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大滝詠一「NIAGARA MOON」ナイアガラ・レコード設立50周年記念のアナログ盤で楽しもう!

Re:minder

1975年05月30日 大滝詠一のアルバム「NIAGARA MOON」発売日

オリジナルの形が尊重されている「NIAGARA MOON」


ナイアガラ・レコード50周年を飾る怒涛のリリースが続いている。4月23日に発売となったのは、シュガー・ベイブのアルバム『SONGS』のレコード、CD、カセットテープの3形態。そして、「DOWN TOWN」のアナログ盤7インチシングル。さらに、アルバム『NIAGARA MOON』の50周年記念アナログ盤12インチレコードである。これはもう全国のナイアガラーの財政難は必至。嬉しいけれど助けて欲しい(笑)

『NIAGARA MOON』は、1975年4月に大滝プロデュース作品の『SONGS』が発売されてからわずか1ヶ月後、同年5月30日にエレックから出された、大滝詠一のセカンドアルバムである。翌1976年にはコロムビアから、1981年には当時のCBS・ソニーから再発。CDも1986年を皮切りに、ボーナストラックを加えながら1995年、2005年、2015年とリイシューされ続けてきた。アナログ盤も同時リリースされた2015年の40th Anniversary盤では、大滝自身の編集により、当初予定されていた曲順に組み替えた上に、ライブやラフミックスの音源も加えられるという、大きな改編が行われたのだった。

しかしながら、それ以外はみなオリジナルミックスのままの復刻で、今回のアナログ盤もボーナストラックなどはないストレート・リイシュー。ナイアガラ・レーベルにおける大滝詠一名義の初アルバムは、やはり特別な存在としてオリジナルの形が尊重されていることを実感させられる。

随所に見受けられる「A LONG VACATION」へと繋がるアプローチ


当時、『A LONG VACATION』で大滝詠一を知った新参者としては、はっぴいえんどは敷居が高く、その延長線上にあるようなファーストアルバム『大瀧詠一』には正直あまり馴染めなかった。だからこそ、ロンバケの大ヒットでソニーから一挙に出されたリイシュー盤で初めて『NIAGARA MOON』を聴いて、その世界観に惹き込まれた。「CIDER '73 '74 '75」のような聴き覚えのある曲が収録されているのも大きかった。洋楽をほとんど聴かずに歌謡曲で育ってしまった自分でも受け入れてもらえそうな感じがしたのだ。
 
大滝が自ら分析していたように、その作品を大きく分けると『A LONG VACATION』に代表されるメロディータイプと、『GO!GO!NIAGARA』のようなノヴェルティータイプの系統があり、シングルのAB面でもそれを絶妙に振り分けていた。『NIAGARA MOON』は「福生ストラット」などノヴェルティータイプの曲が中心ながら、表題曲でもある「ナイアガラ・ムーン」といったメロディータイプの秀曲もほどよく混ざっている。繊細に構築された楽曲と大胆に破壊する楽曲との融合。その関係性は、かの黒澤明監督の名言 “悪魔のように細心に、天使のように大胆に” を想起させる。タイトルだけ見るとユニークなものも多いが、しっかりと美しいメロディをも兼ねており、後の『A LONG VACATION』へと繋がるアプローチも随所に見受けられる。

アナログ盤で聴くことに大きな意義がある


林立夫のドラムス、細野晴臣のベースによるリズムセクション、鈴木茂をメインに、伊藤銀次、村松邦男のギター、佐藤博、松任谷正隆のピアノという鉄壁の布陣。つまりはキャラメル・ママ+α。そこに大滝の色気ある美声が乗っかるのだから堪らない。アルバムの最初と最後を彩った、はちみつぱいの駒沢裕城によるペダルスティール・ギターは、以降もナイアガラ・サウンドに欠かせない重要な役割を果たしてゆく。一音も聴き逃したくないような完成されたサウンド・コンポジションは、シュガー・ベイブの『SONGS』同様、アナログ盤で聴くことに大きな意義がある。

当時のライナーノーツには、フィル・スペクターやエルヴィス・プレスリーのみならず、ハナ肇とクレイジー・キャッツや三橋美智也の記述もあって楽しい。それを読んで存在を知った三橋美智也の「福生よいとこ」はすぐに中古盤を探しに行き、無事に買うことができた。今回もまた三橋の麗しの歌声を聴いてから「福生ストラット」に針を落としてみたい。

植木等がカバーした「ナイアガラ・ムーン」


そういえば、1曲目に収録されている「ナイアガラ・ムーン」は、1995年に大滝がプロデュースした植木等のアルバム『植木等的音楽』でカバーされている。ライナーに “ディック・ミネが歌うとバッチリ決まりそう” と記されていたこの曲を、ディック・ミネに傾倒してクルーナー唱法を受け継いだ植木が歌ったのは、つくづく的を射たカバーであった。これがまた実に良いのだ。同アルバムには「FUN × 4」もカバーされているので、もしも未聴の方がいらしたらぜひとも聴いてみていただきたい。

と、極めて薄っぺらいナイアガラーの端くれが『NIAGARA MOON』について語れるのはこんなところです。敬虔なナイアガラーならびに研究者の皆さま、どうかお赦しあれ。それでも私は今回のアナログ盤もしっかり買い求めます。

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