状況にかかわらず夫婦である限り請求できる別居中の生活費の請求方法とは!?【増補改訂版 前向き離婚の教科書】
状況にかかわらず夫婦である限り請求できる別居中の生活費
別居中の生活費はどうなる?
夫婦が婚姻費用を分担しなければならないのは、別居中でも変わりません。別居前に話し合っておくのがよいでしょう。別居後に相手が支払ってくれない場合は、すみやかに請求しましょう。
婚姻費用を自分で請求するときに多く利用されているのが、内容証明郵便です。 「いつ、どのような内容の文書を、誰から誰に出したか」を日本郵便が証明する制度で、強制力はありませんが、文書にどのようなことが書かれていたかが証明される(証拠が残る)ため、「請求した」「請求されていない」というトラブルを防ぐことができます。
相手が支払わないときは調停
請求しても相手が支払ってくれない場合や金額が折り合わず話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に婚姻費用の分担請求調停を申し立てます。調停では、両者に中立的な調停委員会が立ち合い、夫婦の資産、収入、支出の状況、子どもの有無と年齢などの事情を考慮しながら、合意を目指して話し合います。それでも話し合いがまとまらず調停が不成立になると、自動的に審判に移行します。審判では、調停で把握した事情を考慮し、婚姻費用算定表を参考にして、裁判官が分担額を決定します。決定内容に不服がある場合は、高等裁判所に申立てができます。
また、分担額が決定したあとで、収入の増減や子どもの進学などの理由によって経済事情に変更があった場合は、分担額の変更を求める調停を申し立てることができます。
ポイント
別居中であっても、 衣食住などの生活費、 医療費、 教育費など、結婚生活に必要なお金は請求できる。調停を申し立てる場合は、申立書、夫婦の戸籍謄本、自分の収入がわかる書類、収入印紙・切手代を用意する。
どのように請求するの? 別居中の生活費
ステップ1. 自分で直接、相手に請求する
別居したら、すぐに請求すること!
❶まずは電話、メール、手紙などで請求する。
❷それでも支払われないときは、内容証明郵便を送って請求する。
↓請求しても支払われない場合↓
ステップ2. 婚姻費用の分担請求調停を申し立てる
申立先相手の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意した家庭裁判所費用収入印紙1200円分連絡用の郵便切手(申立先の家庭裁判所により金額が異なる)必要書類(※1)申立書(裁判所のホームページからダウンロード可)とその写し1通(※2)夫婦の戸籍謄本申立人の収入がわかる資料(源泉徴収票、給与明細、確定申告
書の写しなど)申立書記入
の
ポイント相手方に支払ってほしい金額を書く。金額がはっきりしないときは相当額でもよい同居と別居を繰り返しているときは、最後の別居の日を書く夫婦がはじめて同居した日を書く
※1:書類のなかに相手に知られたくない情報がある場合は、該当箇所を黒塗りするか、「非開示の希望に関する申出書」を提出する
※2:申立書の写しは、申立ての内容を知らせるため、相手方に送付される
【押さえておこう!】調停や審判では、婚姻費用の支払い義務が生じるのは “ 請求した時点から ”とされています。それ以前にさかのぼった分は財産分与のなかで請求することもできますが、全額が認められるとは限りません。
【出典】『増補改訂版 前向き離婚の教科書』著:森元みのり