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札幌~釧路は一人の運転手じゃ運べない…「2024問題」って実際どうなの?長距離トラック密着で見えてきたホントのところ

Sitakke

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4月から、トラックやバス運転手の労働時間の規制が強化されました。

運転手の待遇改善が目的ですが、一方で、物流が滞り、暮らしに影響を及ぼす「2024年問題」が懸念されています。

物流の現状は、今どうなっているのでしょうか?

深夜の長距離トラックの現場からみえてきました。

連載「じぶんごとニュース」

札幌~釧路 トラック運転手の働き方の現状は?

札幌市清田区の幸楽輸送です。

北海道コカ・コーラボトリングのグループ会社で、商品の輸送を担っています。

この日、北海道東部への輸送を担当するのは、大林典嗣(まさし)さん。
運転手歴は15年にのぼります。

この日の最終目的地は釧路。まずは帯広営業所まで向かいます。
帯広までは約3時間です。

釧路行きの荷物を満載したトレーラーが札幌を出発します。

4月から、トラック運転手の1日の拘束時間の上限は「原則13時間以内」。
連続で運転できる時間は「4時間以内」などと、細かく規制されています。

運転席からは走行時間と距離・速度を記録するデジタルタコグラフが確認できるようになっています。

大林さんが運ぶ商品は、飲料水や食料品といった生活必需品。

ライフラインを担っているという緊張感が常にあると言います。

「スーパーで商品が並んでいるのを見て、俺らが運んでいるんだなって。事故を起こさないで無事に荷物を届けて、毎日きちんと家に帰ることが目標」と話してくれました。

午前4時半、トレーラーは予定通り、3時間で帯広に到着しました。
さて、大林さん、この後の作業はというと…運転できる残り時間は52分しかありません。

荷物の最終目的地は釧路です。

「車体のリレー」限りある労働時間を工夫で乗り切る

大林さん1人で札幌と釧路を往復した場合、拘束時間は休憩を含めて16時間になり、今はこのような長距離の運転は許されなくなりました。

そこで始まったのが「車体のリレー作業」です。

車体と荷物部分を切り離して、帯広の運転手に釧路まで運んでもらいます。

これにより大林さんは日帰りが可能となり、労働時間を抑えることができるのです。

休憩した大林さんは、釧路から運ばれた農産物や乳製品を引き継ぎ、札幌に運びます。

空の車を出さず、労働時間も節約する、「2024年問題」対策の一つです。

この会社では、以前は運転手の仕事だった荷物の積み下ろし作業を専門スタッフに切り替えました。

これにより、1時間ほどかかっていた作業が、20分から40分程度に短縮されました。

限りある労働時間を、運転に専念してもらう工夫です。

幸楽輸送の不動直樹社長は「必ず時間通りに家に帰れるとか、きちんと休みが取れることが若手のドライバーに評価を受けていて、定着率は悪くない」と話します。

売り上げと利益を出しながらドライバーを確保していきたい考えです。

面積が広く、物流をトラックに頼ってきた北海道では、生活必需品から、ネット通販の商品まで、地方にきちんと荷物を送り届けられるかが深刻な問題になっています。

トラックに代わる長距離の輸送手段として、物流業者がいま注目しているものがありました。


貨物列車のメリットと課題

トラックに代わる長距離の輸送手段として、物流業者がいま注目しているのが「貨物列車」です。

地方にも線路が張り巡らされ、運転士1人で一度に大量の荷物を運ぶことができるからです。

札幌にあるJR貨物の物流施設には連日、物流業者や卸売り業者が視察に訪れています。

北海道恵庭市の運輸会社は「2024年問題でドライバー不足が非常に大きな問題になってくるので、鉄道をうまく利用することをわれわれも考えていきたい」と話していました。

市内など短い距離の輸送は「トラック」、長距離の輸送は「貨物列車」と、道内の物流を維持する仕組みづくりが進められている一方、課題もあります。

プロセスが増えることで、荷物の受け付けから配達までの時間が増えることや、増加する費用は誰が負担するかなどです。

北海道苫小牧市の運輸会社は「労働力の負荷を上げないためにはどうするか…鉄道輸送の機能がどこまで応えていけるのか、見極めないとならない」と話しています。

「2024年問題」に対する運輸会社の取り組みを紹介してきましたが、私たちも協力が求められています。

一番負担が大きいのは「再配達」

全日本トラック協会は、最も負担が大きいのが宅配便などの「再配達」だとしています。

できるだけ確実に受け取れる時間の指定や、「宅配ボックス」や「コンビニ受け取り」「置き配」などを利用するよう呼びかけています。

そして、ネットで注文する際は「まとめて注文」して、配達の回数を減らすなどの協力をしてほしいとしています。

物流の「2024年問題」解消のためには、私たちが興味を持って少しずつでも協力していくことが必要です。

連載「じぶんごとニュース」

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年4月5日)の情報に基づきます。

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