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歌舞伎をもっと身近に!広がる鑑賞の工夫

TBSラジオ

最近、映画『国宝』の影響もあり、実際に歌舞伎を見てみたいという方が増えているようです。私もそのうちの一人なんですが、歌舞伎鑑賞ってちょっとハードルが高いイメージありませんか?

初心者向けの歌舞伎鑑賞教室って・・・?

そんな中、歌舞伎の舞台で、初心者でも楽しめるような工夫があるという事で。まずはこちらをお聞きください

【鬼】庭荒(ていあら)の鬼~・・・

【解説者】すごい迫力なのが出てきましたが、皆さん頭見てください。角ついてますね。鬼ですよ、鬼。庭荒童子(ていあらどうじ)が名乗った時にですね、いきなり一瞬でばっと衣装が派手に変わりましたが、あれは何というものなんでしょうか?

【鬼】あれは「ぶっかえり」と申しまして、悪役や妖怪などがその場で大きく衣装を変えて見せるものなんです。(衣装が)肩のところで縫い合わさっております。この糸を引き抜くことによって前後に衣装が分かれて派手な衣装が出てくるんですが、この糸を縫う作業というのがなかなか難しく、熟練された衣装さんでないとできないそうなんでございます。

鬼自らが衣装の説明をするとは・・・!なんとも不思議な、鑑賞教室ならではの一場面でした!

歌舞伎鑑賞教室で配布される無料プログラム。中には分かりやすいイラスト付きのあらすじ説明も。

こちらは、国立劇場で行われている「国立劇場・歌舞伎鑑賞教室公演」。開演前に約30分間、歌舞伎俳優さん自ら歌舞伎の基本知識や、見どころを丁寧に解説してくれるというもの。聞いていただいた部分は、解説の坂東亀蔵さんと、庭荒童子(ていあらどうじ)鬼役の坂東玉雪さんによる衣装の解説でした。

解説だけではなく、お二人による立廻り(劇中での闘争場面)の披露も!その他にも、実際に劇中で登場する大太鼓の音を使ったクイズなど、観客参加型で会場も盛り上がっていました!

初心者とインバウンドに向けた公演の工夫

この取り組みを主催するのは、日本芸術文化振興会。この歌舞伎鑑賞教室、今回はインバウンドの方にも参加いただける「Discover KABUKI」というものだったんですが、公演の工夫と見どころについて、国立劇場 営業部・宣伝営業課の田部真弘さんに伺いました。

国立劇場 営業部・宣伝営業課 田部真弘さん

(歌舞伎鑑賞教室公演は)主に学生さんを対象にしている公演をやっておりまして、作品も、もちろん名作をやっているので、安い料金でいい作品、字幕の解説だったり、プログラム無料だったりということもありますので、そこは入りやすいのかなと、通常の歌舞伎公演よりは、というふうに思っています。あとは(今回は「Discover KABUKI」公演なので)インバウンド向けに英語のイヤホンガイドがついたり、6ヶ国語で翻訳されたパンフレットを配布したりとか、あと舞台上で(英語の)字幕表示があるというようなところで対応しております。歌舞伎だとかなり舞台が華やかだったり、衣装がとても綺麗だったりとか。あとは役者さんのセリフ回しとか、そういういろんな見どころはあると思うんです。自分なりに興味を持てる部分から入っていくと、かなり奥が深いジャンルだと思いますので、はまっていったら沼になるというか、知りたいと思うことはいろいろ出てくるんじゃないかなと思いますね。 

これであればハードルが下がって参加しやすいかもしれませんね。ちなみに学生さんであれば、なんと2,000円でこの歌舞伎鑑賞教室を見ることができるんです!(一般の方は、1等席6,000円・2等席4,000円)

「Discover KABUKI」公演ということで、インバウンドに向けたプログラムも。

「難しい」「とっつきにくい」と思われがちな歌舞伎を、少しでも多くの人、特に若い世代に知ってもらいたいと、初心者向けの取り組みに力を入れているそうです。この若い世代に魅力を知って貰いたいワケには別の理由もありまして・・・

実は歌舞伎を含む伝統芸能の俳優さんというのは、なりて不足という課題もあるそうで。国立劇場としては、プロの指導を無料で受けられる「歌舞伎俳優養成所」などの活動を行い、伝統文化を継承していく人材を育てているんです。その第一歩として、まずは伝統芸能に若いうちに触れる機会を作ろうという事なんです。国立劇場では伝統芸能に触れるきっかけ作りとして、オンラインゲーム「刀剣乱舞ONLINE」とコラボレーションした日本舞踊の企画など、様々なジャンルとの共演を予定しているそうです。

8月公演予定の日本舞踊とオンラインゲームの共演企画

歌舞伎鑑賞教室、どうでしたか?

では実際に歌舞伎鑑賞教室を見た皆さん、特にインバウンドの方や若い世代の方はどのように感じたのでしょうか?

歌舞伎のこと勉強してて見にきたいかなって思って。特に楽器の迫力感、素晴らしいです。

日本の伝統文化について見てみたいなと思っていて初めて来ました。思ったより分かりやすかったというか、説明(解説)があったからもっと分かりやすかったです。

外国人の方に向けた回をあえて見に来たんですね。どういう風に皆さんが反応されてるのかなとか、どういう風に英語で説明されるのかなというのも見たくて、それで今日申し込みして。

自分が勉強していることで、日本文化特有のものって感じられてる「間」が海外の人ってどう感じてるんだろうっていうのを調べている中で、海外の人に向けた歌舞伎の公演があるっていう風に伺ったので、それで今日来ました。歌舞伎の子役をやっていたので、知ってることではあったんですけど分かりやすく説明していただいて、より楽しめました、今日それ(解説)聞いて。

解説付きはやはり好評のようですね。私も今回初めて歌舞伎を鑑賞したのですが、作品の進行に合わせてイヤホンガイドの解説を聞くことができるので、言葉が少し難しくても、今どのような場面なのか、どのような意味の台詞であったのかを知ることができ、解説とセットでおすすめです!

この歌舞伎鑑賞教室で歌舞伎の基本を知って、より本格的な公演にステップアップするのもいいですね。

9月歌舞伎公演の「仮名手本忠臣蔵」/「国宝」出演の中村鴈治郎さんも登場

国立劇場では9月歌舞伎公演「仮名手本忠臣蔵」も控えています。実際に見る生の舞台は、臨場感や一体感が違うので、生の舞台を一度見ていただければ感動もひとしおだと、国立劇場の田部さんも話していました。

(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:糸山仁恵)

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