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業界を牽引するシェフに聞いた2023年を表すキーワード 24年2月号

料理王国

業界を牽引するシェフに聞いた2023年を表すキーワード 24年2月号

シェフ達にお聞きした2023年のフードシーンを象徴するキーワード。環境や経済など、多岐にわたる変化の影響が顕著に現れました。

集積から分散へ。
「コロナが収束し、既存の価値観や仕事との関わり方が、日本だけでなく世界的にも大きく変化し始めた年になったと捉えられます。どこで、どのように働くか。今まで修行をベースとした「よいお店」の認識が、働き方や、社会での立ち位置において変わりつつあることを感じています。(例:「よい店」が集積していたと思われた都市圏で、高い評価をとっている店でスタッフが欠損していたり、逆に地方で無名だった地域に、名店が誕生し始めている流れ)。現場にいる時の流れの中で気づきにくいですが、今後振り返ってみた時に、この年が分岐点であったと認識できると思います」
生江史伸/レフェルヴェソンス

フードダイバーシティへの対応力。
「インバウンド回復の鍵となるテーマであり、私たち自身の日々の課題。世界中からゲストが来店するなか、環境や動物への配慮、宗教上の理由での忌避への理解が低いことは観光大国としても課題であると感じた」
中村有作/コケ

コロナウイルスからの回復、需要に対しての深刻な人材不足、SDGsへの意識の高まり。
「2020年から始まったコロナウイルス問題。飲食店に対して営業時間や酒類の提供などの制限が年間を通してなかった1年になった。同時に飲食店にとって大きな助けになっていた協力金などの助成についてもそのほとんどがなくなり、飲食店のなかには前の3年間よりも数字的には厳しいと感じ、事業をたたむ人も多かったのではないかと推察できる。実際に2023年8月の時点で2022年の倍の件数のレストランが廃業している。また、需要(客数)の回復に対して飲食業が放出した人材の飲食業への復職率が低く、業界全体として人材不足が深刻化している。街場のレストランには労働時間、待遇面でなかなか大手ホテル以上の条件よりも恵まれた提示が難しく、ホテル業界の業績回復(円安なども後押し)も重なり、さらなる人材不足の悪循環が生じている。訪日外国人が増えたこともそうだが、海外のレストランの出店も増えた。もともとスローフードやサスティナブル分野において日本は遅れをとっているが、その意識や認知度は高まっている。そこに欧米の、その分野において成熟した哲学が流入してくることで、更に問題に対しての意識の高まりが加速した」
信太竜馬/レラン

SDGs、水産資源保護。
「飲食店にとっては死活問題」
岸田周三/カンテサンス

フードマイレージ。
「物流の2024年問題などが関係してくると思います」
平木正和/アマン

自産自消。
「地方のレストランで地産地消は当たり前になったなか、どれだけシェフのオリジナリティを出せるかが重要だと感じました。自分で栽培、収獲、狩猟などを行うシェフも増えましたし、既存の調味料を使わずに自家製にする人も多くなりました。地域に根差してある程度の年数を重ねて、より深く地域の食材や文化を掘り下げられるか、料理人としての個性をどれだけ磨けるか、料理人がその土地土地で地産地消の先の姿をそれぞれの形で新しく展開していったように感じました」
平田明珠/ヴィラ・デラ・パーチェ

SDGs サスティナブル
手島純也/シェ・イノ

人不足。
「今年に限らずですが、特に今年はコロナ明けで予約は入るが人がいなくて対応できない、というニュースが多かったと思います。働き方改革をそのまま推し進めると、間違いなく未来はないです。我々の仕事は時間をかけて技術を習得していきます。その為の時間さえも認められないのであれば、この先いい人材が育つことはないです」
前田元/レストラン モトイ

Destination Restaurant
「旅の目的地となるレストランの価値と存在が大きく進んだ年になったと思う」
糸井章太/オーベルジュ オーフ

海外のゲストに向けた様々なインバウンド対応 、レストランのあり方や選ぶ価値観などの変化。
高価格帯にして富裕層に絞るのか、安価にして集客数を増やすのかに分かれた二極化。
「2023年はインバウンドの影響もあり、和食や寿司の勢いに反して、フレンチイタリアンなどの中間的な価格のお店が特に苦戦しました。これからしばらくはこの流れが続くと思います。技術があっても意識が高くてもなかなか成功できないのが今の日本で、若い職人が海外に引き抜かれていくとても残念な状態だと思います。今後もよりそうなっていくと思いますが、日本の食をもっと海外に誇れる財産にしていくには個人ではなく、政府のサポートも必要だと思います。近年は昆虫食や養殖、プラントベースなどレストランの方向性も様々に変わっていっていますし、しばらくはその流れも加速していくと思います。ただ僕自身はその前に、まずそうならないように現状を変えていく考えを持って、そこに最善を尽くすべきだと思います。日々の仕事の中にも小さなことでも変えられることも多いと思いますし、お客様への提案の仕方を変えることでレストランの存在意義も大きく変わっていくと思います。価格の高騰、所得の低下、環境の大きな変化の影響で日本のレストランは海外のゲストを含めた富裕層のみに絞った飲食店の開業がとても多く、個人では生き残ることも開業することも難しくなっています。人材不足や過去最高の閉業を考えると、増えすぎた飲食店も淘汰されざるを得ないとは思いますが、最初の段階で海外のように飲食店の数を制限することも必要だと思います」
石井真介/シンシア

物価高、働き方改革、YouTube インスタ。
「レストラン価格の高騰により、レストランが淘汰される。働き方改革については肌感ではあるが、いよいよ料理人も変わりつつある。フランス本国でさえ料理人になりたい人が減ってきている。そういう背景の中で本当に若手育成に向けたレストラン作りができるのか、そしてレストランの存続が可能なのか、よく考えた一年だった。また、今までとは異なりSNSやYouTubeで人間性も含めた“推しシェフ”などがでてきたことや、そのシェフの元で働きたいと思われるようになった」
星野晃彦/ブラッスリー ポール・ボキューズ銀座

原点回帰。
谷口英司/レヴォ

原価高騰、人材不足、シェフスキャンダル。
飯塚隆太/レストラン リューズ

パンデミック後の流れと戦争。
「1918年のスペイン風邪の後の流れと同じように、コロナ終息後には需要が急速に高まるが、供給が追いつかず、感染時の財政政策が加わったことでインフレに向かいます。さらにウクライナとロシアの戦争により様々な問題が生まれ、物価上昇を押し上げました。多くのレストランがこの激動の時代のなかにあり、様々な影響を受けた一年になったと思います」
米田肇/ハジメ

プラントベース。
「これからの時代、フードロス、サスティナブルシーフード、家畜を育てる環境問題や食糧不足などこれからの未来、地球と人に優しく持続可能性を考えていかなければならないと感じています」
松本一平/ラペ

原点回帰。
「和、洋、中ともに料理の表現が本来の形に戻っている気がします」
渡辺雄一郎/ナベノ-イズム

海水温上昇、異常気象による旬や特産地の消滅。
「以上は全て漁師さん農家さんとの定期的な会話で上がっていることで、現場の方たちがそうおっしゃっているので間違いないのだろうと、思っています」
池尻綾介/マ・キュイジーヌ

サステナブル、低環境負荷、持続可能性、資源量の枯渇(特に海産物)。
松尾英明/柏屋

カウンター、一斉スタート、小箱。
「カウンターで調理をする姿を見ながら、という付加価値の向上。一斉スタートによる食材ロスの軽減、少人数体制でのオペレーションの構築。大箱は減少傾向。よりお客様と近い距離での飲食店の増加」
金子優貴/シリーズ

円安、地方都市、自然、海洋資源。
田村亮介/慈華

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