竹姫「着物ちぎり絵」ワークショップ ~ 着物生地のはぎれで味わいのあるアート作品を作ってみよう
毎年8月になると、筆者は夏休みの宿題に追われていた子どもの頃を思い出します。
夏休みシーズンの8月は、体験型のワークショップが至るところでおこなわれ、倉敷市内でもファミリーや子ども向けのイベントが多く開催されていました。
美観地区内にある着物リメイクブランド「竹姫」では、着物のはぎれを生かした「着物ちぎり絵」のワークショップがおこなわれました。
紙のちぎり絵はよく見聞きしますが、着物のちぎり絵は、着物リメイク品を制作する竹姫ならではのイベントです。
味わいのある作品が作れそうだと思い、筆者も参加してきました。
着物ちぎり絵ワークショップのようすを紹介します。
「着物ちぎり絵」ワークショップとは
着物ちぎり絵ワークショップは、美観地区内にある着物リメイクブランド「竹姫」が主催する体験型イベントです。
竹姫の店内に並ぶ服や小物は、すべて着物からリメイクされたもの。そのようなリメイク品を作るなかで生まれる着物のはぎれを、真っ白なキャンバスやうちわなどに自由に貼り付け、世界にひとつだけの作品を作ります。
お手本となるようなモチーフの型が数種類あり、型に沿って線を引けば、簡単に下書きも描けます。絵を描くのが苦手なかたや、小さなお子さんでもチャレンジしやすいワークショップです。
もともとは、2024年8月の1か月間限定のイベントでしたが、好評だったため通年開催となりました。いつでも体験できるそうなので、着物ちぎり絵に興味のあるかたはお店のスタッフに声をかけてみてください。
筆者が参加した時は夏休みシーズンだったので、夏休みの宿題にもちょうど良いワークショップだったと思います。実際に、お子さんの参加者も多く、ファミリーで来店されるかたも多かったそうです。
参加費は1100円(税込)です。
時間制限はありませんが、作り終えられなかった場合は、着物のはぎれを持ち帰って家で続きを作ることもできます。こだわりたい人はとことんこだわって作業に没頭できそうです。
当日のようす
筆者は8月16日(金)のワークショップに参加しました。
JR倉敷駅前の商店街から美観地区方面に向かって歩き、商店街を抜けた先を少し進むと、左手に竹姫の入り口が見えてきます。早速2階へ上がります。
店内の一角には、着物ちぎり絵をおこなうスペースが設けられていました。予約不要だったので、お店にふらりと立ち寄った人でも気軽に体験できそうです。
モチーフを決めて下書きを書いていく
まずは、着物ちぎり絵を描く画材を選ぶところからスタートします。画用紙、うちわ、キャンバスパネルの3種類から選択でき、筆者は普段使いもしやすそうなうちわに描くことを決めました。
着物ちぎり絵は自由に貼り付けても良いですが、竹姫店長の蕨野(わらびの)さんから「最初に鉛筆で下書きを描いたほうが、ちぎり絵もやりやすいですよ」と教えてもらいました。
とりあえず下書きをしようと鉛筆を握っては見たものの、何を作ろうか悩みます。あまり凝ったものにしても、下書きをうまく描ける自信がありません。
迷っていると、お手本になりそうなプラスチック製の型を渡されました。モチーフ決めに悩んでいた筆者にとって、ありがたい救世主でした。
夏といえば海、ということで、筆者はカニに決めました。カニのうちわがいったいどのような仕上がりになるのか楽しみです。
下書きは、型に沿って線を引くだけで完成しました。これなら絵が苦手な人でも簡単に描けそうです。
ようやく下準備が整いました。早速着物のはぎれを貼り付けていきましょう。
1枚ずつ柄が違う!着物のはぎれをぺたぺた
用意された色とりどりの着物のはぎれ。はぎれのサイズはさまざまで、ハサミで自由にカットして使うこともできます。
はぎれが収納された小分けのケースは全部で6箱ほどあり、柄の種類も豊富なので、最初にどのはぎれを使おうか迷います。
参考程度に、隣にいた参加者のかたのちぎり絵を見させてもらいました。
こちらのかたが作っていたのは「カナヘビ」。上品な黄色の色使いと、余白の多いデザインにセンスを感じます。
雑談のなかで「爬虫類が好きで、実際にカナヘビも飼っているんです」と話してくれました。
参加者のかたに「貼っていくうちに自然と良い感じになっていきますよ」と背中を押され、筆者もとりあえず貼っていくことにしました。下書きの線に合わせて両面テープを貼り付けて、その上にはぎれをのせていきます。
カニは赤いイメージがあるので、まずは赤いはぎれを中心に貼り付けました。アクセントにピンク色のはぎれも重ねていきます。
赤系、ピンク系のはぎれを貼っていくうちに、なんとなくカニらしい雰囲気が出てきました。
サイズを調整しながら、白い隙間を隠すように埋めていきます。普段めったにやる機会のない細かな作業に、小学生時代の図工の時間を思い出して懐かしい気持ちになりました。
甲羅の赤い部分を貼り終えたら、続いて目の部分に取り組んでいきます。
丸く切り抜けそうなはぎれを探していると、目のパーツにちょうど良さそうな柄を発見しました。瞳孔まで描かれた目玉のように見えますが、もともとは傘の柄のはぎれだそうです。
傘の柄部分を切り抜いて貼ってみると、もはやカニの目にしか見えません。多くの柄のなかからぴったりなはぎれを見つけられて気持ちが良いです。
筆者が目玉部分を作り終えたタイミングで、隣のかたのちぎり絵が完成したので見せてもらいました。
手足やしっぽの先まで細かくはぎれが貼られており、カナヘビへの愛が感じられる作品です。カナヘビを引き立てるような葉っぱのあしらいも素敵で、余白を生かすデザインが良いなと思いました。
筆者も素敵なちぎり絵を完成させようと気合が入ります。
赤色のはぎれをメインにしようと考えていましたが、豊富な柄があるので、赤色にとらわれずにいろいろなはぎれを使ってみることにしました。
爪の部分は、淡い色合いの優しいはぎれを使ってガラッとイメージを変えていきます。同じ着物から生まれたはぎれでも、1枚1枚柄が違うので、はぎれを選ぶ作業にもこだわりました。爪の先のとがったところを貼るのが意外に難しく、ハサミを使いながら慎重に貼り付けていきます。
ごちゃごちゃした見た目になっていくカニを見て、「きれいなちぎり絵になるのかしら」と少し心配になりましたが、しばらく貼り続けていくと、隣のかたがアドバイスしてくれたとおり良い感じにまとまっていきました。
いろいろな柄のはぎれを組み合わせることで、赤色が映えるようになり、自然と奥行きのようなものが出てきたように感じます。
作業中、カニの目から視線を感じましたが、気にせずに貼り続けてようやく完成しました。
色も柄もバラバラのはぎれを組み合わせ、派手ながらも味わい深いカニが生まれました。自画自賛したくなる出来上がりです。
着物生地を使っているからか、紙よりも柔らかい雰囲気があります。
作り始めてから約2時間も経っていましたが、他の参加者や蕨野さんとの会話を楽しみつつ作業ができたので、時間があっという間に過ぎていきました。店内の居心地が良く、集中しやすい環境だったのかもしれません。
暑い夏を乗り越える、心強い味方ができました。
おわりに
着物ちぎり絵は、時間が経つのを忘れるほど夢中になれる体験でした。自分が子どもだったら、夏休みのエピソードとして長く思い出に残りそうです。
同じ着物から生まれたはぎれでも、柄は1枚1枚違うため、並べる位置を変えるだけで色合いや雰囲気が若干変わります。着物を貼り付ける作業は、時間が許す限りこだわりたくなりました。仕上がりがイメージできないので、「うまくできるかな」とドキドキしながら貼っていくのは面白かったです。
今回のような着物に直接触れられる体験イベントは、着物が身近な存在になるように思います。
さまざまな着物生地を生かしたリメイク品が並ぶ竹姫、ぜひ訪れてみてください。