気づきにジワッと感動する絵本3冊:心落ち着くカフェを併設した書店「本とごはん ある日」(岐阜県恵那市)
小学校・特別支援学校の教員として働いていた榊原悠介さんと、子どもの本専門店で働いていた奥さまが「大人も子どもも思うがままに楽しめる本屋」をコンセプトに、2019年11月にオープンした「本とごはん ある日」。
店名は、昔話の導入で「あるひ……」から始まる物語が多いことから「この店がお客さんの物語の入口になったらいいな」との思いから。絵本や児童書を中心に1500冊以上揃う中から、大人の心に響く選りすぐりの絵本3冊を店主の榊原悠介さんに紹介していただきました。
新しい気づきにジワッと感動!おすすめの絵本3冊
『よあけ』(福音館書店) 作・絵:ユリー・シュルヴィッツ 訳:瀬田貞二
1977年に発行された、絵本好きなら誰もが知っているといわれるベストセラー作品。おじいさんと孫が静かな湖のほとりで夜明けを待つというシンプルなストーリー。夜が明けるまでの湖の様子が描写されているだけなのですが――
鮮やかな緑の山々や夜明け前の静寂、湖畔にさざ波を立てるそよ風、カエルの飛び込む音など、夜明けを迎えようとする世界が1ページずつ丁寧に描かれ、ページをめくるごとに自分も湖畔で日の出を待っているかのような高揚感に包まれます。そして、クライマックスとなる夜明けのシーンは――
榊原さん:文章による説明が少ないからこそ、柔らかな色彩で描かれた夜明けの美しさをダイレクトに感じられます。「ページをめくる」ごとに訪れる感動を、ぜひ体感してほしいです!
『いわしくん』(文化出版局) 作・絵:菅原たくや
海を泳いでいた1匹のいわしが人間に捕獲され、お店に並び、男の子に食べられ、そして男の子の一部となってプールを泳いでいく。魚目線で物語が展開されます。クリっとした大きな目のいわしがとてもキュートで、生き生きと泳いでいる姿が愛くるしいです。
まだ「食育」という言葉が使われていなかった1993年に出版された絵本ですが、「いのちをいただくこと」が直感的に伝わる表現に引き付けられます。物語の展開はとてもシンプルですが、その中には自然の摂理があり、食に感謝することの大切さを改めて感じさせてくれる1冊。
榊原さん:いわしくんは最後、男の子に食べられてその子の体の一部となるのですが、その後の「ぼくはおよいだ」という言葉の、2ページにわたる繰り返しで、命のつながりが実感できます。
『みずうみ』(ビリケン出版) 作:片山令子 絵:片山健
2005年に出版された『のうさぎのおはなしえほん』シリーズの1つ。現在はシリーズ自体が絶版となっていますが、その心温まる物語は今なお高い人気を誇っています。
鏡をもらったのうさぎ。おしゃれなくまとおおかみはその鏡を覗き込みますが…自分の顔を見て不機嫌になってしまいます。その理由は鏡に映った自分の顔が、自分が思っていたのと違って「怖かったから」。そんなくまとおおかみを森の湖に連れて行くと、湖面に映ったのは花や空などの景色と相まった自分の顔。さっきとは違い、不思議と怖さは感じません。
見方を少し変えれば、印象は大きく変わります。キャラクターたちの豊かな感性や素直で優しい考え方にハッとさせられます。
榊原さん:「のうさぎのおはなしえほん」シリーズは、使われている言葉は子どもでもわかる優しいものですが、大人の感性をも刺激するような哲学的な要素が散りばめられています。大げさかもしれないですが、自分の目に映る世界が変わったと感じた1冊です。
「絵本は数分で読めて、どんな人の心にも届きうる唯一無二のメディア」
純喫茶だった店舗を改装した落ち着きのある空間で、食事やドリンクを楽しみながらのんびりとした時間を過ごせる岐阜県恵那市の書店「本とごはん ある日」。
コンセプトは「大人も子どもも思うがままに楽しめる本屋」。絵本や児童書を中心とした本が揃い、大人は食事や飲み物を楽しみながら、子どもも思い思いに本を手に取ってのびのび過ごせるような、心地いい雰囲気です。
扉を開けるとレトロなカフェスペースが広がり、奥の書棚には多彩な絵本がずらり。誰もが小さい頃に一度は読んだことのある名作から知る人ぞ知る傑作まで、幅広いラインナップが絵本の世界に誘います。
書籍コーナー中央の書棚は要チェック。店主イチオシの絵本が並んでいます。
カフェスペースでは、コーヒーなどのドリンクメニューのほか、手作りケーキなどを楽しめます。ランチタイム(11:30~13:30)には、色とりどりの食材を使った日替わりランチやカレーランチも。
また、地下にはイベントホールがあり、アーティストによる講演会や展覧会が開催されることも。絵本や童話だけでなく、写真家のギャラリーや異国雑貨のポップアップなどのイベントも。詳しくはお店の公式インスタグラムをチェックして。
店主の榊原さんは絵本について「前提知識がなくとも数分で読めるうえ、どんな人の心にも届きうる唯一無二のメディア。言葉の描写がシンプルな分、昔の作品でも色あせない魅力があります。まずは一冊手に取ってみてほしいです」と魅力を語ってくれました。
大人も子どももくつろげる空間で、奥深い絵本の世界を満喫して。
本とごはん ある日住所岐阜県恵那市長島町正家1067-108営業時間8:00〜17:00(LO16:30)定休日日・月曜駐車場9台アクセス中央自動車道「恵那」ICより車で10分TEL0573-59-9333
本とごはん ある日 公式インスタグラム
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