東武野田線の新型車両「80000系」 注目したいのは4号車 民鉄としては初のシステムも搭載した「人と地球によりそう電車」
埼玉県さいたま市の大宮駅から春日部駅、柏駅を経由し千葉県船橋市の船橋駅へと至る東武野田線。「アーバンパークライン」の愛称を持つこの路線に、2025年3月から5両編成の新型車両「80000系」が登場します。
車両のコンセプトは「人と地球によりそう電車」ということで、安全性や快適性をさらに磨き上げ、子育て世代のご家族も快適に利用できるような車両構造を目指しています。
その最たるものが4号車に設置された「たのしーと」でしょうか。「子供部屋」をイメージしたというワクワクした内装にしており、「子供は座席に、親は腰当てにもたれかかる」「赤ちゃんを乗せたベビーカーを窓前に、親は座席に」といった様々な使い方ができるようになっています。
野田線(アーバンパークライン)はベッドタウンを貫く路線であり、同じ東武の伊勢崎線(春日部)だけでなくJR常磐線(柏)やJR埼京線(大宮)、つくばエクスプレス(流山おおたかの森)、新京成・北総・京成(新鎌ヶ谷)、総武(船橋)など接続路線も豊富。
流山おおたかの森を筆頭に沿線への子育て世代の流入も顕著であり、「お子さまが最初に乗る電車」になり得ることを考えると、なるほど納得のいく設備です。本稿ではそんな「やさしい電車」を詳しく解説していきます。
エッジを際立たせた先頭形状、窓の大きさにも注目
まずは80000系の外観から。エッジを際立たせた先頭形状で先進性を表現し、前照灯は従来の東武車と異なり、顔の上部に配置されました。
特徴は前面非常扉の窓(写真左側の窓)。少し下に突き出ているのが分かるでしょうか。従来車より低くつくられており、背の低いお子さまでも前面展望を楽しめるよう配慮されています。
カラーリングは現行の60000系でも使用した「フューチャーブルー」「ブライトグリーン」の2色を基調としています。
60000系が前面と側面上部を青、車体側面のドア脇を緑で装飾しているのに対し、80000系では前面に青・緑を斜めに入れ、顔から側面上部へ伸びた青帯に細い緑のラインをあわせています。
なお、「たのしーと」が設置された4号車だけは側面がカラフルに装飾されており、ご家族での乗車の際はこれを目印にすると良さそうです。
「ただいま」と言いたくなる、安らげる車内
インテリアは「リビング」がテーマ。乗車した瞬間に気持ちが安らぐような落ち着いた客室空間を表現しています。
4号車「たのしーと」のほかにも、ベビーカー・車いす利用者も使いやすいフリースペースが全車両に設置されており、子育て世代だけでなく幅広い世代に使いやすい車両となるよう設計されていることが分かります。
前面展望を楽しみたい方にとってありがたいのは、運客仕切窓の大きさ。運客仕切開戸も通常より低くして手すりを取り付けており、小さなお子さまも一緒に楽しめるようになっています。
「民鉄としては初」のシステムも
80000系の大きな特徴をもう一つ。実は本格搭載としては民鉄初となる同期リラクタンスモータ(※)を採用した車両推進システム(SynTRACS)およびリチウムイオン二次電池SCiBとSIV装置を組合わせた車上バッテリシステムを搭載しています。
平たく言えば高効率なモーターを使用したり回生ブレーキで得られる電力のロスを減らし、減車とあわせて省エネを実現するということで、消費電力に関しては現行の8000系比で40%以上削減できるそう。車上バッテリは冗長性の確保にもつながります。
※同期リラクタンスモータは福岡市地下鉄の新型車両4000系が世界で初めて営業列車に搭載したことで話題になりました。
また、今後出場する04編成では架線モニタリング装置や検測装置などを搭載し、営業走行時に鉄道施設の状態を常時検測・モニタリングできるようにすることでさらなる安全性の向上を図ります。
6両編成から5両編成へ
本記事の冒頭で記載した通り、80000系は5両編成です。現在の野田線では6両編成の車両が使用されていますが、80000系で8000系と10000系を順次置き換え、60000系を減車することにより、将来的には5両に統一する計画です。
80000系の投入数は25編成ですが、このうち7編成は5両全て新造。18編成は4両を新造し、60000系から抜いた1両を3号車(T車)の位置に組み込みます。
減車に関しては「混雑は大丈夫なのか」という不安の声も。東京圏における混雑率の目標は150%以下とされてきましたが、東武鉄道によれば5両化でそれを超えることはないと想定しているとのこと。
東武鉄道の発表によりますと、3月8日(土)から順次5両編成を導入する予定で、停車位置は同社ホームページにて発表されています。
記事:一橋正浩