女の“風呂後”が入浴時間よりも長い謎。中年になるほど時間がかかるのはなぜ?【日日更年期好日】
女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まった老化現象についてありのままに綴ります。第33話は「風呂後は忙しい」。
【日日更年期好日】
年を取れば取るほど肌は乾燥砂漠
多くの中年女性が感じていると思うが「風呂は好きだけど、風呂を出た後が忙しい」。
湯船に浸かるのは気持ちがいい。入水の瞬間は「あ〜〜」と声が出て、忙しない一日の終わりを労わる。入浴剤も投入して、ダラダラと温まる時間、プライスレス。今、子育て中ではできないと思う方も、今だけです。そのうち入浴タイムは死ぬまでおひとり樣になるだけなので、誰かと肌を触れ合わせて入る風呂を楽しんでほしい。
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ただ問題はその入浴後だ。30代までは風呂上がりは即、ビールかアイスか。体に何かを塗る、とは選択肢に考えていなかった。が、40代から乾燥が頓にひどくなってきて、湿疹も出るように。医者のアドバイスもあって、吸収率が抜群の湯上がり保湿ケアは無視できなくなってしまった。悲しいけれど、年を取れば取るほど塗るアイテムは増える。
ちなみに私の湯上がりルーティーンは、風呂から上がった直後にまず、まつ毛美容液を2種類塗布。まつ毛を伸ばすタイプと、生えているまつ毛をケアするタイプと使い分けている。まつエクもパーマもやめたので、せめて自まつ毛だけは健康でいてほしいと、女の執着心によるものだ。その後“シミケアのクリームをポイントで塗布”したら、シートパックを顔にのせる。
次に濡れた髪の毛に吸水タオルを巻き、ここからがいざ、本番。今、手足に出没中の湿疹に薬を塗って、処方された専用の混合クリームで上から保湿。膝と肘とかかとに尿素クリームを塗って、それ以外の部位は保湿剤かボディミルクで仕上げている。ここでやっと寝間着を着ると…風呂後肌ケアで、すでに7〜10分間ほど経過している。もう風呂での温かさは消えている。
その後、パックを顔から外して、アイクリームとフェイスクリームを塗って、また保湿。肌ケアが終わったら今度は髪の毛にアウトバストリートメントを塗って、梳かして、ドライ。念入りに乾かすようにしているので、10分間近くかかる。ボディケアから考えるとトータルで30分間近くかかる儀式。下手すりゃ入浴時間よりも長い。
頼んだ、ドラえもん
文字にすると大層だと思われそうだが、もう何年も繰り返しているので、さすがに体に動作が沁みついている。難点を上げるとすれば、自宅以外で風呂に入るのが億劫だと思ってしまう。例えば銭湯に行くなら、前述の乾燥対策一式アイテムを脱衣場に持ち込ないと落ち着かない。プールへ行ったら、シャワー後、簡易的にボディミルクだけ塗って、帰宅後にまた儀式を執り行う。これが乾燥しまくった自分の肌を信用できない女の顛末である。
ふと。コインバスルームのような、もしくは吸血鬼の棺のようなボックスに入れば、風呂後のさまざまなケアを一気に片付けてくれる機械が発明されないだろうか。ボックスにあちこちからロボットハンドが出てきて、薬やらクリームやら塗ってくれて、髪の毛も乾かしてくれる。風呂から上がって10分間で通常の生活に戻れる、ドラえもんが発明しそうな、それ。夢だと言われそうだけど、コロナ禍を思い出してほしい。自宅で仕事やできて、学校の授業も受けられた。動画配信によって運動もできて、映画やドラマも見られた。スマホでオーダーするだけで、ウーバーイーツ(食事)が届くといった近未来が一気に完成したではないか。他にもドライヤー機能は年々進化をして短時間で乾燥ができるし、しかも艶髪になっている。少し前までドライヤーは髪の毛を傷めるものといったイメージはどこへやら。これは期待大。
だからお願い。パートナーや家族たち。簡単に「風呂入ってきなよ〜」と中年女性に行ってほしくはない。風呂後のことを考えると「えいやっ!」という、気合いが必要なのですよ。
(小林久乃/コラムニスト・編集者)