裏に最終話を迎えた話題作だ。
砂時計 (SBS/1995)
『砂時計』は、5.18事件を初めて題材にしたドラマ。チェ・ミンス、コ・ヒョンジン、イ・ジョンジェなど、錚々たる役者陣を主演に迎え、韓国国民の心に暗い影を落とす事件と個人の人生が絡み合い、時代の風波に溺れていく登場人物の悲劇的な人生を描写した傑作だ。
最高視聴率64.5%を叩き出し、放送時間帯にはテレビを観るために街から人がいなくなったと言われているほど。
警察や軍隊による鎮圧や光州市民の様子を描き、当時の実情を赤裸々に描写したシーンの数々が、視聴者に衝撃を与えた。
光州5・18 (2007)
映画『光州5・18』も、韓国の歴史に残る悲劇的な事件を呼び起こした作品として知られる。主演を務めたのは、キム・サンギョンをはじめアン・ソンギ、イ・ヨウォン、イ・ジュンギなど、演技力に定評のある役者。
本国では、730万人を超える観客動員数を記録して大ヒット。悲劇の過程をリアリティーたっぷりに取り上げて好評を得た。
事件による友人の死をきかっけに、デモに参加することにした弟が射殺され、政治には関心のなかった兄が市民軍の一員となるストーリーだ。
タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜 (2017)
『タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜』は、銀幕のスターソン・ガンホが主演を務めた映画。5.18事件を基に再構築されたストーリーで、『第90回米アカデミー賞』で外国語映画賞の韓国代表に選出された作品だ。
軍による暴虐を全世界に発信するため、撮影記録を持ち帰ろうとするドイツ人記者の使命を理解した韓国人タクシードライバーが、カメラを没収しようとする政府とカーチェイスを繰り広げる物語となっている。
第3者の視点が含まれている点が、本記事で紹介した作品とは大きく異なっており、事件当時の様子を過激かつ強烈に演出、タクシー運転手たちが実際にとった行動なども描かれた。
しかしあくまで誇張したものではなく、史実に基づく範囲でリアルを追求しているという。
(ライター/西谷瀬里)