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坂下雄一郎監督が“興奮した”髙橋海人の演技とは?15歳から30歳、新たな“男女入れ替わり”を描く『君の顔では泣けない』

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坂下雄一郎監督が“興奮した”髙橋海人の演技とは?15歳から30歳、新たな“男女入れ替わり”を描く『君の顔では泣けない』

君嶋彼方による小説「君の顔では泣けない」が、主演に芳根京子、共演に髙橋海人を迎え実写映画化。映画『君の顔では泣けない』が、11月14日(金)より公開される。このたび、監督の坂下雄一郎と原作者の君嶋彼方が、「第38回東京国際映画祭」上映後舞台挨拶(11月2日開催)に登場。ここでしか聞けないトークをたっぷり繰り広げた。

入れ替わったまま歩んできた、ふたりの15年

原作は、2021年9月に発売され、瞬く間に話題となった君嶋彼方によるデビュー作「君の顔では泣けない」。​第12回「小説 野性時代 新人賞」を受賞し、発売前に重版が決定するなど、大きな注目を集めた。ある日突然、誰かの体と入れ替わってしまう——数々の名作を世に送り出してきた“入れ替わりもの”。そこに“15年も入れ替わったまま”という独自の設定が加わり、新たな物語が完成した。

入れ替わってしまうふたり、坂平陸と水村まなみを演じるのは、今回が初共演となる芳根京子と髙橋海人。トレンドを席巻する数々の話題作に出演し、若手俳優の中でも傑出した存在感を放つ二人が、その才能と感性、演技力と人間力を注ぎ込み、唯一無二の共闘を演じ切った。さらに、今後の活躍に期待が高まる西川愛莉と武市尚士が高校生時代の陸とまなみをフレッシュな魅力で表現。そして、話題沸騰の注目俳優、中沢元紀、前原滉、林裕太がそれぞれ入れ替わるふたりに密接に関わるキーパーソンを演じ、大塚寧々、赤堀雅秋、片岡礼子、山中崇が陸とまなみの両親役として物語を支えている。監督は『決戦は日曜日』(22)の坂下雄一郎。リアルとフィクションの境を繊細に編み、入れ替わったまま大人になっていくふたりの時間を切なく、そして瑞々しく描き出した。

本作は11月2日(日)に、「第38回東京国際映画祭」にて上映され、坂下雄一郎監督と原作者・君嶋彼方によるトークセッションが行なわれた。

映画を見終えたばかりの観客の大きな拍手に迎えられた坂下監督と君嶋先生。本作の原作は、君嶋先生にとって2021年9月に刊行されたデビュー小説だが、自身の小説が映画化され、国際映画祭の場で上映されることについて「まず、映画化されるというのは驚きのひと言です。小説家になった時に夢がいくつかありまして、賞を獲るとか、ものすごく売れるといったことなんですが、そのひとつに『映像化』というのがありまして、それがこんなに早く叶うとは思わなかったという驚きと喜びが大きかったです。映画祭での上映に関しては、映画そのものの力だと思っています。つくっていただいた監督をはじめとするスタッフの方々、キャストのみなさまの力だと思いますので、本当に『おめでとうございます』のひと言です」と語った。

坂下監督は、君嶋先生の小説を映画化する上で大切にしたことについて「最初に原作を読んで、どのように映画化するかという企画案をつくって出版社さんに説明する機会があったのですが、その時に、2人の恋愛の話にはしないということ、“入れ替わり”の話だとコメディになりがちですが、大げさな身振り手振りで中身の人格を大げさに言ってみるようなコメディ作品にはしないつもりです、ということを伝えました」と明かす。

この2点は君嶋先生も、映像化するにあたって、そうしてほしいと考えていたポイントだったそうだが「それをお伝えした時に監督の方からも『もちろんわかっています』と言っていただけましたし、実際に映画を見たら、それを忠実に守っていただいていて、本当に真摯に原作に向き合って映像化していただいたことが伝わる作品だなと思いました」と語り、坂下監督への感謝と信頼を感じさせた。

©2025「君の顔では泣けない」製作委員会

映画化された作品を見て、特に気に入ったシーンや印象的だったシーンを尋ねると、君嶋先生は、陸(芳根京子)がまなみ(髙橋海人)と仲たがいして、部屋から出て行き鍵を閉めるというシーンに言及。この描写は、幼少期の陸と母親のシーンとオーバーラップしており、小説にも同じような描写があるが「映画になると、よりハッキリわかるようになっていて、原作の意図をちゃんと読み取ってくださって、さらに素晴らしいシーンとして昇華してくださったのを感じるシーンでした」と絶賛。

坂下監督はこのシーンについて「“鍵を閉める”というシーンで、関係性を拒絶したり、関係性がなくなってしまうという意味を描けると思いました。それを繰り返すというのは、映画では反復という手法なんですが、そうすることでそのニュアンスを出そうということは原作を読んだ時から決めていました」と明かした。

さらに、トークでは俳優陣の演技の素晴らしさについても言及。“入れ替わり”作品は特に、俳優陣の演技力が作品のクオリティに大きく関係するが、坂下監督は髙橋さんの印象深いシーンとして「髙橋さんが『俺の顔で情けなく泣かないでくれる?』と言われた後、『戻りたくないわけないでしょ』って言うシーンで、(セリフを)つっかえて噛んでいるんです。今回の撮影で、髙橋さんが噛むことはほとんどなかったんですが、あの瞬間だけ出てきて、それを言い直す言い方がまた、そのまま言うだけではない、その場のリアリティを感じて、現場で興奮しながら見ていたのを覚えています」と髙橋さんの芝居の“生々しさ”の魅力を語る。

©2025「君の顔では泣けない」製作委員会

一方、君嶋さんはトーク序盤でも語られたように「男女が入れ替わることによる(過剰な)コメディっぽさが自分の中で心配事項だった」と明かしつつ「2人が、それを完全に排してないけど大げさに表現はしないという、絶妙なバランスを保って演技されているのを感じました」と芳根さんと髙橋さんの表現力を手放しで褒め称える。そして「かなり難しそうに見えたんですが、どういう演技指導をされたのか気になりました」と監督に質問。

坂下監督は「僕はほとんど(演技指導を)していなくて、リハーサルを何日かやっていただけでした。ご本人のインタビューなどを見ると悩まれたということをおっしゃっていましたが、現場のスタッフ側から見ると、完成形に近いものがリハーサル初日から出ていて、あとは微調整くらいの感じだったので、こちらからすると達者な方に来てもらえてよかったなという感じでした」と改めて芳根さんと髙橋さんの理解力と演技力の高さへの感謝を口にした。

最後に、坂下監督が「映画を気に入っていただけたら、嬉しいです。本日はありがとうございました」と、君嶋先生が「この原作をこんなに素晴らしい映画にしていただいて、スタッフ、キャストの皆さんには深い感謝を申し上げたいと思います。映画を観て、少しでも原作を気になった方は読んでいただければ嬉しいです。ちょっと違った視点が原作では読めると思いますので、お手に取っていただけると嬉しいです」と話し、舞台挨拶は終了した。

©2025「君の顔では泣けない」製作委員会

『君の顔では泣けない』は11月14日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

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