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「JALこども未来開発本部」開催 “こども社員”が「やさしい旅」を提案

おたくま経済新聞

JALこども未来開発本部

 7月23日、日本航空株式会社が小学校3~6年生を対象とした共創型ワークショップイベント「JALこども未来開発本部」を開催。“こども社員”に任命された参加者の小学生たちが「みんなにやさしい未来の旅」のアイデアを考え、JAL社員に直接提案しました。

JALこども未来開発本部

 2024年1~5月のJAL便搭乗者数は前年比で国内線が104%、国際線で117%と順調な回復を見せていますが、その一方でオーバーツーリズムをはじめ、旅行者による旅先での行動が環境や地域住民に及ぼす影響が問題となっています。

 こうした背景を踏まえ、JALでは旅行者、環境、観光地それぞれが心地よく、持続可能な旅を送るためのサステナビリティに関する情報発信を実施しています。今回の「JALこども未来開発本部」は、その一環として開催されたもの。ワークショップを通じてサステナビリティを学びながら、同社初となる子どもたちとの共創活動に取り組みます。

 会場となったのは、羽田空港の整備場エリアにあるJALの施設「JAL SKY MUSEUM」。今回集まった小学生18名は一日限定の“こども社員”に任命され、大人の社員たちのサポートを受けながら、アイデアを考えていきます。

■ 「やさしい旅」を作るサステナビリティ、現役パイロットが実際の取り組みを紹介

 最初に今回のワークショップの企画担当者であり、日本航空株式会社 カスタマー・エクスペリエンス本部の内田彪さんが挨拶。

 今回の「JALこども未来開発本部」について、「未来について考えたり、未来をつくったりするJALのこどもチーム」と説明し、「いまからみなさんはJALこども未来開発本部の一員です!」と呼びかけます。

 “入社”後の初仕事として、さっそく名刺交換を体験。用意された名刺に手書きで名前を書き込み、大人の社員たちと交換します。照れくさそうな表情を浮かべつつも、しっかりと目を見て渡していく子どもたち。受け取る社員たちも嬉しそうです。

 続いて、今回のテーマである「やさしい旅」と、その背景にあるサステナビリティの考え方についてレクチャー。講師は現役パイロットの岡田哲也さんに交代します。

 「これはパイロットが見た、アラスカ半島上空の写真です。2013年と2023年、それぞれの写真を比べてみて、気づくことはありませんか?」

 「2023年は緑が増えてる!」「2013年のときにはあった雪が、2023年には減ってる!」という子どもたちの声を受けて、「アラスカの雪や氷は、この10年間で減ってしまいました」と岡田さん。急速に進む地球温暖化について触れながら、サステナビリティを実現するための具体的なアクションについて説明します。

 「今回は“みんなにやさしい未来の旅”を考えていますが、二酸化炭素が増えて温暖化が進むと、我々もこの地球に住めなくなってしまう可能性があります。それを防ぐためには、ごみをなるべく出さない、電気や水を無駄遣いしない、使ったものをきれいにして、もう一度使えるものは使う。こういった行動がヒントになります」

 「観光地に人がたくさん来ると、地元の人にとっては嬉しいという気持ちはあるものの、ごみがいっぱい出たり、過ごしにくいと感じてしまうかもしれません。気持ちよく旅をするためには、現地の方のルールを守って、地元の人々の生活を守ることが大切です。こうしたことも、やさしい未来の旅を作るためのヒントになります」

 レクチャーの後は展示エリアに移動し、「実際に飛行機や空港でできるやさしいこと」として、JALが実際に行っているサステナビリティの取り組みを勉強。

 使い終えた食用油や木材の端材、食料の残渣を原料にした燃料「SAF(サフ)」を飛行機に用いていること、古い座席の素材をポーチやショルダーバッグにリサイクルしていることに触れながら、ごみの細かな分別など、利用者の側から行えるアクションが語られました。

 その後、コックピットのセットで飛行機の操縦機器を見学。「高度を調整する装置はどこですか?」など、飛行機好きの子どもたちからは専門的な質問が次々に飛び出し、その博識ぶりに岡田さんも思わず驚きの表情を浮かべていました。

■ テーブルを埋め尽くす付箋紙 大人顔負け“こども社員”の白熱アイデア会議

 見学の後は、4つのチームに分かれてワークショップ。テーブルに用意された付箋紙にアイデアを書き、大きな紙にまとめていきます。

 各チームのテーブルをのぞいてみると、どこも熱気でいっぱい。どの子もすでにたくさんのアイデアをあたためてきたようで、迷いのない表情で次々にペンを走らせていきます。

 エコマークを描いてリサイクルを表現したり、「機内食の紹介動画やアンケートをする(ことでフードロスを減らす)」など、大人顔負けのアイデアを出す子も。テーブルの上は、あっという間にアイデアの書かれた紙でいっぱいになりました。

 「機内食のトレーを固い紙容器にする」「ボランティアでごみを拾ってもらい、(また)来てもらうために都道府県の有名な食べ物をあげる」など、解像度の高いアイデアも。サステナビリティという概念が子どもたちの間にも広く浸透していることが伝わってきました。

■ 二酸化炭素削減策、運行の改善案も…… 続々挙がる秀逸アイデアに驚きの声

 休憩を挟んだ後、いよいよアイデアの発表。チームごとに、子どもたちが「一番お気に入りのアイデア」を披露していきます。

 「大きな木の上にマンションを作って、二酸化炭素を吸収する」「海洋ごみで飛行機の機体を作る」「管制塔で緑を育てる」……聞くだけでワクワクするアイデアに、会場からも「おぉ~」と感嘆の声が上がります。

 さらに大人たちを驚かせたのは、「飛行機の飛行高度を上げる」というアイデア。「高度を上げて気流に乗ることで、燃料が削減できます」と理路整然と語る様子に、会場からは感嘆のため息が聞こえてきました。

 他にも「座席のシートから服を作る」「飛行機の部品からキーホルダーを作る」「古い飛行機の素材を使って新しい飛行機を作る」など、そのまま実行できるのではないかというくらい具体的なアイデアが続々。発表を聞いて、社員のみなさんからもさまざまなコメントが挙がりました。

 「どれも素晴らしいアイデアだなと思いました。木の上にマンションを作るというアイデアは本当に面白いですね。二酸化炭素を減らす努力は本当に必要ですし、みんなでやっていけるといいなと思います」

 「普段会社で会議をするとなかなかアイデアが出てこなくて困っているんですが…… みなさん、いろんなアイデアが出てきてすごいなと思いました。ぜひ参考にさせていただいて、今後のJALの活動にも活かしていきたいと思います」

 「飛行高度を上げるなど、運航の工夫にもアイデアをいただいたり、みんなが少し気をつければできることもたくさん挙げていただけて感激しました。私たちも、みんなにやさしい世の中にしていけるように頑張っていきたいです」

 子どもたちの豊かなアイデアに触発されるように、生き生きとした表情を見せる社員のみなさん。「みんなにやさしい未来の旅」というテーマのもと、全員の思いが一つにつながりました。

■ 「大人が気づかないヒントがたくさん」提案アイデアは9月に機内で公開予定

 今回のワークショップを振り返って、日本航空株式会社 カスタマー・エクスペリエンス本部 副本部長の崎原淳子さんが挨拶。「私たち大人の社員だけで話していると気づかないところや“こんな身近なところにヒントがあったんだ”というところを、こども社員のみなさんに教えていただきました」と、参加者の子どもたちに感謝の気持ちを述べました。

 「今回、いろんな人や地球にやさしくするための大切なアイデアをたくさんいただきました。サステナビリティのヒントは、身近なところにたくさん隠れています。これから実現できそうなもの、できることを一つ一つJALのサービスに取り込んでいけたらと思います」

 「JALの大人社員を代表して、こども社員のみなさんから素晴らしいアイデアをいただいたことを感謝いたします」と崎原さん。「時代をこれから担っていくお子様と一緒に未来を考え、ご家族のみなさまとも一緒に考えるきっかけを持って行動していきたい」とし、「サステナビリティの実現に向けて、しっかり取り組んでまいりたいと思います」と結びました。

 ワークショップの後は「実際に飛行機を見てみよう」ということで、格納庫の見学ツアーへ。巨大な飛行機の真下や真後ろの構造など、普段はなかなか見ることのできない部分を、子どもたちは夢中になって見つめていました。

 格納庫の隣は本物の滑走路。飛行機が間近に飛び立っていく様子を見ながらの見学ツアーは、忘れられない夏休みの思い出になったことでしょう。

 今回の「JALこども未来開発本部」で提案されたアイデアはJALの商品・サービス開発部に届けられ、可能なものは実際にJALの事業に活かされていきます。また、今回挙がったアイデアは、9月1日~9月30日にかけて、JALの機内座席にある個人モニターや機内誌に掲載される予定です。搭乗の機会があれば、ぜひ“こども社員”たちの発想豊かな提案を見てみてください。

取材協力:日本航空株式会社

(取材:天谷窓大)

Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 天谷窓大 | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2024072402.html

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