確定拠出年金で「老後の選択肢」が広がる!令和7年度の税制改正で変わる大きなポイント
40代後半~50代は退職準備や老後の生活設計が本格化する時期です。
確定拠出年金は、税制優遇を受けながら自分の老後資金を準備できる制度で、今回の改正でこの制度がさらに使いやすくなりました。
老後資金の準備に制度を活用すれば、老後の選択肢を増やし安心感を増やすチャンスです。
なぜ今、確定拠出年金制度が重要なのか
40代後半から50代に差し掛かると、退職後の生活をイメージしはじめる方も多いのではないでしょうか。
その年代の方にとっては老後の生活設計や資産形成の準備が一層重要になります。人生100年時代と言われますが、日本人の平均寿命も延び続け、厚生労働省が発表した令和5年の簡易生命表によると、平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.14歳です。
退職年齢から平均寿命までの期間が長くなり、確定拠出年金制度の重要性がますます高まっています。税制優遇を受けながら自分で老後資金を積み立てることができる制度として、多くの方にとって有益です。
令和7年度の税制改正により、この制度がさらに使いやすくなります。
確定拠出年金制度とは
確定拠出年金は、将来の老後資金を準備するための制度で、基本的に毎月お金を積み立てて、自分で運用商品を選んで増やしていく「じぶん年金」です。
60歳まで資金は引き出しできませんが、老後の資金作りに有利です。運用で得た利益が非課税で、掛金も全額が所得控除の対象になるので、節税にもなります。
大きく分けて、次の2つのタイプがあります。
1.企業型確定拠出年金(企業DC)
会社が用意する福利厚生の一環で、会社または従業員の給与から掛金を出します。従業員は自分で運用商品(定期預金・保険・投資信託)を選び運用します。
会社によっては、従業員が会社掛金に上乗せして掛金を出すマッチング拠出を利用できる場合もあります。
2.iDeCo(個人型確定拠出年金)
自分で備える私的年金で、自らが金融機関に口座を開いて加入し、お金を積み立て運用していく制度です。会社員、公務員、自営業、主婦など様々な属性の方が利用することができます。
主な改正ポイント3つ
1.拠出限度額の引き上げ
改正により、年間の拠出限度額が引き上げられ、より多くの資金を積み立てることが可能になります。これにより、老後の資金準備が一層充実します。
働き方やライフコースが多様化する中で、勤務先の企業年金制度の有無や形態に関わらず、公平で安定的な資産形成の助けとなるように、以下のように拠出限度額が引き上げられました。
被保険者区分
第1号被保険者(自営業者等):改正前(月額)6.8万円、改正後(月額)7.5万円
第2号被保険者(企業年金なし):改正前(月額)2.3万円、改正後(月額)6.2万円
第2号被保険者(企業年金あり):改正前(月額)2.0万円または2.3万円、改正後(月額)6.2万円(企業年金の掛金相当額を控除)
2.企業型確定拠出年金のマッチング拠出要件の見直し
企業型DCにおけるマッチング拠出について、従来は「加入者掛金の額が事業主掛金の額を超えることができない」とする要件がありましたが、この要件が廃止されました。
これにより、加入者が事業主掛金を上回る額を拠出することが可能となりました。
勤務先の企業型DCに加入されている方で、掛金を今より多く増やしたい場合は担当部署に確認しましょう。iDeCoに加入されている方で掛金の拠出額を上げたい場合は、ご自身で手続きをすることになります。
3.退職所得控除の適用要件の見直し
iDeCoの一時金と退職金を受け取る際の退職所得控除の適用について、従来は5年以上の間隔が必要でしたが、改正により10年以上の間隔が必要となりました。
これにより、iDeCoの一時金と退職金を受け取るタイミングによっては、税負担が増加する可能性があります。
改正によるメリットと注意点
改正によりメリットもありますが、気を付けなければいけない注意点もあります。
改正によるメリット
拠出限度額が引き上がることで、節税メリットを活かしながらより多くの資金を運用して老後に備えることができるようになりました。
長い期間、節税メリットを活かしながらうまく運用できれば、老後の選択肢を増やすことができます。
注意点
今回の改正で職所得控除の適用要件が厳しくなったため、iDeCoの給付を一時金として受け取る場合、受取時の課税に注意が必要です。また、iDeCoは原則として60歳まで資金を引き出すことができないため、長期的な資金計画が必要です。
そして、運用は自己責任で行われるため、運用成績によっては元本割れのリスクもあります。
確定拠出年金制度は、令和7年度の改正によって、人生100年時代の資産形成にいっそう役立つ制度へと進化しました。ただし、メリットだけでなく、制度の性質や注意点も理解して、自分の生活に合った形で賢く使うことが大切です。
「何から始めたらいいかわからない」という方は、まずはご自身の勤務先の制度や加入状況を確認し、必要であればファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談してみると安心です。
【執筆者プロフィール】田端 沙織(たばた さおり)
キッズ・マネー・ステーション認定講師/ファイナンシャルプランナー/J-FLEC認定アドバイザー
神奈川県鎌倉市出身、プライベートでは小中学生3人の子育て中でもあるお金教育の専門家。得意分野は資産運用。
~キッズ・マネー・ステーションとは~
「見えないお金」が増えている現代社会の子供たち。物やお金の大切さを知り「自立する力」を持つようにという想いで設立。全国に約300名在籍する認定講師が自治体や学校などを中心に、お金教育・キャリア教育の授業や講演を行う。2023年までに2000件以上の講座実績を持つ。
(ハピママ*/キッズ・マネー・ステーション)