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駿河湾の宝石!<サクラエビ>の繁殖メカニズムに関する新発見 血糖値を調節するホルモンが見つかる?

サカナト

サクラエビ(提供:PhotoAC)

サクラエビは体長4~5センチ程の小型種で、駿河湾における重要な漁業資源です。

近年、本種の漁獲量は変動が大きく、数年にわたり記録的な不漁が続いていました。2023年以降で漁獲量に回復の兆しが見られているものの、今後も資源量を持続していくためには、漁獲量制限だけでは難しいとの認識も広まっています。

そのような中、広島大学大学院統合生命科学研究科の豊田賢治助教らの研究グループは、サクラエビの血糖値調節因子を発見。これによりサクラエビの繁殖メカニズムの理解が深まり、持続的な資源量の確保が期待されています。

この研究成果は『Fisheries Science』に掲載されています(論文タイトル:The hyperglycemic activity of crustacean hyperglycemic hormone in the sakura shrimp Lucensosergia lucens)。

駿河湾のサクラエビ

サクラエビLucensosergia lucens は体長4~5センチ程度の小型甲殻類で、駿河湾における重要な漁業資源です。

本種は遊泳性の小型エビで、昼間は水深200~350メートルに生息。夕方以降は夜にかけて水深20~60メートル付近まで浮上することが知られています。

国内では主に駿河湾で漁獲されており、春と秋に行われるサクラエビ漁はこの地域の名物です。

サクラエビ(提供:PhotoAC)

そんな駿河湾を代表する海産物のサクラエビですが、近年は漁獲量の変動が大きく、2018~2022年は記録的な不漁が続きました。2023年以降は漁獲量に回復の兆しが見られるものの、今後も資源量を持続するため、漁業者による漁獲量制限だけでなく、種苗放流事業の効率化も求められています。

一方、安定したサクラエビの種苗放流事業の運用には効率的な採卵技術が必須とされていますが、サクラエビの養殖に関する研究はほとんど行われていませんでした。

十脚目甲殻類の眼柄ホルモン

サクラエビを含むエビ・カニの仲間(十脚目甲殻類)は、一般に飛び出た複眼を持つことが知られています。

エビの仲間でホルモンが働く中心となるのは、複眼の根元にあるX器官やサイナス腺と呼ばれる組織。これらは多種多様なホルモン(眼柄ホルモン)を合成し分泌する役割があります。

さらに、この眼柄ホルモンは繁殖、成長、体色調整など甲殻類の生存や繁殖において重要な役割を持つため、繁殖の仕組みを解明するのに非常に重要な要素です。

しかし、眼柄ホルモンについてクルマエビやイセエビでは古くから研究が進められてきた一方、生息水深が深いサクラエビでは眼柄ホルモンの研究が全く行われていませんでした。

血糖値を上げるホルモンを発見

今回、広島大学大学院統合生命科学研究科の豊田賢治助教らのグループが行った研究では、エビやカニの仲間に共通して繁殖に関わるホルモンに注目。サクラエビの眼の根元にあるサイナス腺から取り出した成分を分析しました。

分析の結果、いくつかのホルモンの候補を発見し、中でも最も大きな反応があった成分に着目。この成分を取り出して質量やアミノ酸の並びを調べたところ、ホルモンの性質がわかってきたそうです。

加えて、RNA-sequencing分析からホルモンの設計図も判明しました。

これらの結果から、このホルモンがエビやカニの仲間に共通する血糖値を調整するホルモン(CHH)であることわかり「サクラエビCHH1」と名付けられました。

クルマエビを用いた実験

CHHは他の甲殻類で血糖上昇効果が報告されていることから、「サクラエビCHH1」にも同様の作用があるのか確かめるための実験も行われています。

クルマエビ(提供:PhotoAC)

この実験では、生きた状態のサクラエビを用いた生体実験が必須とされていますが、生きたサクラエビは小さいことに加え、特定の環境下でのみ生息することから入手および飼育が困難です。そのため、入手が容易かつ遺伝的に非常に近い仲間であるクルマエビを用いた生体実験が検討されました。

実験では、片方の眼の根元を切り取ったクルマエビに2日間何も与えずに飼育すると、血糖値が大きく低下。この状態のクルマエビに「サクラエビCHH1」を注射したところ、2時間後に血糖値が大きく上昇したのです。

一方、生理食塩水のみを注射したグループでは血糖値に変化が見られなかったことから、「サクラエビCHH1」に血糖上昇作用があることが判明。さらにサクラエビの眼柄ホルモンについて、クルマエビを用いた解析が可能であることも明らかになっています。

他の眼柄ホルモンの研究にも期待

今回の研究では、サクラエビから血糖上昇作用のあるホルモンが発見され、「サクラエビCHH1」と命名されました。また、サクラエビのサイナス腺からは全部で7つのCHHファミリーの遺伝が発見されているそうです。

今後、他の眼柄ホルモンを研究することにより、サクラエビの繁殖メカニズムへの理解が深まり、安定的かつ効率的な採卵技術の確立、持続的な資源量の確保が期待されています。

(サカナト編集部)

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