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西日本と東日本の違いが印象的!知られざる113系・115系の「更新工事」を振り返る

鉄道ホビダス

text:MSかぼちゃ(X:@MS3167)

▲高崎地区の115系でも、3両編成を対象にリニューアルが施工されたが、塗装は従来の湘南色を維持していた。

’16.12.24 高崎線 高崎 T1041編成 P:MSかぼちゃ(日本かぼちゃ電車学会)

 111系・113系・115系といった直流近郊型電車の研究を活動のメインとし、鉄道系サークル「日本かぼちゃ電車学会」の主宰も務め、動画や同人誌でその成果を発表しているMSかぼちゃさんの連載!「徹底研究!国鉄近郊型電車113系115系」。今回のテーマはJR東日本とJR西日本の「更新工事」に注目します。いずれも113系・115系に対して90年代頃より更新工事を始めましたが、その工事内容の方向性は大きく異なっていました。ここではその内容を振り返るとともに、比較することでどういう考え方の違いがあったのかについて迫ります。(編集部)

 1980年代以降、113系・115系は延命のために様々な更新工事を受けることになります。国鉄時代に始まった「特別保全工事」を発端とするこの工事群は、分割民営化も相重なることで様々なバリエーションが発生していきました。
 その中でも、JR西日本で施工された「体質改善工事」とJR東日本で施工された「リニューアル工事」は、工事の完成度と施工車両の多さを両立した工事であり、また両社の更新工事に対する考え方の違いを明確に知ることができます。今回は、そんな2つの工事の共通点・相違点について比較しながら解説していきましょう。

【写真】JR東日本とJR西日本の113系・115系 更新工事の違いを写真で見る!

 2つの更新工事は、どちらも国鉄時代に始まった「特別保全工事」を原点として、1998年に誕生しました。JR東日本の場合は「特別保全工事」→「車両更新工事」→「リニューアル工事」、JR西日本は「特別保全工事」→「延命工事」→「体質改善工事」といったような段階を踏んでおり、両社が同じものから試行錯誤の上で発展させていった工事と言えます。しかし、この2つの更新工事の方向性は全くと言っていいほど異なる物でした。

 JR東日本が進めた「リニューアル工事」の大きな目的は、車両の信頼性の向上でした。

▲新潟地区に在籍したリニューアル車は、白と青を基調とした独自の塗装を纏っていた。

17.9.18 信越本線 新潟 クモハ115-1522 P:おれんじらいん(日本かぼちゃ電車学会)

 主要補機である補助電源装置とコンプレッサの更新(特に前者は電動発電機を静止型インバータに取換)、さらにはブレーキ装置や台車軸受の取替など、徹底的な故障原因の排除を行っており、今までの113系・115系と比べて故障のリスクを大幅に減らし、整備の省力化を図っているのです。
 その一方、車内アコモデーションは比較的原型に近く、例えば座席の脚台や腰掛は交換しているものの座席の配置自体は変化しておらず、あくまでも機器類の更新を重視していることがわかります。

 実は、この当時のJR東日本では、113系・115系をはじめとする旧型の抵抗制御車の故障が問題視されていた中で、これ以前に行っていた「車両更新工事」の内容は老朽箇所の取換とアコモデーションの更新にとどまっており、根本的な問題の解消には至っていませんでした。そういった背景も相まって、リニューアル工事では今までの内容に加え、機器類の更新に重点を置いたものとなったのです。
 リニューアル工事の施工車は高崎・千葉・新潟・長野地区各線や中央東線などの地方幹線に配置され、各地区の整備性・信頼性向上に貢献していきました。この車両たちは現在ではほとんどの車両が引退しているものの、2024年5月現在でもしなの鉄道にて同様の工事(車内化粧板張替の省略など、一部メニューに差異があるものの概ねは同一)を施工された車両が活躍を続けています。

▲しなの鉄道ではリニューアル工事に準じた工事を受けた車両が現在も活躍している。

’23.10.28 しなの鉄道 しなの鉄道線 テクノさかき〜坂城 S4編成 P:豊田不動

 一方、JR西日本が進めた「体質改善工事」は、車両の腐食防止とアコモデーションの改良に重きを置いた工事となりました。

▲体質改善40N工事を受けた車両。交換された窓枠と張上げられた雨樋が最大の特徴だ。

’15.3.15 山陽本線 岩国 クハ115-2005 P:おれんじらいん(日本かぼちゃ電車学会)

 走行装置に抜本的な改修は行なわない一方で、車体は雨樋の張り上げ化や通風器の撤去や車体裾部の外板のステンレス化などで腐食対策を行ない、車内は当時量産されていた223系の内装を基に徹底的な更新がなされ、旅客サービスの向上に努めています。
 JR西日本、とりわけ関西圏のいわゆるアーバンネットワーク区間は国鉄時代から私鉄との競合が激しく、投入される新型車両のアコモデーションは日々進歩を重ねていました。しかし、これは裏を返せば従来の車両と新型車両で設備に格差があるということに他なりません。そのためJR西日本の更新車はそれ以前の「延命工事」の時代から、その時代の新型車両に設備を合わせるような工事を行なっているのです。
 また、JR西日本は東日本とは異なり、財政的にもすぐに旧型車両を置き換えられる状況にありませんでした。そのため、「車両を長い期間使うこと」を念頭に置き、腐食対策を中心とした更新工事になったのです

 なお、この体質改善工事は2000年代以降には完全版の「体質改善40N」から、一部メニューを省略した「体質改善30N」に移行しています。

▲体質改善30N工事の施工車では、窓枠や雨樋の更新などが省略されている。

’23.7.30 山陽本線 糸崎 クハ115-1237 P:おれんじらいん(日本かぼちゃ電車学会)

 これは、工事施工時点での残りの車両寿命を勘案して、それに見合った工事内容にしたということでもあるのです。2024年5月現在、体質改善工事の施工車は着実に数を減らしているものの、山陽地区を中心にまとまった数が活躍しています。

 この先、完全に置き換えられてしまうその日まで、新型車両に伍した活躍を見せてくれることでしょう。

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