企業間決済も給与支払いも「脱・現金」進む キャッシュレスの波、BtoBの現場に広がる
キャッシュレス決済の普及は、消費者向けだけでなく、企業の経理・人事領域にも拡大しつつある。法人カードを活用した請求書決済や、API連携によるデジタル給与払いなど、新たなソリューションの登場により、業務の効率化と資金の最適活用を目指す企業にとって選択肢は広がっている。
マネーフォワードケッサイ(東京都港区)は4月16日、同社が提供する請求書カード払いサービス「マネーフォワード 請求書カード払い」の累計決済金額が100億円を突破したと発表した。企業間取引におけるキャッシュレス化が進む中、経済産業省も法人カードの活用を通じた中小企業の生産性向上や業務効率化を後押ししている。(注1)
また、PayPay(東京都新宿区)は4月11日、給与のデジタル払いサービス「PayPay給与受取」の導入企業が100社を超えたと発表。人事労務ソフトとの連携も強化し、給与支払いの現場でもキャッシュレス化の動きが広がっている。
請求書カード払い、法人カード活用が進展
請求書カード払いは、取引先から受け取った請求書の支払いを、支払代行会社を介してクレジットカードで行う仕組みである。事業者にとっては、従来の銀行振込を置き換える形で、支払いフローを変えることなく、業務の効率化と資金繰りの柔軟化を実現できる点が特徴だ。
マネーフォワードケッサイの「請求書カード払い」は2023年のサービス開始以来、多くの中小企業に利用され、累計決済金額は100億円を突破した。キャッシュアウトのタイミングを遅らせることができる点は、限られた資金を事業投資などに有効活用したい企業にとって魅力となっている。
一方で、手数料が発生するため、請求金額が少額の場合には銀行振込よりも割高になるケースがある。また、法人カードを活用したキャッシュレス決済は普及の途中段階にある。経済産業省によれば、法人カードを用いた決済の利用割合は18.1%にとどまり、企業間取引の約7割が依然として銀行振込に依存している。(注2)
アメリカン・エキスプレス・インターナショナルが2024年に実施した調査では、企業間決済において支払いのキャッシュレス化は4割以上の企業で導入済みであったが、請求業務のデジタル化は3割にとどまった。特に請求側では「導入予定なし」との回答が最も多く(31.9%)、インボイス制度導入や電子帳簿保存法の実施・改定といった社会制度の変化が後押しをするものの、普及には依然として課題が残る。
給与のデジタル払い、100社突破とAPI連携で普及加速
給与のデジタル払いも徐々に広がりを見せている。PayPayは4月11日、給与デジタル払いサービス「PayPay給与受取」の導入企業が100社を超えたと発表した。また同日には、オービックビジネスコンサルタント(東京都新宿区、OBC)が提供する「奉行Edge 労務管理電子化クラウド」とのAPI連携を開始。企業の人事労務システムと給与受取口座の情報連携を自動化し、従業員・企業双方の負担軽減につなげている。
従来、従業員が「PayPay給与受取」を利用するためには、同サービスで発行された口座情報を手動で労務管理システムに入力する必要があり、所要時間は約2分とされていた。API連携により、利用者は「PayPayと連携」ボタンをタップするだけで、最短15秒で必要情報の入力が完了。人為的なミスによる振込エラーも抑止できるため、バックオフィス業務の効率化が期待されている。
両社は2024年8月、給与振込先口座情報の収集業務を効率化することを目的に、機能連携に関する基本合意を締結した。
なお、給与のデジタル払いには労使協定の締結などの事前準備が必要だ。詳細は当メディア「総務の引き出し」にて確認できる。
注1:経済産業省「B2Bキャッシュレス(事業者間決済のキャッシュレス)」
注2:経済産業省「令和4年度商取引・サービス環境の適正化等に係る事業」
マネーフォワードケッサイの発表の詳細、PayPayの発表の詳細は、それぞれ同社公式リリースにて確認できる。